胎児頻脈性不整脈で胎内治療を受けた子どもの予後を調査 出生後3歳までは、おおむね良好な予後を確認
国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区大蔵、理事長:五十嵐 隆)、国立循環器病研究センター、久留米大学病院、三重大学医学部附属病院など9施設のグループは、胎児の頻脈性不整脈に対して胎内治療を受けて出生した子どもの出生後3歳までの予後について調査を行いました。
胎児頻脈性不整脈は、胎児の心臓の拍動が正常よりも速くなる希少疾患です。その状態が続くと、胎児の心臓が弱り、全身がむくみ、亡くなってしまう場合もあります。本調査の前に行った臨床試験では、母親に抗不整脈薬を投与して胎内で治療するプロトコール治療(研究計画に基づいた治療方法)の有効性および安全性を確認しました。
今回の研究では、プロトコール治療を受け出生し、追跡可能であった子ども45人を3歳まで経過観察しました。その結果、死亡例は45人中1人(2.2%)でした。また、神経発達障害は43人中4人(9.3%)で、重症の先天性異常がある場合を除けば41人中2人(4.9%)と、神経発達の予後もおおむね良好と考えられました。
今回の研究成果は、抗不整脈薬を用いて胎内治療を実施した胎児における出生後3歳までの本治療の有効性と安全性を示すものです。今後、日本においてこの胎内治療法を標準治療として用いることが検討されることを期待しています。
本研究論文は、国際的な学術誌「Ultrasound in Obstetrics & Gynecology」に掲載されました。
【表1:プロトコール治療を受け出生した子どもの死亡率(n=45)】
【表2:修正3歳時[1]の神経発達予後の割合(n=43)】
※神経発達障害は、脳性まひ、両側失明、両側重度難聴、神経発達遅滞(新版K式発達検査等で発達指数69以下)の1つ以上に該当する場合と定義。
プレスリリースのポイント
- 胎児頻脈性不整脈(上室頻拍および心房粗動)に対してプロトコール治療を受け出生した子ども(45人)の予後が初めて示されました。
- 修正3歳時まで経過観察した結果、出生後の死亡率は2%(45人中1人)でした。また神経発達障害は9.3%(43人中に4人)に認めました。(表1、表2)
- 神経発達障害は胎児水腫(全身のむくみ)のある3人中2人で認められ、胎児水腫の持続期間の長期化と関連していました。
- 神経発達遅滞は重症の先天性異常合併例のみ(結節性硬化症と内臓錯位症候群の2例)で認められており、それらを除けば神経発達障害は9%(41人中に2人)と、神経発達予後はおおむね良好でした。
発表論文情報
題名:Neurodevelopmental outcomes after antenatal therapy for fetal supraventricular tachyarrhythmias: 3-year follow-up of a multicenter trial
著者:三好剛一、前野泰樹、松田直、伊藤裕司、稲村昇、堀米仁志、与田仁志、金基成、塚原紗耶、寺町陽三、高橋邦彦、
豊島勝昭、中井陸運、桂木真司、白石公、黒嵜健一、池田智明、左合治彦(日本胎児不整脈班)
掲載誌:Ultrasound in Obstetrics & Gynecology
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