診断参考レベル・新医療法
診断参考レベル
診断参考レベルとは
医療における放射線被ばくの最適化は、社会・経済的なバランスも考慮しつつ、できるだけ被ばくを少なくするよう努力するというALARA原則に従って行われています。必要以上に放射線量を下げると、診断能が十分でない画像となってしまいます。逆に、必要以上に放射線の量を上げて撮影しても、ある画像は奇麗になりますが診断能はそれほど変わらなくなってきます。これらの問題に対応するために策定されているのが「診断参考レベル(DRL)」です。DRLは、放射線診療に関連する学会や団体などが連携し組織されている医療被ばく研究情報ネットワーク(J-RIME)によって取りまとめられました。
日本国内で放射線診断などに通常用いられる標準的な線量を調査し、それらを集計して標準的な線量などを導き出し、それよりも線量が多い方向へ大きく違っている医療施設に対して、検査などで用いる線量の見直しを促すためのものです。
それぞれの検査について、各々の医療施設が用いている標準的な線量を確認し、DRL を超えている場合には撮影に用いる線量の見直しを行うことが求められます。このように各医療施設に線量の確認や見直しを促すことで、最適化を進めていくことがDRLの目的です。
日本では2015年に初めてDRLが設定されましたが、定期的なアップデートとして2019年に全国的な調査が行われ、それらの集計や解析を行い2020年7月3日に新しいDRLが公表されました。
新医療法
医療法施行規則の改正
令和2年4月1日に医療法施行規則が改正されました。「管理者が確保すべき安全管理の体制」として、従来から規定されていた院内感染対策、医薬品に係る安全管理、医療機器に係る安全管理、高難度新規医療技術などに加えて、医療放射線に係る安全管理が新たに加えられました。
ここでは、
- 医療放射線安全管理責任者の配置
- 医療放射線の安全管理のための指針の策定
- 放射線従事者に対する医療放射線に係る安全管理のための職員研修の実施
- 医療被ばくに係る安全管理のための業務の実施と方策の実施(医療被ばくの線量の管理・記録)
- 医療従事者と患者の間での情報の共有
などが求められています。この医療放射線に係る安全管理は、医療で放射線を扱うあらゆる施設が対象です。医療放射線に係る安全管理、そして線量の管理については、先に述べた診断参考レベルを用いて線量に関する最適化を実施しなくてはなりません。これらを行うことで、患者さんに対してより安全な放射線診療をお届けすることが可能になると思われます。
なお、現時点では以下の装置について、線量の管理・記録を実施することが求められています。
- 移動型デジタル式循環器用X線透視診断装置
- 移動型アナログ式循環器用X線透視診断装置
- 据置型デジタル式循環器用X線透視診断装置
- 据置型アナログ式循環器用X線透視診断装置
- X線CT組合せ型循環器X線診断装置
- 全身用X線CT診断装置
- X線CT組合せ型ポジトロンCT装置(PET/CT)
- X線CT組合せ型SPECT装置(SPECT/CT)
- 陽電子断層撮影診療用放射性同位元素
- 診療用放射性同位元素