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若年者の後天共同性内斜視の特徴を明らかに 中高生に多いことや、改善しやすい人の特徴がわかりました

浜松医科大学医学部附属病院眼科 佐藤美保病院教授らは国立成育医療研究センター眼科 仁科幸子診療部長、日本弱視斜視学会、日本小児眼科学会と協力して若年者の後天共同性内斜視の全国調査を行いました。その結果、後天共同性内斜視の発症は中高生に多く、受診時に立体視があり、携帯型デジタル機器の視聴時間をそれまでの半分以下に減らせる人が改善しやすいことを明らかにしました。
本研究成果は、3つの論文にまとめ、「Jpn J Ophthalmol」に2023年9月(第1報)、2025年3月(第2報)、「BMJ Open Ophthalmol」に2024年10月(第3報)に掲載されました。
年齢別患者数

研究成果のポイント

  • 全国で後天共同性内斜視を発症した5歳から35歳をしらべたところ、16歳をピークに中高生で頻度が高く、斜視や弱視の既往のある人や不同視の人が発症しやすいという特徴があきらかになりました。
  • デジタル機器の視聴時間が過剰な人は視聴時間を減らし、視聴距離を30㎝以上保ち、休憩を入れるという指導を受けたことで、44%の人で斜視の程度が改善し、治癒に至った人は6%でした。
  • デジタル機器を過剰に使用していた人では、初診時に立体視があること、斜視の程度が小さいこと、デジタル機器の視聴時間をそれまでの半分以下に減らすことが改善と関連することがわかりました。

研究の背景

近年、スマートフォンを代表とする携帯型デジタル機器を長時間視聴することで、急性内斜視を発症する若者が増加していると報告されています。一方で、デジタル機器を視聴する人は低年齢化しており時間も増加しています。後天共同性内斜視を発症しやすいのはどのような人なのか、斜視の発症原因にはデジタル機器が関係するのか、など不明な点が多いのも確かです。そこで患者さんを前向きに登録する研究を行いました。

研究手法・成果

全国の斜視弱視、小児眼科診療にたずさわっている眼科医をリクルートして、発症から1年以内で受診した5歳から35歳の後天共同性内斜視の患者さんを登録しました。2019年11月から2021年12月まで患者さんを登録しました。脳に異常がないことを確かめたのち、年齢分布や生活背景や斜視の程度などを調べました(第1報)。その患者さんたちを1日の視聴時間が小学生以下で60分以上、中高生以上で120分以上の人を過剰使用群とし、それ未満の人を非過剰使用群としました。すべての人に適切な眼鏡をかけていただき、携帯型デジタル機器の過剰使用群には使用方法を指導しました。内容は30cm以上に距離を離すこと、30分間の視聴後に5分間の休憩を入れること、一日の視聴時間を小学生以下は60分未満、中高生以上は120分未満にすることです。3か月後に斜視の再検査をして変化を調べました(第2報)。また、デジタルデバイスの過剰使用群の3か月後の結果から治癒した人、改善した人、変わらない人、悪化した人にわけて、それぞれの特徴を調べました(第3報)。
全国から194名が登録され、16歳をピークとして中高生が多く(図)、中高生以上ではデジタル機器の使用時間が長いことがわかりました。斜視の程度は小児では成人より大きく、中高生と成人では遠くを見た時に斜視の程度が大きくなっていました。斜視や弱視の既往のある人や、不同視の人が多く見られました。(第1報)
過剰使用群では、3か月後には使用時間が減少し、斜視角は統計的に有意に減少しました。症状が治癒または改善した人は全体の44%みられましたが、完全に治癒に至った人は6.4%でした。デジタル機器の非過剰使用群では使用時間も斜視角も減少せず、治癒したのは4%でした。(第2報)
過剰使用群では、初診時に斜視角が小さく、立体視が良好で、携帯型デジタル機器の視聴時間を初診時の半分以下に減らすことが改善と関連していることがわかりました。(第3報)

発表論文情報

発表雑誌:
①Jpn J Ophthalmol.2023 Nov;67(6):629-636
(DOI:10.1007/s10384-023-01023-5. Epub 2023 Sep 11.
② Jpn J Ophthalmol 17 March 2025 published online
(DOI:https://doi.org/10.1007/s10384-025-01171-w
③ BMJ Open Ophthalmol. 2024 Oct 31;9(1):e001713.
(DOI:10.1136/bmjophth-2024-001713.

論文タイトル:
① Clinical presentations of acquired comitant esotropia in 5-35 years old Japanese and digital device usage: a multicenter registry data analysis study.
② Impact of prolonged digital device use on acquired comitant esotropia: ACE-DD study 2
③ Factors affecting outcome of acquired comitant esotropia with restricted use of digital devices: ACEDD Study 3

著者:
① Hirohito Iimori, Sachiko Nishina, Osamu Hieda, Toshiaki Goseki, Noriko Nishikawa, Sadao Suzuki, Akiko Hikoya, Miwa Komori, Hiroko Suzuki, Tomoyo Yoshida, Shion Hayashi, Takafumi Mori, Akiko Kimura, Takeshi Morimoto, Yukiko Shimizu, TakashiNegishi, Tamami Shimizu, Yoshimi Yokoyama, Yoshiko Sugiyama, Noriyuki Azuma, Miho Sato
②Hirohito Iimori, Noriko Nishikawa, Sachiko Nishina, Tomoyo Yoshida, Takafumi Mori, Osamu Hieda, Akiko Hikoya, Miwa Komori, Shion Hayashi, Takashi Negishi, Toshiaki Goseki, Yoshiko Sugiyama, Akiko Kimura, Takeshi Morimoto, Yukiko Shimizu, Tamami Shimizu, Yoshimi Yokoyama, Hiroko Suzuki, Sadao Suzuki, Noriyuki Azuma, Miho Sato
③ Noriko Nishikawa, Hirohito Iimori, Reiko Kinouchi, Sachiko Nishina, Tomoyo Yoshida, Akiko Hikoya, Miwa Komori, Osamu Hieda, Toshiaki Goseki, Takafumi Mori, Takeshi, Morimoto, Takashi Negishi, Tamami Shimizu, Yukiko Shimizu, Shion Hayashi, Yoshiko Sugiyama, Yoshimi Yokoyama, Akiko Kimura, Hiroko Suzuki, Sadao Suzuki, Noriyuki Azuma, Miho Sato



本件に関する取材連絡先

国立成育医療研究センター 企画戦略局 広報企画室

03-3416-0181(代表)

koho@ncchd.go.jp

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