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新生児や早期乳児の腹部膨満は、アシドーシスを伴う FPIES(食物蛋白誘発性胃腸炎)の特徴であることが明らかに

国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区大蔵、理事長:五十嵐隆)アレルギーセンターの濱口冴香医師、好酸球性消化管疾患研究室の野村伊知郎室長らの研究グループは、新生児や早期乳児期に発症した、重症の食物蛋白誘発性胃腸炎(Food protein induced enterocolitis syndrome:FPIES)[1]を対象に、代謝性アシドーシス[2](以下、MA)の有無による、臨床的・検査結果の特徴の違いについて調査を行いました。
本調査では、ミルクが原因でFPIES症状をおこしたMAのなかったグループ(7人)と、MAを伴っていたグループ(7人)の症状や検査結果の違いを調べました。
その結果、妊娠週数および出生体重は、MAのあった乳児で短いか低い傾向がありました。発症日齢は両群で同様であり、MAのないグループでは腹部膨満(おなかが張っている症状)を認めませんでしたが、MAを伴うグループでは全例に腹部膨満症状を認めました。この症状はミルクを止めると数日で消失しました。
本調査結果は、国際的な学術誌「Allergology International」に2024年5月に掲載され、今後の診断ガイドラインや新生児医療における診断アルゴリズム策定に生かされることが期待されます。

[1]FPIES(食物蛋白誘発性胃腸炎)とは、原因食物を摂取していると、胃腸炎症状(強い腹痛、吐き気、嘔吐、下痢)を引き起こす消化管アレルギー。一般的な食物アレルギーで認められる原因食物に対するIgE抗体検査(血液検査)は陰性で、重篤化してショックに至る可能性がある。
[2]代謝性アシドーシスとは、通常「中性」で維持されている体内のバランスが酸性になる現象で、細胞の様々な機能がうまく働かなくなり、重度の状態が続くと不整脈や、心臓が止まることもある重症な症状のひとつ。代謝性アシドーシスには、酸性物質が体内にたまって生じる「アニオンギャップが開大するタイプの代謝性アシドーシス」と、アルカリ性の物質が失われることにより生じる「アニオンギャップが開大しないタイプの代謝性アシドーシス」がある。

表1:代謝性アシドーシス(MA)の有無による患者の特徴【表1:代謝性アシドーシス(MA)の有無による患者の特徴】

プレスリリースのポイント

  • 腹部膨満は、新生児や早期乳児のMAを伴うFPIESの特徴であることが分かりました。この症状は腸管の壁や腸管内に体液が移動することによってお腹が腫れることで起こります。画像の検査でも腸管壁が厚くなったり、腸の中の液体が増えたりしている様子が観察され、腹部膨満症状に矛盾しない所見が認められました。
  • 新生児や早期乳児のFPIESによって起こるMAはアニオンギャップ[3]が増えておらず、アルカリ性物質の重炭酸イオン(HCO3-)[4]が腸管内から失われることでMAが起こっていると考えられます。
  • これまで、FPIESはアニオンギャップが増えるMAを伴うと考えられていました。以前の研究は、症状発現から治療開始までの期間が長かったのに対し、今回の研究では、治療開始までの期間が短かったことから、本症候群の病態をより純粋に初期段階で特定することができました。

[3]アニオンギャップとは、血液中の陽イオン(カチオン)の総量と、陰イオン(アニオン)の差のこと。体の中に酸などがたまると増える。
[4]重炭酸イオン(HCO3-)は、pHのバランスを保つ機能がある。

図1:アニオンギャップ開大の有無に関する比較【図1:アニオンギャップ開大の有無に関する比較】

研究概要

本研究は、2002年3月から2022年5月までに国立成育医療研究センターで入院または治療を受けた患者の電子カルテに基づく症例対照研究です。
以下のスクリーニング基準を満たす医療記録からデータを抽出しました:(1)FPIESまたはアレルギー性胃腸炎の疾患コード、(2)血液ガス結果(臍帯血を除く)の有無、(3)アレルギー科受診歴。スクリーニングの後、2名のアレルギー専門医と1名の代謝専門医が、以下の組み入れ基準を満たす患者を選択しました:(1) 国際コンセンサスガイドラインに記載されている急性または慢性FPIESの診断基準(原因食物摂取後1〜4時間の嘔吐を含む)を満たし、(2) 症状発現時に血液ガス分析(静脈血)を受けた患者。
MA群は、血液ガス結果(pH<7.35、HCO3- <22mmol/L)に基づき定義されました。

図2:代謝性アシドーシス(MA)の有無による検査値の比較【図2:代謝性アシドーシス(MA)の有無による検査値の比較】

発表論文情報

英題:Characteristics of food protein-induced enterocolitis syndrome with metabolic acidosis: a case-control study
邦題:代謝性アシドーシスを伴う食物蛋白誘発胃腸炎の特徴:症例対照研究
執筆者:濱口冴香1)2) 、山本貴和子1) 、小川えりか2) 、植松悟子3) 、大西志麻3) 、伊藤裕司4) 、豊国賢治1) 、佐藤未織1) 、福家辰樹1) 、大矢幸弘1) 、野村伊知郎 1)5)

所属:
1)国立成育医療研究センター アレルギーセンター
2)東京都立広尾病院 小児科
3)国立成育医療研究センター 救急診療部
4)国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 新生児科
5)国立成育医療研究センター 好酸球性消化管疾患研究室

掲載誌:Allergology International
DOI10.1016/j.alit.2024.04.007

本件に関する取材連絡先

国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室

03-3416-0181(代表)

koho@ncchd.go.jp

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※医療関係者・報道関係者以外のお問い合わせは、受け付けておりません。

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