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眼科
基本情報
小児の視機能は出生時には未発達でぼんやりとしか見えていません。適切な視覚刺激が眼から脳へ伝達されて、脳が育つと視機能が発達します。通常は6歳までに矯正視力1.0に達しますが、目の病気、斜視、強度の屈折異常(遠視、乱視、近視、不同視)があると、視覚刺激が脳に伝わらず弱視となり、一生涯、眼鏡をかけても視力が出なくなります。とくに0~2歳は視覚刺激への感受性が高いため、目の病気が起こると高度の弱視になってしまいます。
当センターでは0歳から起こる重症な目の病気に対して、専門医による早期診断、早期治療ケアを第一目標としています。
日本眼科医会「3歳児健診における視覚検査マニュアル」より改変・転載
0歳からの早期診断・治療で、視力の向上を目指します
小児眼科分野における高度先進医療センターとして、多くの診療所や病院、大学病院などから患者さんを受け入れています。
当センターでは目の病気のある0歳からのお子さんに対して、専門の医師や視能訓練士が経験と技術を生かして早期に的確な診断をつけ、最善の手術、治療、訓練を行っています。
小児専門の各科とのチーム医療
小児眼科診療に特化した医師(常勤・非常勤)8名、視能訓練士(常勤・非常勤)7名が協力して、さまざまな年齢や疾患のあるお子さんに対し、きめ細やかな診察と検査を行っています。小児では視力検査ひとつをとってもコツが必要ですが、豊富な経験を持つスタッフが0歳から正確に視機能を検査します。精密検査や手術が必要なお子さんには、時間をとって特殊検査(網膜電図、視覚誘発電位、視野検査など)や術前検査(斜視、白内障、緑内障など)を行います。
初診の患者さんや、全身麻酔下での精密検査や手術のため入院が必要な患者さんに対しては、スタッフ全員がチームとして診療に関わり、治療方針を把握しています。
精密検査や手術では、小児に精通した麻酔科医による鎮静や麻酔が欠かせません。また、小児眼科の特徴として、未熟児や0歳からの先天性の眼疾患が多く、全身疾患に関する知識や管理が必要となります。当科では総合診療科をはじめとして、あらゆる小児専門の各科の医師と迅速に相談、連携して診療を行います。
ロービジョンケアと教育相談
視覚障がいのあるお子さんに対しては、原因となる疾患の精密検査を行い、今持っている視機能や今後の見通しを早期に評価します。ロービジョンケア(視覚の障がいがあるために生活に何らかの支障がある人への支援)の一環として、適切な眼鏡、拡大鏡、遮光レンズ、拡大読書器などの補助具を選んだり、視覚障がいに適した環境を整えたり、障害者手帳の申請や就学のため準備について、時間をとって説明しています。
また、視覚特別支援学校(東京都立久我山青光学園)の専門スタッフによる院内教育相談を行っています。視覚障がいがあるお子さんの養育や、視覚の活用に関する具体的な指導、お住まいの地域における教育機関との連携など、疾患や障がいの程度に応じて個別にきめ細かく対応しています。ご希望の方は、眼科外来受診時にご相談ください。
遺伝性疾患に関する専門外来
眼疾患の遺伝相談や遺伝学的検査について、時間をとって説明し、カウンセリングを行う眼科遺伝外来を、毎週火曜と木曜の午後に設けています。
主な対象疾患は、網膜芽細胞腫、遺伝性網膜ジストロフィ(レーバー先天黒内障、早発型網膜ジストロフィなど)、前眼部形成異常、先天無虹彩、小眼球などです。臨床遺伝専門医を中心に、当センターの遺伝診療センターおよび研究所と連携をとり、各種の遺伝学的検査、遺伝子解析を実施しています。
また当センターは、遺伝子の変化によって起こる網膜変性疾患である「遺伝性網膜ジストロフィ(IRD)」の遺伝学的検査エキスパートパネル(※)施設の認定を受けています。
※エキスパートパネルとは多職種の専門家が検査結果を医学的に解釈し、患者さんに適した治療やケアを検討する会議のこと
RPE65遺伝子変異による網膜ジストロフィが疑われる患者さんは、遺伝子治療の適応かどうかを調べるために、保険適応で遺伝学的検査を受けることができます。検査結果を正しく評価するために、遺伝医療に関するさまざまな専門家で構成されるエキスパートパネルが遺伝診療センター内で開催され、患者さんご家族へご報告しています。
IRD遺伝学的検査エキスパートパネル施設認定を受けている全国12施設
角膜疾患の専門外来
小児の角膜疾患に限定した角膜外来を設け(奇数月の水曜日午後1回)、角膜専門医を東京歯科大学市川総合病院より招いて診療しています。通常の予約センターでは受け付けておらず、一般診療で適応と思われる患者さんにのみご紹介しています。
診療内容・専門分野
重点を置いている疾患
- 0歳から起こる先天白内障、緑内障、家族性滲出性硝子体網膜症、コーツ病などの眼底疾患、乳児内斜視や難治性の小児斜視に対して、早期手術を行っています。重症未熟児網膜症に対しては、光凝固のほか、抗VEGF療法を行っています。0歳から起こる先天白内障、緑内障、家族性滲出性硝子体網膜症、コーツ病などの眼底疾患、乳児内斜視や難治性の小児斜視に対して、早期手術を行っています。重症未熟児網膜症に対しては、光凝固のほか、抗VEGF療法を行っています。
- 小児に頻度の高い間欠性外斜視、後天内斜視、先天上斜筋麻痺に対しては、両眼視機能(立体視)の発達、QOL向上を目指して、タイプ別に適切な時期に手術治療を行っています。手術のほか、12歳以上の麻痺性斜視に対しては、ボトックス注射治療を行っております。
- 眼瞼下垂、睫毛内反、鼻涙管閉塞など頻度の高い外眼部疾患に対し、最も適した時期をご家族とご相談して、手術治療を行っています。
- 難治性緑内障に対して標準的な手術法に加えて、新しい手術法であるマイクロパルス毛様体凝固術、プリザーフロⓇマイクロシャント手術を行っています。
- 角膜デルモイドに対する表層角膜移植、角結膜の癒着性疾患に対する羊膜移植を行っています。
- 網膜芽細胞腫に対しては、小児腫瘍科、小児外科、脳外科、放射線科、麻酔科と連携して、治療を行っています。
- 乳幼児期に起こる視覚難病(レーバー先天黒内障などの遺伝性網膜ジストロフィ、前眼部形成異常、無虹彩症、小眼球など)に重点を置いて、全国の主要施設と連携して早期の遺伝学的診断、AYA世代(15歳~39歳)までの眼と全身の管理に取り組んでいます。
0~2歳児で注意するべき眼の症状
お子さんに次のような目の症状がある場合は、お早めに眼科を受診し、当センターへの紹介が必要かご相談ください。
瞳が白くみえたり、光ってみえることがある
新生児期から注意すべき兆候です。先天白内障、網膜芽細胞腫、コーツ病、家族性滲出性硝子体網膜症、先天網膜剥離などの重症眼疾患の可能性があります。早急に眼科を受診してください。目の大きさや瞳の形がおかしい
新生児期から注意すべき兆候です。黒目が大きいときには緑内障、目が小さいときには小眼球、瞳の形がおかしいときには先天無虹彩症、コロボーマ(欠損)、瞳孔膜遺残・閉鎖(瞳孔が閉じている)の可能性があります。早めに眼科を受診してください。角膜(黒目)が白く濁っている、眩しくて目があけられない
新生児期から注意すべき兆候です。黒目が白く濁っている、眩しくて目をあけられないときには、先天性緑内障や先天性の角膜異常が疑われます。早急に眼科を受診してください。
眼瞼(まぶた)があかない
新生児期から注意すべき兆候です。小眼球などの目の病気、先天性の眼瞼下垂の可能性があります。生後1か月になってもまぶたが開かない場合には、一度眼科を受診してください。
子どもの頃に白内障、緑内障、網膜剥離、網膜芽細胞腫などの目の病気になったご家族やご親戚がいる
新生児期から注意すべき点です。先天白内障、緑内障、網膜芽細胞腫や、網膜剥離を起こす家族性滲出性硝子体網膜症などの疾患は、しばしば遺伝性で家族の中で起こることがあります。網膜芽細胞腫の場合は、生後すぐに、その他の疾患の場合でも、生後1か月をめどに一度、眼科を受診してください。
物をじっと見つめたり、目で追ったりしない
生後2~3か月になると、ともに物をじっとみつめたり、目で追ったりする視反応がみられるようになります。この時期を過ぎても視反応がはっきりしない場合には、早めに眼科を受診してください。
両方の眼球が揺れる、目の動きがおかしい
生後2か月頃から、両方の眼球が揺れる眼振や、目の異常な動きが目立ってくることがあります。身体の病気が原因のこともありますが、両目に病気がある兆候とも考えられますので、早急に眼科を受診してください。
視線が合わない、片目だけ視線がずれる
生後4~6か月になると、両方の目の視線がまっすぐに揃ってきます。両目の視線が合わない斜視、特に片目だけ視線がずれる場合には、重症な目の病気が潜んでいる可能性があります。目の病気がない場合でも、斜視が続くと、物を立体的に見る機能(両眼視機能)が育たなくなります。早急に眼科を受診してください。
片目を隠すと嫌がる(嫌悪反応)
片方の目を隠したときだけ嫌がる場合には、もう片方の目に眼疾患があって見えていない可能性があります。早急に眼科を受診してください。乳幼児は、片方の目が見えていなくても、良い方の目で物を見ているので、全く症状がなく、周囲が気づかないため、発見が遅れてしまいます。普段から、ときどき片目ずつ隠してみて、両目ともしっかり物をみているかどうか、確認してください。
極端に眩しさを感じる、暗いところを怖がる
乳幼児期に網膜ジストロフィ(網膜の機能異常)、緑内障、白内障が原因で、眩しさを感じたり、暗いところを怖がったりすることがあります。早めに一度眼科を受診してください。
頭を傾けたり、顔をまわしたりして物をみる
乳幼児期に、斜視、眼振、眼疾患、屈折異常などが原因で、頭を傾けたり、顔を曲げて物を見ることがあります。一度眼科を受診してください。
極端に物に近づいて見る
乳幼児は、近くのものを見ることによって視力が育ちますが、極端に物に近づいて見る場合は、弱視の可能性があります。一度眼科を受診してください。
乳幼児健診などで、小児科医から眼科精密検査を勧められた
3歳未満のお子さんでも、新生児、生後1か月、生後3、4か月、生後1歳6か月児健診などで、小児科の先生の問診や診察、視覚スクリーニング機器などで要精密検査となることがあります。眼科精密検査を勧められた際には、ぜひ早めに眼科を受診してください。
視覚難病の診療体制確立を目指す研究を行っています
視覚難病の早期診断と病態解明に取り組み、将来の新しい治療の導入に役立つよう、 乳幼児期の診療体制の確立をめざす研究を行っています診療実績
| 2021 | 2022 | 2023 |
---|---|---|---|
斜視手術 | 280 | 309 | 317 |
水晶体再建術(IOL非挿入) | 53 | 38 | 50 |
水晶体再建術(IOL挿入) | 17 | 29 | 25 |
後発白内障手術 | 8 | 6 | 5 |
緑内障手術(流出路再建術) | 48 | 29 | 19 |
緑内障手術(濾過手術) | 14 | 6 | 4 |
毛様体光凝固術 | 0 | 24 | 43 |
緑内障手術(インプラント挿入術) | 0 | 3 | 6 |
網膜再建術 | 16 | 0 | 0 |
網膜復位術 | 10 | 1 | 0 |
増殖性硝子体網膜症 | 20 | 0 | 0 |
硝子体茎顕微鏡下離断術(網膜付着組織を含む) | 2 | 0 | 0 |
硝子体切除術 | 53 | 50 | 57 |
硝子体内注入・吸引術 | 7 | 7 | 12 |
網膜光凝固術 | 23 | 35 | 11 |
網膜冷凍凝固術 | 4 | 9 | 9 |
眼瞼下垂症手術(眼瞼挙筋前転法) | 4 | 4 | 0 |
眼瞼下垂症手術(吊り上げ法) | 10 | 17 | 13 |
睫毛内反 | 34 | 56 | 58 |
内嘴形成術 | 0 | 6 | 0 |
虹彩整復・瞳孔形成術 | 0 | 0 | 3 |
涙管チューブ挿入術 | 3 | 5 | 3 |
眼球摘出術 | 7 | 7 | 5 |
眼球内容除去術 | 1 | 1 | 3 |
全層・表層角膜移植 | 3 | 2 | 2 |
全身麻酔下蛍光眼底法 | 120 | 71 | 68 |
網膜電図(ERG) | 58 | 20 | 18 |
ロービジョン相談 | 28 | 34 | 42 |
眼科遺伝相談 | - | - | 35 |
受診方法
受診には予約が必要です。予約センターに連絡し、予約してください。予約の変更も予約センターで対応します。初めて受診(初診)する場合は、医療機関(医院、病院)からの紹介状が必要です。 再診の方は、予約センターで予約してください。曜日ごとに担当医が決まっているため、担当医の希望があれば、予約時に伝えてください。3か月前の同日から予約をとることができます。なお、2年以上、受診のない方は、あらためて初診として予約をおとりください。-
外来診療担当表は、こちらをご覧ください。
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受診方法については、こちらをご覧ください。
眼科を初めて受診(初診)される方へ
高度先進医療を必要とされているお子さんに優先的に受診していただくよう、現在のところ、眼科の初診は- 他院の眼科医師から受診の結果、当院眼科での検査や治療が必要と判断された方
- 成育医療研究センターの他科の医師から当院での眼科受診が必要と判断された方
通常、およそ3ヶ月待ちとなっていますので、緊急性のある場合は、現在かかっている医療機関から直接医療連携室【03-5494-5486】に電話連絡をいただくことになっております。
緑内障、先天白内障、網膜芽細胞腫など速やかな手術・治療を必要とする疾患については、予約枠外でお受けしています。
眼科を再診される方へ
1階および2階にある、再来受付機に診察券を入れて受付をお願いします。再来受付機より受診票が出力されますので、ご持参ください。眼科受診の特徴とご了承いただきたいこと
大変受診患者さんが多いこと、また診察前に検査点眼などがございますのでかなりお待たせすることがあります。
当院の性格上、重症患者さんが緊急に来院されることがあり、診察順が前後することがございますので予めご了承ください。常勤 松岡真未、海外佳奈子、遠藤陽代
非常勤 北條希、小林彩那、赤池祥子、都倉絹代
医療従事者の方へ
当科は、日本専門医機構・日本眼科学会の認定を受けた眼科の専門研修基幹施設となっております。常勤医と非常勤医を含む8名の眼科専門医が指導医となり、眼科後期研修医及び小児眼科に興味を持つ若手医師の教育・研修を行っております。 また、国立成育医療研究センター研究所、遺伝診療センターと連携をとってさまざまな臨床研究を行うことが可能です。現在当科では、小児の難治性斜視、乳幼児の視覚スクリーニング、乳幼児期に発症するさまざまな視覚難病に関する研究を行っております。乳幼児期に重度視覚障害をきたす難病の遺伝学的診断と長期的診療体制の構築遺伝性網膜ジストロフィ、網膜芽細胞腫、前眼部形成異常、先天無虹彩に対する遺伝学的検査、遺伝子解析が可能となっております。 ご興味のある方は、随時、見学を受け付けておりますので、ご連絡ください。