低出生体重による出生は心血管疾患や生活習慣病リスクを増加 ~日本初!出生体重と成人後期の生活習慣病の関連が明らかに~
国立成育医療研究センター(東京都世田谷区、理事長:五十嵐 隆)の社会医学研究部の 森崎 菜穂、内分泌・代謝科の吉井 啓介らの研究グループは、国立がん研究センターなどと共同で行っている次世代多目的コホート研究[1]にて、出生体重と成人期後期(40~74歳)の心血管疾患(心筋梗塞、脳梗塞など)リスク、および各種生活習慣病(高血圧・糖尿病・高脂血症・痛風)との関連を調べる研究を行いました。
その結果、成人期後期の心血管疾患の罹患率は、出生体重[2]が3kg台の方と比べて、低出生体重児(出生体重が2.5kg未満)の方は1.25倍、極低出生体重児(出生体重が1.5kg未満)の方は1.76倍と高いこと分かりました。(グラフ1)
【グラフ1:心血管疾患(心筋梗塞、脳梗塞など)を経験したことがある割合】
また、心血管疾患のリスクとして知られている高血圧、糖尿病も出生体重が低いほど罹患率が高いことが分かりました。(グラフ2、3)
この研究で、出生体重と成人期後期の生活習慣病の関連が日本で初めて明らかになりました。本研究成果は、疫学専門誌「Journal of Epidemiology」で発表されました(2023年11月18日Web先行公開)。
【グラフ2:高血圧を経験したことがある割合】
【グラフ3:糖尿病を経験したことがある割合】
[1] 次世代多目的コホート研究=「多目的コホートに基づくがん予防など健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究」(国立がん研究センター)。日本人の生活習慣・生活環境が、がんなどの生活習慣病とどのように関わっているのかを明らかにすることを目的とした研究です。2011年に始まり7県16市町村の地域住民11.5万人(研究開始当時40-74歳)を対象として行われている。
[2] 出生体重の分類:4000g以上=高出生体重児、2500~4000g未満=正出生体重児、2500g未満=低出生体重児、1500g未満=極低出生体重児、1000g未満=超低出生体重児。
プレスリリースのポイント
- 出生体重が小さい方ほど、成人後期に心血管疾患のリスクが高いことが分かりました。
- 出生体重が小さい方ほど、成人後期に高血圧、糖尿病の生活習慣病になりやすいことも分かりました。
- 出生体重と成人期後期の生活習慣病の関連を、日本で初めて明らかにした研究成果です。
- 日本では10人に1人が出生体重2.5kg未満、100人に1人が出生体重1.5kg未満で生まれています。今後、低出生体重による出生が増えないための予防の取り組みや、低出生体重児として生まれた方の成人後の健康増進のために、本研究の知見が正しく周知され、予防医学の精度の向上に役立つことが期待されます。
発表論文情報
タイトル:Association between birthweight and prevalence of cardiovascular disease and other lifestyle-related diseases among Japanese population: JPHC-NEXT Study
執筆者:吉井啓介1*、森崎菜穂2*、Aurélie Piedvache2、中田晋也2、有馬和彦3 、青柳潔3、中島弘貴3、安田誠史4、村木功5、山岸良匡6,7、斉藤功8、加藤匡宏9、丹野高三10、山地太樹11、岩崎基11,12、 井上真奈美12,13、津金昌一郎12,14、澤田典絵11
(*Contributed equally.)
所属:
1)国立成育医療研究センター 内分泌・代謝科
2)国立成育医療研究センター 社会医学研究部
3)長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 公衆衛生学分野
4)高知大学医学部 公衆衛生学
5)大阪大学大学院医学研究科 社会医学講座・公衆衛生学
6)筑波大学医学医療系 公衆衛生学ヘルスサービス開発研究センター
7)茨城県西部メディカルセンター
8)大分大学医学部 公衆衛生・疫学講座
9) 愛媛大学大学院教育学研究科 心理発達臨床専攻
10)岩手医科大学 衛生学公衆衛生学講座
11)国立がん研究センター がん対策研究所 疫学研究部
12)国立がん研究センター がん対策研究所 コホート研究部
13)国立がん研究センター がん対策研究所 予防研究部
14)医薬基盤・健康・栄養研究所
掲載誌:Journal of Epidemiology
DOI:https://doi.org/10.2188/jea.JE20230045
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