母性内科
お知らせ
基本情報
母性内科とは
母性内科は全国でも数少ない診療科で、1981年に日本で初めて大阪母子医療センターに設置されました。その後、1998年に神奈川県立こども病院に設置され、2002年に当センターの開設に併せ、成育医療の一貫として母性内科が設置されました。母性内科の目的は、「各種合併症妊娠及び妊娠に伴う母体の変化を、診療科の垣根を越えた総合的見地から診察・治療し、その病因・病態の解明や治療法を開発すること」です。
母性内科の役割
お母さんの健康作りをサポートします
- 妊娠前に...
- より良い妊娠・出産を目指したい方への健診・相談
- 内科の病気をもつ方への妊娠前からの管理
- 不妊症・不育症の方やこれまでの妊娠中に何らかの妊娠合併症を経験された方に対する内科的管理
- 妊娠中に...
- 妊娠合併症を発症された方への内科的管理 (産科と連携)
- 内科の病気をもつ方の管理
- 出産後に...
- 妊娠合併症を発症したお母さんの、長期的な健康を見据えたフォローアップ
- 内科合併症妊婦から出生した児のフォローアップ(新生児科・小児科と連携)
- 産後体調不良の管理
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慢性疾患をもつ方の中には、元気な子どもを産むことが出来るか不安な方や、お腹の赤ちゃんへの影響を心配して妊娠後の治療の継続を躊躇される方がいます。そのような方が安心して"妊娠と病気の療養を両立"できるよう、産科医師と協力し、お母さんの健康作りをサポートします。
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"妊娠は女性にとっての負荷テストである"という言葉にもあるように、妊娠中には将来発症しうる病気の素因が分かることがあります。妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などがその代表です。妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群を経験された方は、出産後、数年を経た後にそれぞれ糖尿病や高血圧症を発症しやすいことが知られています。生活指導などを行うことで、未病に導ける可能性があると考えています。
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妊娠糖尿病・妊娠高血圧症候群について興味のある方は、こちらをご覧ください。
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近年、人の一生をプログラミングするとされる子宮内環境の重要性が問われるようになりました(DOHaD 理論:Developmental Origins of Health and Disease)。母性内科は胎児の立場に立ち、その置かれている子宮内環境をより良く改善することを通して、児の健全な出生に関わる診療科であるともいえます。
母性内科関連リーフレット
- 橋本病と妊娠リーフレット
- 高血圧合併妊娠用:血圧と妊娠手帳
- 妊娠糖尿病 リーフレットシリーズ [平成28-30年度 日本医療研究開発機構委託研究費 女性の健康の包括的支援実用化研究事業 (研究開発代表者 平松祐司)で作成]
- 母乳ブック
[平成28-30年度 日本医療研究開発機構委託研究費 女性の健康の包括的支援実用化研究事業 (研究開発代表者 平松祐司)で作成] - BMIが25以上の妊婦さん向けコラム
[令和元年度 日本医療研究開発機構委託研究開発費、健康・医療情報を活用したヘルスケア・イノベーション基盤整備事業 日本医療研究開発機構委託研究開発費、女性の健康の包括的支援実用化研究事業(研究開発代表者:荒田尚子)で作成]
診療内容・業務内容
診療内容
(1)慢性の病気を持っている女性の妊娠前・妊娠中・出産後のケア(合併症妊娠)
膠原病・甲状腺疾患・高血圧・糖尿病・呼吸器疾患・腎疾患などの病気をもちながら、妊娠を希望される女性の妊娠前・妊娠中・出産後の内科的管理を行います。妊娠中の管理だけでなく、妊娠前に現在の病状を評価することも大切です。また、病気によっては、出産後に病状が安定しない場合もあります。母性内科では現在かかりつけの主治医と連携し、妊娠前~出産後まで診察を行い、より良い妊娠・出産を目指しています。
(2)妊娠中に現れてきた病気のケア(妊娠合併症)
妊娠中には様々な病気が顕在化します。妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群はその一例ですが、適切に治療を行わなければ、お母さんだけではなくお腹の赤ちゃんにも様々な悪影響が出てしまいます。母性内科で産科と連携し、内科的立場でこれらの妊娠合併症の治療を行います。
(3)妊娠中の検診で発見された病気に関する診療や指導
今まで全く知らなかった自分の病気が、妊婦健診で偶然分かることがあります。例えば、B型肝炎のキャリアのような感染症です。妊娠~出産までの期間を母性内科で管理し、出産後は適切な医療機関を紹介します。
(4)産後の体調不良などの診療
風邪をひいたわけでもないが何となく体調が悪いなど、産後約6ヶ月までは、妊娠・出産に伴い、体に変化が起こることがあります。産後甲状腺炎がその一例です。何となく体調が悪いが何科を受診していいのか分からない方は、母性内科を受診してください。
(5)不妊診療科や不育診療科との診療連携
不妊の原因に内科疾患が隠れていることがあります。また、過度の肥満女性は妊娠しにくく、妊娠した場合も妊娠合併症のリスクが高いため、肥満の改善後に不妊治療を行う必要があります。不妊診療科と連携し、不妊の原因となる内科疾患の診療や肥満女性の体重管理などを行っています。
流産を繰り返す不育の原因の一つに、抗リン脂質抗体症候群があります。妊娠前の評価やそれぞれの患者に応じた治療方針の決定や出産時期など、不育診療科や産科と連携し、妊娠初期から出産までの管理を行います。
(6)予防接種などの保健指導
妊婦のインフルエンザワクチン接種を行っています。また、妊娠中の検査で風疹や麻疹などの抗体が陰性の方には、産後にワクチン接種を行っています。
(7)生活習慣病を予防するための保健指導
妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの妊娠合併症は、妊娠が終われば改善します。しかし、出産後長期的にみると、高血圧症や糖尿病になりやすいことが分かっています。母性内科では妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病を認めた女性に対し、将来の生活習慣病を予防する生活指導や産後の管理を行っています。
(8)妊娠中や授乳中の薬の相談
病気のため継続的に薬を飲む必要がある場合や、風邪をひいたが薬を飲んでもよいのかなど、妊娠中や授乳中の赤ちゃんへの薬の影響について、母性内科では「妊娠と薬情報センター」と連携して、妊婦や授乳婦の薬に関する疑問にお答えしています。
(妊娠中や授乳中の薬について興味のある方はこちら)
先進医療・特殊検査
(1)治療・診療連携
- 免疫グロブリン療法 : 標準治療に抵抗性を示す抗リン脂質抗体症候群合併妊娠
- 血漿交換療法 : Rh不適合妊娠など
- 胎児甲状腺モニタリングを用いたバセドウ病管理 : 産科と連携して診療
- 胎児心モニタリングを用いた抗SS-A抗体陽性妊娠管理 : 胎児診療科と連携して診療
(2)検査
- 持続血糖モニタリング(continuous glucose monitoring):糖尿病合併妊娠
- 24時間自由行動下血圧測定(Ambulatory Blood Pressure Monitoring: ABPM)
- 超音波法を用いた骨密度測定
専門分野
- 自己免疫疾患(膠原病)
全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、関節リウマチ、高安動脈炎、抗リン脂質抗体症候群 - 甲状腺疾患
バセドウ病、橋本病、甲状腺機能低下症(ヨード過剰摂取、子宮卵管造影後)、阻害型抗体陽性甲状腺機能低下症 - 代謝疾患
糖尿病、高脂血症、肥満 - 呼吸器・アレルギー疾患
気管支喘息、アレルギー性鼻炎、慢性・遷延性咳嗽、呼吸器感染症 - 消化器系疾患
食道炎、食道潰瘍、胃炎、胃潰瘍、胃腸炎、虫垂炎、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、慢性肝炎(B型・C型肝炎)、慢性膵炎 - 血液疾患
貧血、特発性血小板減少性紫斑病、凝固機能異常(凝固因子欠乏症、プロテインS欠乏症、プロテインC欠乏症) - 循環器疾患
高血圧症、先天性心疾患、不整脈 - 腎・尿路疾患
慢性糸球体腎炎(IgA腎症、膜性腎症など)、腎盂腎炎、膀胱炎、尿路結石 - 神経疾患
てんかん、多発性硬化症、重症筋無力症、多発神経炎 - 妊娠に特異的な疾患
妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)、妊娠糖尿病、逆流性食道炎、水腎症、産褥期高血圧 - 外科疾患の術後
先天性胆道閉鎖症、先天性胆道拡張症、肝移植後 - 不妊や習慣性流産に関与する疾患
抗リン脂質抗体症候群、凝固機能異常、甲状腺機能異常、高プロラクチン血症、糖代謝異常
診療実績
母性内科外来の管理目的別初診総数
| 2021 | 2022 | 2023 |
---|---|---|---|
妊娠前の管理 | 116 | 133 | 62 |
妊娠中の管理 | 512 | 600 | 501 |
産褥期 | 24 | 27 | 38 |
母性内科外来の紹介理由
| 2021 | 2022 | 2023 |
---|---|---|---|
内科合併症(セカンドオピニオン含む) | 506 | 591 | 465 |
妊娠合併症 | 92 | 106 | 76 |
偶発疾患 | 9 | 9 | 20 |
母性内科外来の疾患別初診総数
| 2020 | 2021 | 2022 |
---|---|---|---|
膠原病、APS | 74 | 82 | 64 |
内分泌・代謝 | 286 | 362 | 242 |
腎・高血圧 | 69 | 106 | 109 |
呼吸器・アレルギー | 21 | 24 | 39 |
感染症・免疫 | 128 | 152 | 78 |
循環器疾患 | 10 | 10 | 13 |
消化器疾患 | 8 | 12 | 8 |
神経疾患 | 6 | 7 | 7 |
血液疾患 | 14 | 13 | 18 |
その他 | 23 | 24 | 19 |
受診方法
受診には予約が必要です。予約センターに連絡し、予約してください。予約の変更も予約センターで対応します。初めて受診(初診)する場合は、医療機関(医院、病院)からの紹介状が必要です。
再診の方は、予約センターで予約してください。曜日毎に担当医が決まっているため、担当医の希望があれば、予約時に伝えてください。
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外来診療担当表は、こちらをご覧ください。
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受診方法については、こちらをご覧ください。
医療従事者の方へ
研究内容
- 膠原病リウマチ分野
- 全身性エリテマトーデスや関節リウマチを持つ女性の妊娠に関する研究
- 抗SS-A抗体陽性女性の妊娠管理指針の作成及び新生児ループスの発症リスクの軽減に関する研究
- 抗リン脂質抗体症候群合併妊娠の治療及び予後に関する研究
- 抗リウマチ薬の妊娠中の安全性に関する登録調査
- 代謝内分泌分野
- 妊娠を起点とした将来の女性および次世代の糖尿病・メタボリック症候群発症予防のための研究
- 女性自身の出生体重と妊娠・分娩や次世代に与える影響に関する研究
- 妊娠を考慮したバセドウ病の適切な管理に関する研究
- 「妊娠初期に投与されたチアマゾールの妊娠結果に与える影響に関する前向き研究(Pregnancy Outcomes of Exposure to Methimazole Study: POEMスタディ)」
- 周産期における母体甲状腺機能異常の妊娠転帰への影響に関する研究
- 腎・高血圧分野
- 妊娠高血圧腎症・妊娠高血圧・妊娠蛋白尿の出産5年後慢性腎臓病発症の評価
- 妊娠高血圧症候群発症と将来の生活習慣病予後に関する研究
- 妊娠高血圧症候群の女性より出生した児の生活習慣病予後に関する研究
- 高血圧合併妊娠に関する研究
- 妊娠高血圧腎症・妊娠高血圧・妊娠蛋白尿の慢性腎臓病予後に関する研究
- ウイルス感染・免疫分野
- 周産期における感染予防に関する研究(妊娠中、産褥期のワクチン接種、母子感染予防)
- 妊娠に関与する疾患の免疫学的な評価と治療に関する研究
- その他
- ステロイド使用歴のある女性の妊娠時骨折のリスク評価と予防法の検討○医療従事者の研修・育成活動
医療従事者の研修・育成活動
-
Reproductive ageの女性診療に関わる総合内科医のための研修
→ 研修を受けられた先生の声はこちら -
母性内科に興味をもつ産科医のための研修
研修会
- 妊娠と薬情報センター開設記念フォーラム (1回/年)
- 妊娠と薬情報センター拠点病院業務研修会 (1回/年)
- 内科疾患と妊娠フォーラム (1回/年)
学会活動
各学会における種々の疾患の妊娠管理ガイドライン作成への寄与
- 日本産婦人科学会
- 日本甲状腺学会
- 日本甲状腺学会・臨床重要課題「妊娠中のバセドウ病薬物療法の効果と安全性に関するエビデンス作成」委員会委員長:荒田尚子
- 日本糖尿病・妊娠学会
- 日本糖尿病・妊娠学会「糖尿病と妊娠にかかわる科学的根拠に基づく医療の推進プロジェクト」基盤事務局
- 提言「妊娠を起点とした将来の女性および次世代の糖尿病発症予防のために」
- 「妊娠を起点とした将来の女性および次世代の糖尿病・メタボリック症候群発症予防のための研究」研究班 主任研究者:荒田尚子
- 日本高血圧学会
- 日本妊娠高血圧学会
- 日本腎臓学会
- 日本移植学会