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センター長挨拶
遺伝子細胞治療推進センター長挨拶
遺伝子細胞治療推進センター長 小野寺 雅史
小児難治性疾患の多くは遺伝性疾患で、その大半が劣性遺伝形式を採るため、足りないものを補う治療法は臨床症状を大きく改善することが期待されます。実際、生まれながらに必要な代謝酵素がつくれない子どもに対し不足する酵素を補う酵素補充療法は劇的な治療効果を生みだし、これにより複数の酵素製剤は医薬品として承認されています。ただ、このような酵素製剤は体内で急速に代謝されるため定期的な投与が必要で、また、その使用に関しては煩雑さと高額な医療費が伴います。
遺伝子細胞治療はこれら治療効果の永続性を求め、患者に治療遺伝子を一回だけ投与するものです。その方法は血液細胞などの回収可能な細胞を、一旦、患者から取り出し、そこに治療遺伝子を入れて、再び、患者に投与するex vivo遺伝子治療と、直接、患者体内に治療遺伝子を入れるin vivo遺伝子治療があります。前者は主に血液や免疫系の疾患に対して行われ、後者は神経、筋肉等の疾患に対して行われます。なお、現在、対象となる遺伝性疾患としては、ex vivo遺伝子治療では原発性免疫不全症、先天代謝異常症、サラセミア、鎌形赤血球症などがあり、in vivo遺伝子治療では静脈内投与による血友病A、Bや脊髄性筋萎縮症を含む神経性疾患、局所投与としては網膜下に遺伝子を投与する遺伝性網膜色素変性症などがあります。また、急性白血病などに対してはキメラ抗原受容体免疫療法(CAR-T療法)が実施され、さらには今後、ゲノム編集技術を用いた新しい遺伝子細胞治療の開発が期待されています。
ただ、実際には遺伝子細胞治療はいまだ開発段階の治療法であり、その実施にはこれまでの医薬品開発には全くない新しい安全性、有効性の観点での評価が必要です。さらに治療においてウイルス製剤を使用する場合はカルタヘナ法に則り医療施設内に特別な実施体制を構築する必要があります。そこで当センターでは、国内で適切に遺伝子細胞治療を実施するため企業や研究者、医師等を支援する遺伝子細胞治療推進センターを設立致しました。遺伝子細胞治療に関わる多くの方に少しでもお役に立てることを願っています。