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大人が子どもの声を積極的に聴き、取り入れようとすることで 子どもの生活の質(QOL)が向上することが明らかに ~コロナ禍で「声を聴かれた」と感じた子どもは、QOLが高い割合が約5倍に~

国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区大蔵、理事長:五十嵐隆)社会医学研究部の山口有紗、森崎菜穂、Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health, Department of Population, Family and Reproductive HealthのCristina Bethellらの研究チームは、小学校5年生と中学2年生を対象に、新型コロナウイルスのパンデミック下における生活の変化について、家庭や学校で自分の考えを聴かれ、その考えや気持ちがきちんと考慮されていると感じるかを調査しました。そして、そのことが子どもの生活の質(QOL)にどのような影響を与えたかを分析した研究結果を発表しました。
この調査は2020年12月に実施され、その結果、養育者と先生の双方から、「いつも」あるいは「しばしば」考えや気持ちを聴かれたと回答した子どもは、聴かれなかったと感じた子どもに比べ、QOLが高くなりやすいことがわかりました。養育者か先生どちらかでもその効果はありましたが、両方が揃うことでQOLへの効果が強まることが示されました。
また、「声を聴く」際に、子ども自身が意見を伝えやすいようにサポートをされていると感じるだけではなく、その意見が考慮され、実際に取り入れようとされていると感じた子どもの方が、QOLがさらに高いことも明らかになりました。
本研究の成果は、BMJ Paediatrics Openに掲載されました。
図1:養育者と先生に「声を聴かれる」ことと、中央値以上のQOLの子どもの割合
【図1: 養育者と先生に「声を聴かれる」ことと、中央値以上のQOLの子どもの割合】


図2:養育者と先生に「声を聴かれた」割合
【図2: 養育者と先生に「声を聴かれた」割合】


プレスリリースのポイント

  • 養育者と先生の双方からコロナ禍での生活の変化について声を聴かれたと回答した子どもは、QOLが高くなりやすいことがわかりました。養育者か先生どちらかでもその効果はありましたが、両方が揃うことでQOLへの効果が強まることが示されました。
  • 単に「考えを伝えやすいようにサポートされている」だけでなく、「その考えや気持ちが考慮され、実際に取り入れようとされている」と感じた子どもの方が、QOLがさらに高くなることも明らかになりました。
  • 52.9%の子どもは「養育者と先生の両方から声を聴かれた」と回答しましたが、24.6%の子どもは「どちらからも声が聴かれていない」と回答しました。中学生は小学生よりも声を聴かれたと答える頻度が低い傾向が見られました。
  • 子どもたちが大切なことに声をあげ、その声が十分に考慮されることは、子どもの大切な権利のひとつです。国連子どもの権利条約12条では、「子どもの声を丁寧に聴き、それを子どもに合わせて十分に考慮する」ことが定められています。近年ではこども基本法やこども大綱でもその重要性が強調されています。
  • 今回の研究では、子ども自身が、声が聴かれ、かつ考慮されたと感じることの重なりの重要性が量的に示されたと言えます。子どもの声を「聴く」際には、子どもから発せられるものをただ受け止めるだけではなく、子どもが気持ちや考えなどを伝えやすいようにその子どもに合った方法でサポートし、その意見が生かされるように一緒に考える姿勢が大切です。
  • 近年の研究では、子ども時代の肯定的な経験(PCEs)が子どもと大人の健康にとって重要であるということが明らかになっています。声を聴かれることは、応答的な関係性の中で子どもが育つことであり、子ども時代の肯定的な体験を増やすことだともいえます。

研究者のコメント

本研究結果より、大人が子どもの声を聴き、十分に考慮すること、それが子ども自身に伝わることが、子どものQOLの向上につながることが示唆されました。もちろん、声を聴かれることは子どもの基本的な権利の一つであり、何かの数値のために子どもの声を聴くわけではないことは強調したいと思います。それでも、子どもを取り巻く環境で、養育者や学校の先生など、一人ではなく多くの人が声を聴くことの重要性、さらに、丁寧に聴くだけではなくそれを取り入れようと努力することの重要性が量的に示されたことの意義は大きいと感じます。この研究により、社会の中で子どもの声を聴き、子どもを社会のパートナーの一員とする流れが、さらに促進することを願っています。(山口有紗)

今回の研究は、近年明らかになってきた、"子ども時代の肯定的な経験(PCEs)が子どもの健やかな発達にとって重要である"という研究の一環です。子どもの声を聴くことは、子どもが成長するために必要な、安心できるあたたかな関係性を築くための基本です。子どもにとって「聴かれること」が生活の質に影響するというこの知見は、幼少期から成人期にかけての心身の健康に影響を与えます。この結果は、コロナ禍のような子どもたちの逆境体験の影響を和らげるために、周りにいるすべての大人が持つすばらしい力を示しています。子どもの声を聴き、応答的な関係性を築くことは、世界中のすべての子どもの健やかな発達を促すために必要です。約半数の子どもたちが「声を聴かれている」という結果は、PCEsに関するこれまでの研究結果と一致しており、PCEsの促進と、家庭や地域社会における子どもたちとのつながりや心身の健康を向上させることで、社会全体を大きく改善できることを示しています。(Cristina Bethell)

発表論文情報

タイトル:How listening to children impacts their quality of life: a cross-sectional study of school-age children during the COVID-19 pandemic in Japan
執筆者:
山口有紗 (国立成育医療研究センター 社会医学研究部 ・こころの診療科)
Cristina Bethell  (Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health, Department of Population, Family and Reproductive Health)
山岡祐衣 (東京科学大学 公衆衛生学分野)
森崎菜穂 (国立成育医療研究センター 社会医学研究部)
掲載雑誌:BMJ Paediatrics Open
https://bmjpaedsopen.bmj.com/content/8/1/e002962
DOI:10.1136/bmjpo-2024-002962
国立成育医療研究センター「こどもたちのねがい ~10代のこどもたちとコロナを振り返る~」
https://www.ncchd.go.jp/center/activity/covid19_kodomo/news/childrens_wishes.html

本件に関する取材連絡先

国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室

03-3416-0181(代表)

koho@ncchd.go.jp

月~金曜日(祝祭日を除く)9時〜17時


※医療関係者・報道関係者以外のお問い合わせは、受け付けておりません。

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