血中鉛濃度と妊婦のメンタルヘルスの関連:エコチル調査の結果
子どもの健康と環境に関する全国調査(以下、エコチル調査)のメディカルサポートセンターである、国立成育医療研究センター(住所:世田谷区大蔵2-10-1 理事長:五十嵐隆)の石塚一枝らの研究チームは、エコチル調査の約2万人のデータを用いて妊婦の血中鉛濃度と妊婦のうつ症状との関連について調査を行いました。鉛には神経毒性があり、成人ではうつなどの精神疾患のリスクを高めることが知られています。
今回の調査では、血中鉛濃度の違いによって妊婦を5つのグループに分け、うつ症状を有することのリスクに違いがあるかを調べました。その結果、妊婦の血中鉛濃度とうつ症状との間に関連性は見られませんでした。
本研究の成果は、令和2年6月15日に国際神経毒性学会から刊行される学術誌「Neurotoxicology」7月号に掲載されました。
※本研究の内容は、すべて著者の意見であり、環境省、国立環境研究所および、国立成育医療研究センターの見解ではありません。
研究内容と成果
本研究は、エコチル調査に参加している女性のうち、平成29(2017)年4月までに妊娠中の血中鉛濃度の測定が終了した17,267件を対象としました。また、うつ症状についてはメンタルヘルスを計測する質問票であるK6※2を用いて調べています。
本研究参加者の平均の血中鉛濃度は、0.58 μg/dl (範囲は 0.14?6.75 μg/dl)でした。なお、血中鉛濃度とは血液1dlあたり、どれぐらいの量の鉛が含まれているかということを指します。血中鉛濃度が最も低い妊婦のグループを「1」(下図参照)とし、そこから濃度が高くなるごとに「2」~「5」とした5つのグループ※3に分け、それぞれのグループでうつ症状を有するリスクにどの程度違いが出るのかを検討しました。その結果、鉛濃度とうつ症状との間に関連がないことが分かりました。なお、これらの関連は、年齢、婚姻状態、社会経済状況を考慮した解析を行いましたが、結果は同じく鉛濃度とうつ症状との間に関連がありませんでした。
発表論文情報
- 【題名】:
- 「血中鉛濃度と妊婦のメンタルヘルスの関連」
(英題)Association between blood lead exposure and mental health in pregnant women: results from The Japan Environment and Children's Study - 【著者名】
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石塚 一枝1、山本 貴和子1、羊 利敏1、目澤 秀俊1、小西 瑞穂1、齋藤 麻耶子1
佐々木 八十子1、西里 美菜保1、佐藤 未織1、小枝 達也2、大矢 幸弘1、
Japan Environment and Children's Study Group3- 1所属 国立成育医療研究センター エコチル調査研究部
- 2所属 国立成育医療研究センター こころの診療部
- 3グループ:コアセンター長、メディカルサポートセンター代表、各ユニットセンター長
- 【掲載誌】:
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Neurotoxicology
doi: 10.1016/j.neuro.2020.06.003
- 本件に関する取材連絡先
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