腸管出血性大腸菌感染症に関する臨床研究
ごあいさつ
腸管出血性大腸菌(Enterohemorrhagic Escherichia coli; EHEC)は毒素を産生し、出血性腸炎や溶血性尿毒症症候群(Hemolytic Uremic Syndrome; HUS)の原因となります。HUSは溶血性貧血・血小板減少・急性腎機能障害の3主徴をもって診断され、先進諸国における小児の急性腎障害の最も頻度の高い原因として知られています。また、EHECはわずかな菌量でも食中毒や施設での二次伝播によるアウトブレイクの原因となります。EHEC感染症の合併症として稀に発生する急性脳症は非常に予後が不良ですが、発生数が少ないことからその診療実態には不明な部分が多くあります。
EHEC感染症は国内でも毎年各地でアウトブレイクが発生しています。一部の保菌者に対しては就業制限の措置が取られることからも、社会的影響や関心も非常に大きい感染症と言えるでしょう。私たちは当センターを中心に「腸管出血性大腸菌感染症に続発する溶血性尿毒症症候群の発症・予後規定因子の検討と医療提供体制の構築のための研究」という研究班を立ち上げ、EHEC感染症に伴う未解決の問題点を解決すべく研究に取り組んでいます。
研究責任者:国立成育研究センター 理事長 五十嵐 隆