2021年度コロナ禍の子どもの心の実態調査 摂食障害の「神経性やせ症」がコロナ禍で増加したまま高止まり
国立成育医療研究センターが行っている子どもの心の診療ネットワーク事業は、新型コロナウイルス感染症流行下の子どもの心の実態調査を行いました。子どもの心の診療ネットワーク事業の拠点病院・機関と、オブザーバー協力機関合わせて全国30医療機関(31診療科)の調査で、コロナ流行前の2019年度とコロナ禍の2020年度、2021年度を比較しました。2020年度に増加していた神経性食欲不振(神経性やせ症)の初診外来患者数(図1)と新入院患者数(図2)は、2021年度も男児、女児ともに減少することなく高止まりであることが判明しました。コロナ禍でのストレスや不安が影響していると推測されます。
摂食障害の子どもや青年の病床数が2020年度に引き続き不足していることも判明し、摂食障害を治療できる医療機関の拡充が求められます。また、家庭や教育機関では、子どもの食欲や体重の減少に気を配り、深刻な状況になる前に医療機関の受診につなげることが必要です。
神経性やせ症とは、摂食障害の一つです。極端に食事制限をしたり、過剰な食事後に吐き出したり、過剰な運動を行うなどして、正常体重より明らかに低い状態になる疾患です。病気が進行すると、日常生活に支障をきたすこともあります。アメリカ精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)では、①正常の下限を下回る低体重、②肥満恐怖あるいは体重増加を妨げる行動の持続、③自己評価に体重や体型が不相応な影響を受け、低体重の深刻さが認識できないなどの特徴が挙げられています。
【図1】初診外来患者数 (神経性やせ症) (有効回答数24医療機関・25診療科)
【図2】新入院患者数 (神経性やせ症) (有効回答数19医療機関)
プレスリリースのポイント
- コロナ禍で、食事を食べられなくなる神経性やせ症が増加し、2020年度に引き続き2021年度も外来患者数、入院患者数ともに高止まりしたままでした(図1、図2)。
- しかし、摂食障害の患者のための病床数が、2020年度に引き続き不足していることが分かりました。摂食障害の病床充足率(現時点で摂食障害で入院している患者数/摂食障害の入院治療のために利用できる病床数×100)は、2019年度と比べ、2020年度、2021年度に高止まりまたは増加している病院が多く、中には300%を超える病床充足率の病院もありました。摂食障害を治療できる医療機関が少ないこともあり、特定の病院に入院患者が集中していることが推測されます。
- 神経性やせ症の患者増加の背景には、新型コロナ感染症の流行による生活環境の変化によるストレス、感染拡大による休校・学級閉鎖、行事などのアクティビティが中止になったこと、新型コロナウイルス感染症への不安などがあると推測されます。
- コロナ太り対策のダイエット特集の報道やSNSでの情報や、運動を推奨する教員や保護者などからのアドバイスに、子どもたちが過度に影響を受けた可能性も考えられます。
- 本件に関する取材連絡先
-
国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室
03-3416-0181(代表)
koho@ncchd.go.jp
月~金曜日(祝祭日を除く)9時〜17時
※医療関係者・報道関係者以外のお問い合わせは、受け付けておりません。