妊婦と2歳以下の子の母親の新型コロナワクチン接種意向に関するインターネット調査
本研究では、新型コロナウイルスワクチンに関して「ワクチンを打ちたくない・様子をみてから接種するかを決めたい」と答えた方の割合は、妊婦で51%、2歳以下のこどもを持つ母親では32%と妊婦で多いことがわかりました。
また、新型コロナワクチン接種意向の背景因子を調べたところワクチン情報を批判的に判断することの少ない妊婦が、「ワクチンを打ちたくない・様子をみてから接種するかを決めたい」 と答えていました。一方で、2 歳以下の子の母親では、受け取った情報を正しく理解する傾向にない人が、「ワクチンを打ちたくない・様子をみてから接種するかを決めたい」と回答しました。本研究の結果から、ワクチン接種意向を高めるためには、妊婦と 2 歳以下の子の母親へそ れぞれ異なるアプローチが必要であると考えられます。
プレスリリースのポイント
- 2021 年 7-8 月のデルタ株流行期に、インターネットを用い、全国の妊婦と 2 歳以下のこ どもを持つ母親 10000 人を対象に調査を行い、7327 人から回答を得て解析を行いました。
- 新型コロナウイルスワクチンに関して「ワクチンを打ちたくない・様子をみてから接種する かを決めたい」と答えた方の割合は、妊婦で 51%、2 歳以下のこどもを持つ母親では 32%と妊 婦でした。妊婦のほうがワクチンに対して消極的であることがわかりました。
- ワクチン接種への消極性にはワクチンリテラシー1が関連しており、妊婦では、ワクチン リテラシーの中でも情報をコミュニケーションの中で批判的に吟味し、実行に移す「相互作用 的(interactive)/ 批判的(critical)ワクチンリテラシー」が低いことがワクチン忌避と相関してい ました。一方で、2 歳以下の子の母親では、情報を受け取り、理解する「機能的(functional)ワ クチンリテラシー」がより関連していました。
- ワクチンリテラシーの違いにより、妊婦では「お腹の子どもや授乳中の子どもへの影響が 心配だから」、小さなこどもを持つ母親では「ワクチンが感染や重症化を予防する効果があ まりないと思うから」、「ワクチンの成分を信用できないから」という理由でワクチン接種 への消極性につながっていることがわかりました。
- 妊婦は、妊婦健診等で定期的に医療機関を受診する機会があることから質の高い情報を 平等に得られる機会があるため、それらの情報を活用し行動に移すためのコミュニケーシ ョンの場を支援することで「相互作用的(interactive)/ 批判的(critical)ワクチンリテラシー」 を高め、ワクチン接種率の向上が期待されます。一方で、幼いこどもを持つ母親には、誰にで もわかりやすく、質の高い情報を届けるための支援が望まれます。
発表論文情報
英文タイトル:COVID-19 vaccine literacy and vaccine hesitancy among pregnant women and mothers of young children in Japan
和文タイトル:日本における妊婦と小さなこどもを持つ母親の COVID-19 ワクチン忌避と ワクチンリテラシーの検討
執筆者:高橋揚子 1,2、石塚一枝 1、三瓶舞紀子 1,3、大川純代 4、細川義彦 5、石黒精 2、田淵 貴大 6、森崎菜穂 1
所属:1:国立成育医療研究センター 社会医学研究部 2: 国立成育医療研究センター 教育研修センター 3: 日本体育大学体育学部 健康学科 4: 国立国際医療研究センター 国際医療協力局 グローバルヘルス政策研究センター 5: 筑波大学医学医療系産科婦人科学 6: 大阪国際がんセンター がん対策センター疫学統計部
掲載誌:Vaccine
DOI:10.1016/j.vaccine.2022.09.094
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