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最新の医療被ばく研究コラム
放射線の感受性は人によって違う?
はじめに
病院で行われる最新の医療で、放射線検査は病気の診断や治療に欠かせないものです。特に、CT検査は、機器の進歩により非常に綺麗な画像があっという間に撮れるようになり、いろんな病気の診断や早期発見にとても役に立っています。
一方で、CT検査も放射線検査ですので、非常に低いレベルですが被ばくをします。放射線の被ばくではがんのリスクが上昇することが知られていますが、10万人以上の原爆被ばく者の調査でも、がんのリスクは「100mSV」以下の弱い放射線被ばくでは明らかではありません。
CT検査による被ばくは、大体5-10mSv前後で100mSvの10分の1程度です。しかし、子どもでは白血病や脳腫瘍のリスクが増加するかもしれないとの報告もあるので、子どもや妊娠した女性では放射線を使った診断が慎重に行われています。
CT検査と染色体
放射線の障害は、遺伝子が刻まれている染色体DNAの傷が原因となっていることが知られています。
私たちは、染色体異常を効率的に調べることができるPNA-FISH法を開発し、CT検査を受けた60人の大人の患者さんについて染色体を調べました。その結果、CT検査後に染色体異常の数が少し増えていることがわかりました。
もう一つ大事なこととして、検査前からもともとある染色体異常の数やその増え方に個人差があることがわかりました(図1)。そこで、染色体異常の個人差が健康な人にもあるのかを調べたところ、弱い放射線では、放射線の強さ(被ばく線量)とともに染色体異常が増える人と、あまり増えない人がいることがわかりました(図2)。
図1:CT検査前後での染色体異常数の変化
図2:健常な人の放射線被ばくによる染色体異常の増加
まとめ
参考文献
- Chromosomal Abnormalities in Human Lymphocytes after Computed Tomography Scan Procedure. Shi L, et al. Radiat Res. 2018;190(4):424-432.