低い世帯所得が医療の受診控えにつながる可能性 ~コロナ禍においても、平時同様の傾向が見られた~
お詫びと訂正について
本リリースの表記おいて一部誤りがありました。リリースを見ていただいた方、ならびに関係者の方々にご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げるとともに以下のように訂正いたします。
<①リリース1ページ目 13行目>
誤:~低所得世帯の群は、そうでない群と比べて、男性で約1.3倍、女性で約2.1倍、コロナ禍において定期受診を控えることが分かりました(グラフ1)。
正:~低所得世帯の群は、そうでない群と比べて、男性で約1.3倍、女性で約1.5倍、コロナ禍において定期受診を控えることが分かりました(グラフ1)。
<②グラフ3、グラフ4>
グラフ3、グラフ4について、それぞれ男性と女性の数値に誤りがございました。ダウンロードできるPDFを正しい数値に修正しております。
国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区大蔵、理事長:五十嵐隆)研究所 社会医学研究部の帯包エリカ研究員、大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部 田淵貴大部長補佐らの研究グループは、インターネット調査を用いて、コロナ禍における"世帯所得と医療の受診控え"にどのような関係があるかを分析しました。
本研究は「コロナ禍の社会・健康関連の要因への影響を明らかにするためのインターネットコホート調査(JACSIS調査)」の2020年および2021年の調査データを使用し、この調査に登録している日本在住の20~79歳の19,672人を対象としました。今回は、2020年の世帯所得を世帯人数で調整し、その中央値の半分未満(今回は300万円未満)を低所得世帯と定義しました。また、年齢、学歴、雇用形態、コロナ不安といった要因の影響を受けないよう調整した上で、男女別で分析しています。医療の受診控えは、①定期的に通っている医療の受診(定期受診)、②新たに出た症状に対しての医療の受診(新規受診)の2つについて聞きました。
その結果、低所得世帯の群は、そうでない群と比べて、男性で約1.3倍、女性で約1.5倍、コロナ禍において定期受診を控えることが分かりました(グラフ1)。また、低所得世帯の群の新規受診を控える割合は、そうでない群と比べて男性で約1.3倍であった一方、女性では有意な関連は認めませんでした(グラフ2)。
定期受診などを控えることは、基礎疾患のある患者さんにとって病状の悪化を引き起こす可能性もあり、低所得世帯には医療の受診に対する経済的・心理的負担を減らす施策が求められます。
プレスリリースのポイント
- 平時同様コロナ禍においても、男性では定期受診・新規受診控えと世帯所得の低さに関連が見られました。
- 一方、女性は、低い世帯所得は、定期受診控えに影響することが示されました。コロナ不安が強いことは、定期受診・新規受診控えに影響を与えることが分かりました。
- 研究実施時に緊急事態宣言が出されていた地域は、そうでない地域と比べて、所得の低さがより医療の受診控えに影響を与えていました。
- コロナ禍において世帯所得が医療受診控えにどのような影響を与えるかについての研究は日本初で、性別、基礎疾患、居住地別に検討を行った研究として意義があります。
- 低所得状態にあり支援を必要とする方たちが適切な医療を受けられるよう、医療費補助やオンライン診療、受診を促すことなど、受診負担を軽減するような対策の必要性が示唆されました。
発表論文情報
論文タイトル:Association between Poverty and Refraining from Seeking Medical Care during the COVID-19 Pandemic in Japan: A Prospective Cohort Study
雑誌名:International Journal of Environmental Research and Public Health
著者:Erika Obikane, Daisuke Nishi, Akihiko Ozaki, Tomohiro Shinozaki, Norito Kawakami and Takahiro Tabuchi
DOI: https://doi.org/10.3390/ijerph20032682
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