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失われずにすむ命を救うー拡大新生児スクリーニング検査 重症複合免疫不全症の患者さんを早期発見し、適切な治療で無事退院

国立成育医療研究センターの河合利尚(免疫科)、坂口大俊(小児がんセンター)、伊藤裕司(新生児科)らのグループは、無償化された「拡大新生児スクリーニング検査」で陽性となり、早期に重症複合免疫不全症と診断された初めての新生児に対し、迅速に治療を行い、無事退院されたことをご報告します。これは、出生病院・東京都予防医学協会・専門病院が連携して、早期の診断・治療に繋げる東京都独自のシステムが、「失わずにすむ命を救う」ことに貢献していることを示しています。
重症複合免疫不全症は、生まれつきリンパ球が正常に機能しない病気で、生まれた後、感染症への抵抗力が極めて低い状態が続き、未治療の場合は1歳以内に重症の感染症によって命を落とすことが多いとされています。出生直後は外見上健康に見えるため、生後数ヶ月後に重篤な感染症にかかるまで診断されないことが一般的です。
今回の患者さんは、「拡大新生児スクリーニング検査」で出生後早期に重症複合免疫不全症の可能性が判明したため、感染予防を徹底し、重症な感染症にかかることなく生後3カ月で根治療法としての造血細胞移植[1]を実施できました。
東京都では、こういった疾患を出生後早期に見つけるため、2023年4月から従来の新生児マススクリーニング検査[2]に有料で、重症複合免疫不全症などを追加した「拡大新生児スクリーニング検査」が開始されました。そして2024年4月からは、重症複合免疫不全症、B細胞欠損症、脊髄性筋萎縮症に対して無償で検査が受けられるようになっています。

[1] 造血細胞移植:患者自身の異常な造血幹細胞を取り除き、健康なドナーから提供された造血幹細胞を移植する治療法。一般的に、重症複合免疫不全症では、病気を根治療法として造血細胞移植が行われる。移植の成功率は、感染症を抱えた状態では約50%、感染症がない状態では 90%に達する。そのため、感染症を発症する前に診断し、治療を行うことが極めて重要。

[2] 新生児マススクリーニング検査:生まれたばかりの赤ちゃんが、特定の遺伝性の病気にかかっていないか調べるための検査。通常、生後5~7日目に、赤ちゃんの足の裏などから少量の血液を採取して行う。この検査では、重症の代謝異常症、内分泌異常症など、特定の対象疾患について調べる。


東京都における拡大新生児スクリーニング検査の取り組み


プレスリリースのポイント

  • 東京都では、重症複合免疫不全症、B細胞欠損症、脊髄性筋萎縮症に対して検査が行える「拡大新生児スクリーニング検査」が2024年4月から無償で実施されています。
  • 今回の新生児患者さんは、ご家族に同じ病気の方がいたため出生前検査(羊水検査)が行われ、重症複合免疫不全症が疑われていました。そして出生後、拡大新生児スクリーニング検査で陽性となり、精密検査の結果、重症複合免疫不全症と診断されました。
  • 無償化された2024年4月以降の「拡大新生児スクリーニング検査」で陽性となり、重症複合免疫不全症と診断されたのは、東京都では今回の患者さんが初めてです。
  • 東京都では、2024年度から「拡大新生児スクリーニング検査」で免疫不全症が疑われた場合、出生病院・東京都予防医学協会・専門病院が連携して、早期の診断・治療に繋げる独自のシステムを構築しています。
  • 今回の患者さんは診断後、重症な感染症にかかることなく、根治療法として生後3カ月で造血細胞移植を実施し、無事に退院されました。
  • 公費による「拡大新生児スクリーニング検査」と早期の診断・治療につなげる東京都独自のシステムは、発症後の診断では治療が間に合わない恐れのある疾患の患者さんの命を救うことに貢献していると言えます。

国立成育医療研究センターでの対応診療科

免疫科:河合利尚、石川尊士、小野寺雅史、内山徹、藤森健太郎
小児がんセンター:坂口大俊、牛腸義宏、井口晶裕、富澤大輔、松本公一
新生児科:伊藤裕司、諫山哲哉、和田友香
遺伝診療科:小須賀基通、小崎里華、蘇哲民
胎児診療科:小澤克典、杉林里佳、室本仁、梶原一紘
遺伝診療センター:黒澤健司

本件に関する取材連絡先

国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室

03-3416-0181(代表)

koho@ncchd.go.jp

月~金曜日(祝祭日を除く)9時〜17時


※医療関係者・報道関係者以外のお問い合わせは、受け付けておりません。

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