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好酸球性食道炎について
好酸球性食道炎とは
好酸球というアレルギー反応に関与する白血球が、食道にたくさん集まって慢性的な炎症を生じさせる病気です。炎症が持続することによって食道の動きが悪くなり、食事が通りにくくなったり、つかえる感じや胸やけ、胸の痛みなどの症状を生じます。さらに進行すると食道が狭くなって、食事が詰まってしまうこともあります。
日本では、まれな病気と考えられていましたが、最近、人間ドックなどで胃カメラを受けた際に診断される割合が増加しています。
好酸球が食道だけに集まった場合に好酸球性食道炎と言います。胃や腸にも集まって炎症が起きている場合には、好酸球性胃腸炎と診断されます。
病気はいつまで続くのでしょうか?
慢性的に経過し、自然治癒することは少ないとされています。また、治療により落ち着いた状態であっても、治療を中断すると再発することが多いと報告されています。
なぜこの病気になるのでしょうか?
発症の原因については、はっきりわかっていませんが、喘息やアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患を持っている人に多く発症します。また、30~50歳代の男性の方に発症しやすいことがわかっています。
多くの病気には遺伝的な要因と環境的な要因が関与しますが、この病気では遺伝的な要因よりも環境的な要因が発症に強く関連していることが報告されています。
病気のメカニズムとは?
正確にはわかっていませんが、この病気の患者さんに対して特定の食事を制限することで炎症の改善が認められることが多いため、主に食物抗原(アレルゲン)に対する慢性的なアレルギー反応によって食道に炎症が生じると考えられています。食道の粘膜に抗原が接触するとアレルギー反応を生じ、そのシグナルによって食道に好酸球がたくさん集まり、好酸球から分泌される蛋白やアレルギー反応によって誘導される蛋白が、食道に慢性的な炎症を引き起こすというメカニズムが想定されています。このような状態が持続すると食道の動きが悪くなったり、狭くなったりします。
この反応は、食事を摂取後に短時間でじんましんやかゆみ、下痢などが生じる即時型の食物アレルギーとは異なり、慢性的に生じるため、血液検査(特異的IgE抗体など)や皮膚テストで原因となる抗原を見つけ出すことは困難です。
好酸球性食道炎の診断方法
好酸球性食道炎の診断の流れ
好酸球性食道炎は以下のことによって診断されます。
- 食道の働きの低下を示す嚥下(えんげ)障害や食事のつかえ感などの症状がある。
- 上部消化管内視鏡検査(いわゆる胃カメラ)で食道から組織を採取(生検)し、顕微鏡で観察すると好酸球が多数集まっている。
- 食道に好酸球が集まる他の原因を除外する。
食道に好酸球が集まる病気には、好酸球性食道炎以外に好酸球性胃腸炎、好酸球増多症候群、薬剤が原因となるもの、炎症性腸疾患などがありますので、これらを区別することも大切です。
好酸球性食道炎の組織学的診断方法
食道上皮内の好酸球集積部位において、好酸球数が15個以上/HPFの時、診断されます。
HPF (high power field)とは、顕微鏡の400倍、1視野のことです。
症状スコア
① 日常診療に役立つ、毎日患者さんがつけるスコア
日常生活では嚥下(えんげ)困難や食事のつかえ感が問題となります。好酸球性食道炎に関連した嚥下(えんげ)障害の程度を評価する質問票として嚥下(えんげ)障害症状質問票(DSQ)が用いられます。
(内容は、制作中です。)② 難治性疾患制度において重症度を測るためのスコア
好酸球性食道炎の治療方法
薬剤による治療が必要と判断された場合、最初に用いられるのは胃酸の分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬)です。この薬は逆流性食道炎や胃・十二指腸潰瘍でも用いられ、比較的安全性の高い薬です。胃酸の分泌を抑えることで、食道のバリア機能が改善してアレルギー反応を抑える効果があると考えられており、服用によって約6~7割の患者さんは症状や食道の炎症が改善します。
プロトンポンプ阻害薬で効果がない場合は、喘息で用いられるステロイド吸入薬を、吸入するのではなく、飲み込んで食道に付着させる、局所ステロイド治療を行います。
この2つの治療で多くの方は病状が安定します。
海外では、小麦、乳製品、卵、大豆、ナッツ類、魚介類の6種類の食事を除去する抗原除去食の摂取によって約7割が改善すると報告されていますが、日本では、あまり行われていません。
長期間の経過で食道が狭くなっている場合には、内視鏡を使って狭いところを拡張するバルーン拡張という治療が行われます。
好酸球性食道炎の医療費助成、難治性疾患の制度
好酸球性食道炎は、一定の重症度を示し、内視鏡組織検査で好酸球の集積が認められた患者さんについて、医療費助成の制度が適応されます。詳しくは、難病情報センター、医療費助成制度のページをご覧ください。
本サイトをご覧になったうえで、さらに詳しい内容を知りたい方は、厚労省研究班作成の好酸球性消化管疾患診療ガイドラインが無償公開されています。ご参照ください。