重い病気を持つ子どもと家族を支えるみんなの「家」事業について
公的医療機関による設立では国内初の取り組み
国立成育医療研究センターは、新規事業として急性期の治療が終了した後も医療的ケアを必要とする在宅の子どもとその家族への支援に取り組むこととしました。
本プレスリリースのポイント
- この度、国立成育医療研究センターは、新規事業として急性期の治療が終了した後も医療的ケアを必要とする在宅の子どもとその家族への支援に取り組むこととしました。
- 本プロジェクトで新たに整備する施設では、従来の医療・福祉の枠組みを超え、子どもと家族が自宅のようにリラックスし、楽しく安心して過ごすことのできる短期滞在ケアを行うと共に、子どもの地域生活を支える人材の育成を行います。
- 重い病気を持つ子どもを家族が在宅でケアし育てることができる社会をつくることを目指し、本プロジェクトの成果の普及を図ります。
背景
がん等の重篤な病気を持つ子どもの中には、現在の医学では治すことができず、終末期を迎える子どももいるが、家族と在宅で穏やかな時間を過ごすことが難しい。在宅で生活している日常的に濃厚な医療的ケアを必要とする子どもと家族を支えるサービス・担い手は極めて不足している。
そのため、子どもの在宅生活は、親(多くの場合、母親)の24時間365日続く献身的なケアによって成り立っている。親の負担は極めて重く、親自身や兄弟姉妹などの生活も大きく制限され、子どもや家族は地域の中で孤立してしまうことも多い。
常時医療的ケアが必要な、特に重症の子ども(判定スコア:超重症+準超重症)は約7,350人と推計され、そのうち約70%(約5,000人(推計))は在宅医療を受けている(超重症+準超重症児発生率:20歳未満人口1,000対0.3人(2007年小児科学会調査))。在宅の常時医療的ケア(人工呼吸、酸素吸入、気道の吸引、中心静脈栄養、経管栄養、輸液、パルスオキシメーターを用いた呼吸循環状態の監視、疼痛管理、導尿など)が必要な子どもの全体数は把握されていないが、仮に上記の2~2.5倍とすると、全国で約1万~1万3千人と推計される。尚、小児がんによる死亡は年間約400人(うち約40%は血液腫瘍、60%は固形腫瘍)。
目的
「重い病気を持つ子どもを家族が在宅でケアし育てることができる社会をつくること」を目指し下記の3点に取り組む。
- 医療・福祉、保育・教育、市民ボランティアなど、様々な者・機関と連携し、センター本体とともに子どもと家族に必要な支援サービスを研究・実践する。具体的には、在宅で療養している子どもと家族のために、短期滞在ケアを提供する。
- 従来の医療・福祉ケアを超え、豊かな遊びや学びのある子どもにとって楽しく、子どもと家族が自宅のようにリラックスし、安心して過ごすことができる「家」を目指す。
- 家族が自宅で行っているケアを尊重した支援を行うことができる人材を育てる。
国立成育医療研究センターが本プロジェクトに取り組む意義
国立成育医療研究センターは、小児・周産期医療を担う日本で最大の医療研究センターであり、「高度専門医療に関する研究などを行う独立行政法人に関する法律」に基づいて設置されている成育領域唯一のナショナルセンターである。
当センターの業務は、成育医療の提供、疾患の研究及び政策提言と規定されていること、政策上も小児がん拠点病院及びその中核的機関、小児在宅医療連携拠点事業のコーディネーター機関などに指定されていることから、我が国の小児医療政策立案に深く関与している。また、当センターは、日本小児総合医療施設協議会(JACHRI)の事務局を務めるなど、全国の小児専門病院などとの幅広いネットワークを持つ
当センターが重い病気を持つ子どもと家族に対する新たな支援モデルを研究開発し、提言することにより、社会の理解を深め、新しい支援のしくみを全国に広めることを目指す。
【建設予定地】
施設イメージ・支援サービス・スタッフなど
【施設イメージ】
鉄筋3階建て、延べ床面積:約2,100㎡
- 1階:約870㎡(プレイルーム、学習室、多目的室、談話室、オープンキッチン)
→子どもの豊かな学びや遊びの場、家族支援・地域支援の場 - 2階:約830㎡(居室(子ども14人分)(法的には医療法上の一般病床))
→夜間などのケア及び、終末期の子どもや余命の短い新生児と家族への支援の場 - 3階:約400㎡(実習者の仮眠室(2室)、多目的室、屋上庭園)
→支援の担い手の育成・研修の実施、教育プログラムの研究開発、及び交流の場
必要経費:総額約7億8,800万円【建設費:約7億1,800万円、機器整備・備品など:7,000万円(家具、遊具、学習機器、医療機器など)】
喜谷記念財団から4億円、日本財団から3億5,000万円のご支援の他、その他のご寄付などによる。
【支援サービス】
敷地内に子どもの定員14人(4人部屋2室と個室6室)の独立した拠点施設(「家」を整備し、24時間のケアと子どもに応じた様々な遊びや活動、交流の機会を通じ、子どもの成長や発達を支援する。
家族の希望に応じて、患児と同室での宿泊、別室での宿泊あるいは日中の同室が可能。
基本的に、一人の子どもあたり1回7日間以内、年20日間程度を想定。がんの末期など在宅の終末期の子どもと家族や新生児と家族の滞在期間は、おおよそ10日~1か月間程度。
【スタッフなど】
多様なスタッフを確保するとともに、当センターの病院・研究所及び他機関などとも連携
○看護師○介護福祉士○医師○保育士・教育の専門家○リハビリテーション専門職
○ソーシャルワーカー○遊びや料理の専門家・市民ボランテケアなど、子どもの日中の活動の支援者
○医療、福祉、教育・保育などの分野の学生などの実習の受け入れなど
今後のスケジュール
時期 | 事業内容 |
---|---|
平成25年12月11日~12日 | ・喜谷記念財団の代表来日、当センターとの協議・視察・合意文書締結 |
平成26年1月~5月末 | ・当センターによる寄付集め ・喜谷記念財団との合意文書(改訂版)締結 ・日本財団からのご支援の決定 |
平成26年6月12日 | ・第1回準備・運営委員会 ・本プロジェクトの公表 |
平成26年6月~平成27年3月 | ・建築設計、各種手続き(設計・施行一体型プロポーザル方式) ・運営方針、サービス内容の検討 ・厚労省・東京都との協議 ・スタッフのリクルート ・建設工事 |
平成27年3月~12月 | ・スタッフの研修 ・市民(ボランティア)の募集、研修 ・開設準備、各種法的手続き | 平成28年1月(予定) | ・本プロジェクト「家」利用開始 |
■喜谷記念財団
【Kidani Memorial Trust(KMT)(喜谷記念財団)について】
元名古屋市立大薬学部長であった喜谷喜徳博士が抗がん剤の開発に成功され、それにより設立された財団。KMTは、各国のがんや難病患者(特に、子ども)の治療や支援を行う施設や団体を支援している。国内では、名古屋市立大に設置されたがん治療センターに寄付した実績がある。KMTは3人の理事で運営されており、毎年数億円規模の支援を行っている。
【喜谷昌代、喜谷喜夫ご夫妻について】
喜谷喜夫氏は喜谷喜徳氏の実弟にあたる。喜谷昌代氏は、皇后陛下(当時の皇太子妃)のお勧めで1964年の東京パラリンピックの際に日本赤十字社で奉仕活動を始められ、以来、51年間、世界7カ国でボランティア活動を続けている。1991年に「もみじプロジェクト」を設立し、その代表として障害を持つ青少年の日英交流事業を行っている。
英国の「ヘレン・ダグラス・ハウス」(ロンドン郊外に約32年前(1982年)に設立された世界初の子どものためのホスピス)とも関わり、KMTの「ヘレン・ダグラス・ハウス」への財政支援をバックアップしている。
日本にもぜひ子どもと家族、ケアをする人の生み出す温かく楽しい「家」を作りたいとの思いで数年前から活動されており、今回のKMTからの4億円の支援も喜谷ご夫妻の強い後押しがあり実現したもの。
■日本財団
【日本財団について】
1962年(昭和37年)に設立した公益財団法人(2011年4月公益法人財団へ移行)。ボートレース事業からの拠出金をもとに、船舶の技術開発や海上安全確保、福祉や教育の向上、人道援助や人材育成を通じた国際貢献など、人々のよりよい暮らしを支える活動を推進している。
設立50周年を契機に、「みんなが、みんなを支える」社会の実現を理念として掲げ、組織、人材、ノウハウ、資金をつないで社会課題を解決する「ソーシャル・イノベーション・ハブ」を目指している。そのため、近年では、ボートレース事業からの拠出金のほかに、個人の寄付、企業のCSR、国との連携など多様なアプローチを図りながら、さまざまなプロジェクトを展開している。
【「重い病気を持つ子どもと家族を支える」事業への取り組みについて】
日本における医療依存度の高い子どもと家族のためのレスパイトへの支援は十分とは言えない。日本財団ではそのような状況を社会課題として捉え、「施設づくり、人づくり、仕組みづくりを通して、重い病気を持つ子どもと家族が地域で生活すること、その生活のなかで豊かな時間を過ごせる環境を提供すること」を目標として、事業を展開している。2011年度から、北海道のそらぷちキッズキャンプ、神戸のチャイルド・ケモ・ハウスの施設整備や、サマーキャンプ、在宅訪問サービス等への支援を行ってきている。
国立成育医療研究センターの本事業は、重い病気を持つ子どもと家族への短期滞在ケアを行う、子ども専門病院を拠点とした初めての取り組みであること、また今後の波及効果を期待し、3億5000万円の助成を決定した。
■国立成育医療研究センター
独立行政法人国立成育医療研究センター(National Center for Child Health and Development)は、東京都世田谷区にある日本の厚生労働省所管の独立行政法人で、国立高度専門医療研究センター(ナショナルセンター)です。2010年4月、「高度専門医療に関する研究等を行う独立行政法人に関する法律」に基づき、厚生労働省所管の施設等機関であった旧国立成育医療センターが組織移行する形で発足しました。
病院と研究所とが一体となって、難病に悩む患者やその家族に対し臓器移植や再生医療などを含む高度で先進的な医療の開発と提供を目指すと共に、妊産婦医療、新生児医療、小児救急医療などを含む成育医療全般について、チーム医療や包括的医療をベースにした優れた医療モデルを確立し、これらを全国的に展開することを目的としております。
これまでも、基礎・臨床面での優れた研究成果を世界に向けて発信すること、新しい医療を開発し、わが国にとって必要な新たな政策提言を行うこと、そして次世代の「成育医療」を担うために必要な医療関係者と研究者を育成することに取り組み続けております。
1983年に、国立小児病院(当時)で我が国初の小児の在宅人工呼吸を実施。在宅での常時医療的ケアが必要な子どもは、およそ200~300人(その内、人工呼吸器をつけている子ども56人(2014年6月時点))。
国立成育医療研究センターは、これまで行ってまいりました急性期を中心とした高度先進医療の提供、人材育成及び技術開発のみならず、急性期の治療が終了した後も医療的ケアを必要とする子どもとその家族への支援についても実践しつつ、その成果の普及を図ることとし、本プロジェクトに取り組むことと致しました。
ご寄付(使途特定寄付金)のお願いについて
本事業のために必要な拠点施設の建設につきましては、喜谷記念財団及び日本財団のご支援いただけることになりましたが、備品整備、スタッフの確保・研修、子どもの多様な活動等のための資金は未だ十分ではありません。そのため、皆さまからご寄付、ご支援をお願いする次第です。
皆さまのご理解、暖かいご支援、ご協力を、心からお願い申し上げます。
- 寄付をご検討の方は、お手数ですが次ページ以降の寄付受入規定をお読みの上、寄付申出書を郵送またはFAXにて
- 使途特定寄付金とは、寄付者が、予め事業促進に関する使途を特定する寄付金です。
- 寄付者は個人、法人を問いません。
ご寄付のお問い合わせ
総務部総務課総務係までご連絡ください。電話(代表)03-3416-0181 総務部総務課(内線5662)
- 本件に関する取材連絡先
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国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室
03-3416-0181(代表)
koho@ncchd.go.jp
月~金曜日(祝祭日を除く)9時〜17時
※医療関係者・報道関係者以外のお問い合わせは、受け付けておりません。