"基礎疾患のある12歳以上の小児・若年成人の患者さん対象" 新型コロナワクチン接種後の「副反応疑い症状」と「抗体価」の実態解明
国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区大蔵、理事長:五十嵐隆、以下「当センター」)感染症科の庄司健介(医長)らの研究チームは、12~25歳の基礎疾患のある患者さんを対象に、新型コロナウイルスワクチンを接種後にどのような症状の"副反応疑い"がどのくらいの頻度であらわれるのか、また新型コロナウイルスに対する抗体を獲得できているかどうかについての研究を行いました。
本研究は、2021年7月~2021年10月までの間に、当センターで新型コロナウイルスワクチン(一般名:コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2))を2回接種された、12~25歳の患者さん(429人)を対象に実施しました。その結果、ワクチン接種後の発熱の頻度については、12~15歳の患者さんの方が16~25歳の患者さんに比べて高く、また免疫機能が正常な患者さんの方が免疫抑制状態の患者さんに比べて高いことがわかりました。さらにワクチン2回接種後の抗体については、全体の99%の患者さんが陽性であり、抗体価は12~15歳の患者さんの方が16~25歳の患者さんに比べて高く、また免疫機能が正常な患者さんは免疫抑制状態の患者さんに比べて高いことなどが明らかになりました。
様々な基礎疾患のある患者さんに対してのワクチン接種に関する大規模な報告は世界的にも限られており、小児の新型コロナウイルス感染症への対策を考えていく上で貴重な研究成果となります。
本研究結果は、日本感染症学会/日本化学療法学会の英文機関誌であるJournal of Infection and Chemotherapy (JIC)に公開されました。
- あくまで抗体価を評価した研究であり、直接の感染予防効果を調査したわけではありません。
- 2回目接種後の患者を対象としており、3回目接種後以降の状況を調査したわけではありません。
- 抗体価は2回目接種後、2週間~4カ月の間に測定されています。
- 一般的にワクチン接種と関連がある好ましくない事象を副反応、ワクチン接種後に起こった好ましくない事象(ワクチン接種と関連のないものも含める)を有害事象と言いますが、今回はワクチン接種と関連があったかどうか明確でない症状も含まれるため「副反応疑い」と記載しています。
【表1:2回目ワクチン接種後の抗体陽性率と抗体価】
プレスリリースのポイント
- 2021年7月~2021年10月の間に新型コロナウイルスワクチン(コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2))の接種を受けた、何らかの基礎疾患のある12~25歳の患者さんを対象とした研究です。
- 研究に参加した患者さんの基礎疾患は、遺伝/染色体疾患/先天奇形が67名(15.6%)と最多で、内分泌/代謝疾患(55名、12.8%)、神経疾患(47名、11.0%)と続きました。(基礎疾患が複数ある場合は、主たる基礎疾患を研究者が一つ選択しています。)免疫抑制剤内服中など、免疫抑制状態にあると考えられた患者さんは138名(32.2%)でした(表2)。
- ワクチン2回接種後1週間以内の38℃以上の発熱は、12~15歳では35.7%、16~25歳では28.0%と、低年齢の患者さんの方が頻度が高いことがわかりました。(グラフA,B)同様に、免疫機能が正常な患者さんでは36.2%、免疫抑制状態にある患者さんでは24.1%と、免疫機能が正常な患者さんの方が発熱の頻度が高いこともわかりました。
- 副反応疑いで入院を要した患者さんは、1回目接種後は0名(0%)、2回目接種後は12~15歳で1名(0.4%)、16~25歳で2名(1.1%)でした。いずれの患者さんも、回復し退院しています。
- ワクチン2回目接種後の抗体価の幾何平均抗体価は、12~15歳が1603.3 U/mL、16~25歳が949.4 U/mLと若年層の方が高く、また、免疫機能が正常な患者さんは2106.8 U/mL、免疫抑制状態の患者さんは467.9 U/mLと免疫正常な患者さんの方が高いという結果でした(表1)。
【表2:患者背景】
【グラフA:年齢ごとの急性期副反応疑い症状の頻度(1回目接種後:アンケート回収率92.5%)】
【グラフB:年齢ごとの急性期副反応疑い症状の頻度(2回目接種後:アンケート回収率80.6%)】
発表論文情報
和文タイトル:「基礎疾患を持つ小児と若年成人に対するBNT162b2新型コロナウイルスワクチンの安全性と抗体価上昇に関する検討」
英文タイトル:「Safety of and antibody response to the BNT162b2 COVID-19 vaccine in adolescents and young adults with underlying disease」
<著者>
庄司健介1、船木孝則1 、山田全毅1 ,2、三上剛史3、木戸口千晶1、明神翔太1、相葉裕幸1、松井俊大1、大宜見力1、三宅こず恵3、上野紗希3、賀藤均4、宮入烈1,5
1. 国立成育医療研究センター 感染症科
2. 国立成育医療研究センター 高度感染症診断部,
3. 国立成育医療研究センター 臨床研究センター
4. 国立成育医療研究センター 前病院長
5. 浜松医科大学 小児科
掲載誌:Journal of Infection and Chemotherapy
DOI: 10.1016/j.jiac.2022.09.013.
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