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先天性甲状腺機能低下症の遺伝要因を解明~先天的な臓器形成異常の病態解明研究のモデルに~

国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区、理事長:五十嵐 隆)の分子内分泌研究部 鳴海 覚志 室長、慶應義塾大学医学部小児科 長谷川 奉延 教授、ドイツのシャリテ・ベルリン医科大学 ハイコ・クルーデ 教授を中心とした国際共同研究グループは、先天性甲状腺機能低下症 を対象としたゲノム解析研究を行い、胎児期の甲状腺の形成に影響を与えるゲノム領域が2番染色体に存在することを世界で初めて発見しました。これまで理解が不十分であった先天性甲状腺機能低下症の発症メカニズムを解明してゆく上で重要な手がかりとなるものです。研究成果は、英科学雑誌『Human Molecular Genetics』で2022年5月10日にオンライン公開されました。

【図1:甲状腺形成異常患者の割合】

日本人(左側)およびドイツ人(右側)において、一般集団と比べ甲状腺形成異常患者では2番染色体上のSNP rs9789446の遺伝型がA型である割合が高かった(赤矢印、白矢印)。このことからrs9789446を含むゲノム領域が甲状腺の形成に何らかの影響を及ぼすと推測された。

プレスリリースのポイント

  • まれな先天性疾患である先天性甲状腺機能低下症をゲノムワイド関連解析(GWAS)法 で分析し、疾患発症に関わるゲノム領域を2番染色体上に発見しました。
  • 様々なゲノム情報データベースを活用してこの2番染色体領域の機能を分析し、Wntシグナル経路 の過剰な活性化が胎児期の甲状腺の形成を妨げる可能性を示しました。
  • GWAS法は高血圧や肥満といったありふれた疾患に対する遺伝学的研究に利用されてきましたが、今回の研究から、先天的な臓器形成異常に対しても威力を発揮することが分かりました。

発表論文情報

英文タイトル:
『GWAS of thyroid dysgenesis identifies a risk locus at 2q33.3 linked to regulation of Wnt signaling』
和文タイトル:
『甲状腺形成異常のGWASによるWntシグナル制御に関わる2番染色体長腕領域の同定』
著者名:
鳴海 覚志1),2)、Robert Opitz3)、長崎 啓祐4)、室谷 浩二5)、朝倉 由美5)、安達 昌功5)、阿部 清美2)、杉澤 千穂2)、Peter Kuhnen3)、石井 智弘2)、Markus M. Nothen6)、Heiko Krude3)、長谷川 奉延2)
1) 国立成育医療研究センター研究所分子内分泌研究部
2) 慶應義塾大学医学部小児科
3) Institute for Experimental Pediatric Endocrinology, Charite Universitatsmedizin Berlin, Corporate Member of Freie Universitat Berlin und Humboldt-Universitat zu Berlin, Berlin, Germany.
4) 新潟大学大学院医歯学総合研究科内部環境医学講座小児科
5) 神奈川県立こども医療センター内分泌代謝科
6) Institute of Human Genetics, University of Bonn, School of Medicine & University Hospital Bonn, Bonn, Germany.
掲載誌:
Human Molecular Genetics
URL:
https://academic.oup.com/hmg/advance-article/doi/10.1093/hmg/ddac093/6583110
DOI:
https://doi.org/10.1093/hmg/ddac093
本件に関する取材連絡先

国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室

03-3416-0181(代表)

koho@ncchd.go.jp

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