気管切開チューブのある生活

気管内吸引について

  • 気管内吸引の必要性 痰(気道分泌物)を取り除き、呼吸が楽にできるようにする目的で吸引を行います。気管内の痰を取り除くことは、無気肺・肺炎・窒息などの気管切開時のトラブルを予防し、呼吸を適切に維持するために必要です。これらの目的を果たすためにも、正しい知識を持って適切な吸引手技を身につけることが必要となります。
  • 気管内吸引のタイミング 痰(気道分泌物)が気管内にたまってゼロゼロ音が聞こえるときや、お風呂や食事の前に吸引をすると効果的です。1日に必要となる吸引回数は痰の性状や子どもの自分で痰が出せるかどうかによって個人差があります。一般的に、痰は寝ているときには少なく、起きている時、食事、泣くことなどで増えます。また、肺炎や気管支炎の際には黄色い粘度の高い痰がたくさん出てきて何度も吸引が必要になります。分泌物が少ないときには時間を決めて吸引をする必要はありませんが、半日以上吸引しないとカニューレに付着した痰が乾燥してカニューレ閉塞することがあります。分泌物がほとんどなくても、1日2回程度は吸引カテーテルを使ってカニューレの閉塞がないことを確認しておきましょう。
  • 気管内吸引の練習 必要な手技や知識・観察方法については、退院までに担当医師・入院病棟の看護師から説明・指導があります。それぞれの子どもに適切な吸引のタイミングについて、担当者がご家族と一緒に考えて退院の準備を進めていきます。
  • 退院後に必要な物品について 外来では、医療保険で「在宅気管切開患者指導管理」を算定されている方は、毎月の外来受診時に、翌月の受診日までに必要な医療器材・衛生材料が渡されます。病院によって医療器材・衛生材料の取り扱い数は異なりますので、退院までにそれぞれの病院担当者に確認をしておきましょう。旅行などのイベント、災害への備えなどで予備の衛生材料を持っておきたい方は一部の薬局や通販でも購入することができます(自費)。
  • 吸引の手順
    1. 事前に、吸引機のが作動(電源を入れて圧がかかること)や、吸引に必要な物品がそろっていることを確認します。
    2. よく泡立てた石鹸と流水(水道水)で手を洗い、清潔なタオルで手を拭きます。
      (目に見える汚れがなく、手を洗う場所がない時は、③の手順で可)

    3. 擦式アルコール手指消毒剤を十分に手指に擦りこみ乾燥させます。
    4. 吸引カテーテルを容器から取り出し、吸引器の排液ビンにつながるチューブと吸引カテーテルを接続します。(吸引カテーテルの先端があちこちに触れて不潔にならないように取り扱いに気をつけましょう)

    5. 吸引器の電源を入れ、吸引カテーテルの調節孔を親指で塞ぎ、十分な吸引圧がかかることを確認します(調節孔のないタイプのカテーテルではカテーテルを指先で折り曲げて閉塞させて吸引圧の確認をします)。気管内吸引圧は、-100~-150mmHgとなるように調節します。(-150mmHgはおよそ-20kPa)
      *吸引機の圧ゲージの写真を入れたいと思います
    6. 吸引前に、アルコール綿で吸引チューブの中ほどから先端に向かって少し圧を加えながらしっかり・ゆっくりと拭きます。気管内に挿入する部分には直接手を触れないように注意します。
    7. 圧調節孔から指を離した状態で(圧をかけずに)、吸引カテーテルを「医師に指示された長さ」だけゆっくり気管内に挿入します。

    8. カテーテルを挿入した状態で圧調節孔を親指で塞ぎ、吸引圧をかけた状態で痰を吸引します。カテーテルは指先でねじって回転させながらゆっくり引き抜くと効果的に吸引ができます。
      観察! 1回の吸引時間は、5~10秒にとどめます。吸引圧がかかっている間は呼吸ができない状態なので、表情や顔色・口唇色をみながら操作をします。一回の吸引操作で痰が引けないときは、いったん中断して呼吸が落ち着くのを待ち、それからもう一度吸引の操作を行います。
    9. 吸引後は、吸引カテーテル表面についた痰をティッシュなどで拭いとり、カテーテル洗浄用の水(水道水)を吸い上げて内腔を洗浄します。その後、内腔の水滴を切るために圧をかけたまま空気を吸っておきます。その後、吸引カテーテルはアルコール綿(手順5で使用したものとは別)でカテーテル表面をしっかり拭って、乾燥した保存容器内に片付けます。

☆☆吸引するときはやさしく声をかけてあげてください☆☆

気管内吸引はそれなりに苦しいことなので、吸引をされる子どもも泣いたり暴れて抵抗することがあります。慌てずにやさしく声をかけて落ち着かせてあげましょう。体が動いてしまって吸引がしにくい時には、他の介助者に軽く体を抑えてもらったり、バスタオルなどで体をくるむなどして、安全に吸引できるようにします。吸引に慣れてくると、子どもも声かけだけで協力してくれるようになります。

☆☆排痰をしっかり促して元気にすごしましょう☆☆

分泌物がいつもたまってゼロゼロしている状態では、苦しいだけでなく、ガス交換が効果的に行えない・気道感染症にかかりやすいなどのマイナスの面が多くでてきます。いろんな姿勢をとることや呼吸補助動作などで効果的に痰を出す方法についても退院前に練習しておきましょう。具体的な方法は、セラピストや看護師に相談ができます。

気管内吸引について