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日英のこども・若者が「こころの健康」のサポートについて提言を発表 ~公衆衛生上の緊急事態やその後の活用を目指して~

国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区大蔵、理事長:五十嵐隆)社会医学研究部の山口有紗、森崎菜穂らと、イギリスのオックスフォード大学の研究チームは、日本とイギリスのこども・若者および市民団体と協力したプロジェクト(ティーン・ボイス・プロジェクト)において、新型コロナウイルスのような公衆衛生上の緊急事態が発生した際、また発生後に、こどもや若者のこころの健康を支援するための5つの提言をまとめました。(こども・若者のこころの健康をサポートするために:日本とイギリスのこども・若者による公衆衛生上の緊急事態への提言)また、この提言をより視覚的に理解してもらうためのインフォグラフィックも作成しました。
本提言が、政府だけではなく、家庭、学校や地域の人々、自治体なども含めた、子どもが暮らす社会全体へのメッセージとして届き、今後発生する可能性のある公衆衛生上の緊急事態の際に、活用されることを期待しています。


こども・若者のこころの健康をサポートするために

研究の流れ

研究の流れを示したフローチャート

ティーン・ボイス・プロジェクトについて

このプロジェクトは、国立成育医療研究センターのコロナ×こども本部と、イギリスのオックスフォード大学Co-SPACEの研究チームによる国際共同研究の一環として行われました。プロジェクトに参加した日英のこども・若者28名(年齢:12~21歳、日本:16人、イギリス:12人)は共同研究者として、提言作成のすべてのプロセス(インタビュー調査の設計と実施、インタビュー結果の分析と解釈)において主導的な役割を果たしました。
28名のこども・若者らは、共同研究者としての役割を果たすために、実践的な調査スキルのトレーニングを受けました。そして、新型コロナウイルスの流行について国立成育医療研究センターやオックスフォード大学が実施してきた研究結果[1]や、自身や周囲のさまざまな人々の経験についてフォーカス・グループやインタビューを通じて情報収集と思考の整理を行い、さらに両国における課題や解決案の共通点について国を越えて話し合い、考察を加えることで、提言を作成しました。
この過程において、イギリスではNGO Leaders Unlocked、日本ではNPO法人フリー・ザ・チルドレン(FTCJ:https://ftcj.org/)と一般社団法人Everybeing(https://everybeing.or.jp/)が子ども・若者たちをさまざまな面でサポートしました。さらに日本では、FTCJのトレーニングを受けた大学生ファシリテーター4名がこども・若者と協働しました。
インフォグラフィックにQRコードでリンクされている報告書では、この提言が公衆衛生上の緊急事態において、こども・若者のこころの健康を支えるためになぜ必要なのかという現状の課題、解決策およびその具体的なアイデアについても示しています。


[1]新型コロナウイルス流行期のこども・若者とその家族のメンタルヘルスを追跡調査したコロナ×こども本部(日本)とCo-SPACE(英国)の調査には、日本で30,000家族以上、英国で12,500家族以上が参加しています。
コロナ×こども本部の研究結果:https://www.ncchd.go.jp/center/activity/covid19_kodomo/related_info.html
Co-SPACEの研究結果:https://cospaceoxford.org/findings/


本提言へのコメント

山口有紗(国立成育医療研究センター)

すべてのこどもたちは、危機において単に守られる存在ではなく、主体的に声を上げる力を持つ権利の主体です。コロナ禍での調査を通じて、大人が聴きたいことではなく、こどもたち自身が伝えたいと願う声に耳を傾けることの重要性を、こどもたちの声から教えていただきました。日英のこどもたちと若者たちが、危機における心の健康とウェルビーイングについて共に考えたメッセージが、政府をはじめ、広く社会全体に届き、こどもたちの日常に多様な形で広がっていくことを心より願っています。

シモーナ・スクリプカウスカイテ博士(オクスフォード大学)

これらの提言は、イギリスと日本の若者たちによって、国境を越えて共通して認識されたニーズを反映しています。共同研究者たちは、自身の経験を振り返り、他の若者、保護者や介護者、政策立案者、学校の職員の経験や視点を取り入れるために、懸命に取り組みました。この提言は、こうした努力のたまものであり、今後の公衆衛生の緊急事態において若者の心の健康をより良く支援する助けになると考えます。特に印象的なのは、若者たちが自分たちだけのために多くを求めているのではないという点です。彼らが求めているのは、尊重され、社会的なつながりを築く機会です。さらに、社会的に弱い立場に置かれている人々が学校や心の健康において適切にサポートを受けられることの保障を、彼らは願っています。

日本のこどもの共同研究者(参加当時17歳)

今回のティーン・ボイス・プロジェクトへの参加は、学校では通常できない、私にとってまったく新しい経験でした。政策提言を作成するのは初めてのことで、最初は戸惑うことも多かったのですが、小学生から高校生まで幅広い年齢の仲間と一緒に活動する中で、多くの学びや気づきがありました。例えば、コロナ禍での経験を互いに共有し、他の人の話を聞くことで、自分とは違う困難に直面している人がいることを知り、視野が広がりました。青少年のメンタルヘルスは、根本的には青少年の問題だからこそ、地域や学校、政策レベルを問わず、青少年の声に耳を傾け、それを解決策に反映させることが大切だと思います。ティーン・ボイス・プロジェクトは、私たちが声を上げ、政策決定の場でそれを届けるための貴重な機会を提供してくれました。このような場を作ってくださった関係者の皆さんに心から感謝しています。

イギリスの子どもの共同研究者

パンデミックが私たちみんなに与えた影響は明らかで、ライフスタイルの変化も、英日両国に共通して見られました。両国での共通の認識として、若者たちが意思決定に十分に関わったり影響を与えたりできなかったこと、またパンデミック中に若者たちが声を上げられないと感じていたことが挙がりました。つまり、パンデミック中、私たちの声に十分に耳を傾けてもらえなかったのです。ロックダウン中に感じた孤立感も両国に共通していて、社会的なつながりの必要性がより強調されました。また、パンデミック中に特に社会的に弱い立場に置かれた人々への支援が不十分だったことについても意見が一致しました。さらに、特に心の健康に関して、両国で共有されたのは、正確で公平な情報の必要性でした。教育が生徒のメンタルヘルスに与える影響は大きく、子どもたちは一人一人異なる学び方をします。そのため、私たちは、それぞれのニーズに合わせた教育のあり方も必要だという点についても強調しました。

ローズ ダウリング(NGO Leaders Unlocked)

この革新的なプロジェクトは、イギリスと日本の若者がパンデミックの経験を共有し、共に解決策を考える貴重な機会となりました。両国の参加者は、COVID-19のパンデミックにおいて充分な支援を受けられなかったと感じており、彼らの変革のためのアイデアには多くの共通点があることが印象的でした。若者たちがまとめた提言は力強く重要なものであり、政策立案者が今後の緊急事態への備えを考える際に考慮することを願っています。

安里 賀奈子(こども家庭庁成育局成育環境課長)

ティーンボイスプロジェクトが、日英の子どもたちの生の声をこども家庭庁に届けてくれたことに感謝しています。このプロジェクトを通じて、「こどもの声を聴く施策」の重要性や、「こどもの居場所づくり」が子どもたちにとって大きな支えとなること、さらに様々な施策を子どもたちにしっかり届ける必要性を改めて実感しました。こども家庭庁はすべての子どもが声を上げられる社会、そしてその声が社会をより良くするために必要だと感じられる社会を目指しており、今回の取り組みは非常に意義深いものだと思います。

本件に関する取材連絡先

国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室

03-3416-0181(代表)

koho@ncchd.go.jp

月~金曜日(祝祭日を除く)9時〜17時


※医療関係者・報道関係者以外のお問い合わせは、受け付けておりません。

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