代表: 03-3416-0181 / 予約センター(病院): 03-5494-7300
〈月~金曜日(祝祭日を除く)9時〜17時〉

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神経内科

基本情報

当科では、先天性神経(筋)疾患および後天性神経疾患に罹患した全ての小児の患者に、最適な検査、エビデンスに基づく診断、治療、ケアを行い、心身ともに健康な生活を送ることができることを目指し、関係各科と連携して緊密なチーム医療を行っています。
常勤医2名、フェロー5名の体制で、日本小児神経学会専門医や日本てんかん学会専門医が中心になり診療しています。脳神経外科、放射線科、リハビリテーション科等の関係各科や、神経生理検査技士、総合診療部等と連携し、総合的な診療を行っています。治療が困難な病気についても、周囲の支えを利用し、残された機能を最大限に活かすことで、生活の質を上げることができます。また、病気によっては長期の入院が必要になることもありますが、当院には院内学級が併設されており、学校へ通いながら治療を受けることができます。


診療内容・業務内容

診療内容

  • 小児期発症てんかん症候群の診断、治療(てんかん外科も含む)
  • 小児期発症稀少難病の診断、治療、ケア
  • 筋緊張亢進に対する包括的医療(睡眠調節、筋弛緩薬、ボツリヌス療法、リゾトミー、バクロフェン髄注療法(後者2つは脳神経外科と連携))
  • ジストニア、チック、ミオクローヌスなど運動異常症の診断、治療
  • 重症心身障害児のてんかん、摂食障害、筋緊張亢進、睡眠障害などの包括的医療
  • 脳炎・脳症の包括的診療
  • 睡眠障害の診断と治療
  • 他の小児内科疾患の神経系合併症に対する診断と治療

対象とする疾患

多数の小児期発症てんかん症候群の診断・治療、脳性麻痺とその合併症治療、先天異常(結節性硬化症など)、先天代謝異常(ミトコンドリア異常症、ライソゾーム病、有機酸代謝異常症など)、神経筋疾患(ギランーバレー症候群などの末梢神経疾患、筋ジストロフィなどの筋疾患、重症筋無力症)、多発性硬化症、ナルコレプシー、レット症候群、ジストニアなど各種運動異常症(movement disorder)、各種脊髄小脳変性症など小児神経領域の全てを網羅した診療を行っています。
さらに、小児救急疾患である急性脳炎・脳症、髄膜炎なども、各科と協力して診療を行っています。急性脳炎・脳症については、救急診療部、集中治療部、放射線科、検査部生理部門と協力し、診断・治療の標準化を図っています。画像診断の進歩により、脳症分類が再整理されつつありますが、いまだ有効なエビデンスに基づいた治療が少ないという現状があります。インフルエンザ脳症など日本に多いタイプの病態解明は急務であり、他施設との共同研究も含め、その成果が期待されています。
外科治療の適応があるてんかんについては、脳神経外科と協力し、てんかん外科治療のための診断や術前検査などを行っています。また、脳神経外科の行う下肢痙縮に対する選択的後根切除術を補完する治療として、頚部や上下肢の痙縮に対するボツリヌス療法、および抗痙縮剤としてのバクロフェンのポンプ持続注入療法も全国に先駆け行っています。これらは痙縮の包括的治療として、さらに体系化していく必要があります。
救急診療科を受診したけいれん重積、脳炎、脳症など神経疾患が疑われる際には、常に迅速に対応し、初期から診断や治療に関わっています。ICU入院患者についても脳炎、脳症、脳外科、移植外科などの術前術後に神経学的異常が疑われる場合、診断、評価、治療を行っています。NICUでは神経発達のフォローアップの必要な児に退院前から関わっています。

検査・治療の概要

診断に必要な検査として、頭部画像検査(核磁気共鳴画像(MRI)、fMRI(functional MRI), tractgraphy, CTスキャン)、脳血流シンチグラム(SPECT)、神経電気生理検査(脳波、ポリグラフ、各種誘発電位、神経伝導検査、事象関連電位)や、新たに磁気刺激装置、光トポグラフィー(NIRS),高周波脳波解析などを外来や入院で施行しています。また、各種筋ジストロフィー、先天性ミオパチー、筋炎などの筋疾患は筋生検を施行し、遺伝性神経疾患については他施設と協力のもと遺伝子検査を施行し、診断を行います。いわゆる運動異常症(movement disorders)の臨床診断を系統的に行うプロトコールを準備し、同症のセカンドオピニオン外来を設置して、広く全国からの要望に応えています。

院外活動

コケイン症候群、結節性硬化症、先天性無痛無汗症、ミトコンドリア脳筋症、SSPE、MCT8欠損症の患者会および当科受診中の難治性神経疾患患者の会があり、定期的なシンポジウム、会合やキャンプを開くなどの活動を行っています。


疾患について

てんかん

てんかんとは、脳(ニューロン=神経細胞)の過剰な電気的発射に由来する突然の不随意な意識変容、精神および運動症状の複数回の発現(=てんかん発作)を伴う慢性疾患です。慢性疾患というのは、必ずしも一生涯続くという意味ではありませんが、年余に渡る治療や経過観察が必要になります。
脳波異常のみや一回の発作で経過している状態は、てんかんとは呼びません。成人と異なり、小児期発症てんかん症候群にはいくつかの特徴があります。
第一に非常に強い年齢依存性があります。症候群ごとに発症の大凡の年齢が決まっています。小学生が点頭てんかんを発症することがないように新生児、乳児で欠神てんかんを発症することはありません。発達に沿って、年齢に依存し、多様な症候群が出現することが、小児の特徴です。
小児期発症てんかん症候群の中には良性の経過(発作予後が悪くない)をたどる一群(良性ローランドてんかんやPanayiotopoulos(パナイトポーロス)症候群など)があることも大きな特徴です。これらの良性のものとは対照的に、レノックスーガストー症候群のように、早い発症の難治性てんかんもあります。
てんかん発作自体は、多様な症状の氷山の一角に過ぎない場合もあり、発作のみを見ていることは良くないこともあります。軽度から重度のさまざまな発達遅滞、発達障害を合併する場合もあり、発作以外の症状の対策に時間を要してしまうことも多くあります。てんかんの治療は、患者・家族の最善のQOLを目指すため、多職種による包括的な医療が必要になります。
臨床発作を捕捉するために、入院し、長時間脳波ビデオ同時記録を行うこともあります。治療法としては抗てんかん薬、ACTH療法、ケトン食療法などがありますが、内服治療で発作がコントロールできない場合、もしくは内服のみでは発達の停滞・退行の可能性が高い場合には、てんかん外科による治療も視野に入れます。転倒発作に対する脳梁離断術、部分発作に対する焦点切除術、一側半球に焦点が広範にあり内科的治療が困難な場合の半球離断術などがあります。術前には硬膜下電極を留置し、発作焦点の絞り込みや運動野、言語野の同定のためのマッピングを行っています。また発作焦点や各種感覚皮質の高周波解析を行い、効果的な手術を目指しています。

運動異常症(Movement disorders)

運動異常症とは、中枢および末梢神経系の病変による随意運動や、姿勢の障害の総称です。ジストニア、アテトーゼ、ミオクローヌスなどの過剰な不随意運動、不随意姿勢やチックなどの過剰な半随意運動(必ずしも不随意ではなく短時間なら止めることができる)、種々の運動失調(四肢のふるえや歩行時ふらつき)などの症状や、「心因性」とされる多様な運動障害まで含まれます。
疾患として、周産期障害(脳性麻痺)、遺伝性疾患(瀬川病などの伝達物質病)、脳血管障害(もやもや病など)、Tourette症候群、脊髄小脳変性症、運動誘発性ジスキネジア、オプソクローヌスーミオクローヌス症候群、脳炎後遺症などの変性疾患があります。「心因性」とされる病態も、情動と運動に関連するシステムの変調の可能性があると考えています。また、睡眠に関連した病態では、ナルコレプシー(過眠や情動脱力発作)やむずむず足症候群(特に夕方以降下肢の痛みや違和感でじっとしていられない、必ずしも足のみではない)も運動異常症としての側面があります。
発症年齢や病態によって、薬剤やリハビリ、ボツリヌス療法による治療が行われます。主に、周産期障害による過剰な筋緊張亢進は、薬剤によるコントロールは不能な場合があり、脳神経外科との連携で選択的後根切除術、バクロフェン持続髄注療法を行っています。20年前には、薬物で不十分な軽減しかできなかった筋緊張亢進に対し、治療の幅が確実に広がっています。小児の運動異常症は成人と異なる病態をもち、年齢により症状が異なり、脳内運動関連領域のみならず、気分、情動、反射性の要素が複雑に関連するため「随意性」の変容が起こりますが、その病態に迫るため、詳細な神経学的診察に加え、経頭蓋磁気刺激、fMRI、各種誘発電位、事象関連電位を用いた解析を行っています。

脳炎・脳症

急性脳症は日本の小児に特に多く発生し、その病態の解析と治療の開発は急務です。当院では神経内科、救急診療部、ICU、脳神経外科が「脳症プロトコール」を作成し、早期の診断、病態把握、治療介入を積極的に行っています。
急性脳症は、インフルエンザとHHV-6ウィルスが2大病原ウィルスですが、病形としては急性壊死性脳症、けいれん重責型(2相性)脳症、出血性ショック脳症、脳梁膨大部脳症、その他重症度の異なる不均一な病態の総称です。そのため、初期から重症度の見極めが重要で、鎮静の上、挿管・呼吸管理を行う場合、持続脳波モニタリングが状態を把握するために必須となります。
サイトカインストーム抑制のためのステロイドパルス療法、酸化ストレス除去のためのエダラボン療法、けいれん予防のためのミダゾラム、フェノバルビタール、ホスフェニトイン投与、低体温--平温療法、ビタミンB群投与、カルニチン投与を行い、脳圧亢進が予想される場合は、頭蓋内圧(ICP)モニターや抗浮腫療法を行います。感染症科では、病因ウィルスを特定するため、迅速に検査を行っています。
当科では、これまでの急性脳症の患者の中で、ミトコンドリア内のベータ酸化に関わる酵素CPT IIの熱不安定性SNPを有する割合が多く、重症度にも関連することを報告してきました。このSNPは日本人が特異的に持っており、高熱により矢活することで、energy failureを起こして脳浮腫を加速することが推測されます。迅速な解熱の有用性が示唆されるデータでもあります。脳症の診断や治療のより高いエビデンスを得るための検討を続けていきます。

脱随疾患

代表的脱随疾患である多発性硬化症(MS)は、中枢性脱髄疾患の一つで、脳、脊髄、視神経などに病変(神経線維を取り巻く絶縁体としての髄鞘がなくなる)が多発し、多彩な神経症状が再発と寛解を繰り返す疾患です。日本では特定疾患に認定されている指定難病です。
日本での成人MSの発症頻度は、欧米の約10分の1、小児ではさらに少ないとされていますが詳細は不明です。予後についても、成人と比較したデータは乏しく、特に日本での実態は不明な部分が多いため今後の課題になっています。ヨーロッパからの報告では、小児期発症では成人に比較し初期に増悪・寛解を繰り返す頻度が高く、二次性進行や不可逆的障害に進行するまで10年程度長く,約 10 歳若くこれらの状態に達します。進行はやや遅いものの発症は早いため、不可逆的障害が若い年齢で起こることになります。
治療には、自己免疫疾患としての側面があるため、ステロイド、各種免疫抑制剤、IVIG(γ--グロブリン投与)、再発予防にはインターフェロン(IFN-β1aおよび1b)を使用します。しかし、インターフェロン(IFN-β1b)は視神経脊髄炎に対しては、無効もしくは悪化させる可能性があり、鑑別が重要となります。
日本などアジア地域では、視神経と脊髄を病変の主体とする視神経脊髄炎が多いとされていましたが、2004年に患者の血液中に特異的な自己抗体(アクアポリン4抗体)が存在することが分かりました。この自己抗体は、水チャネルに対する抗体であることが分かり、従来の大脳半球を病変の場とする一群とは病態を異にする可能性が高いとされます。

睡眠障害

睡眠障害には、構造の障害(眠れてはいても眠りが浅い、乳児では夜泣きが激しいなど)とリズムの障害(睡眠相後退、フリーラン、断続睡眠など)があります。いずれも日中の過眠の原因や、身体症状が顕在化することがあり、適切な対応が必要になります。浅い睡眠や睡眠リズムの乱れは、てんかん発作の誘因にもなります。睡眠表の記載や、ポリグラフにより睡眠構造やリズムを解析し、適切な環境調整や薬物治療を選択する必要があります。特に乳幼児期の睡眠の発達は、運動機能や情緒の発達とリンクしているため、適切な評価、診断と対応が必要です。発達障害がある場合、昼間の行為・行動に変容が起こることがしばしばありますが、適切な睡眠管理により安定する場合があります。


診療実績

検査件数および入院・外来患者数

­ 2021 2022 2023
脳波 866 944 867
長時間脳波ビデオ同時記録検査 157 134 132
聴性脳幹反応(ABR) 240 308 252
体性感覚誘発電位(SEP) 80 85 67
視覚誘発電位(VEP) 43 43 53
神経伝導検査 114 120 99
表面筋電図 5 5 4
針筋電図 3 11 7
磁気刺激検査(TMS) 9 8 8
F波 69 57 62
反復筋電図 2 3 3
入院患者数 351 354 367
外来患者数(再診) 7000 7369 7192
外来患者数(初診) 450 452 419

疾患別入院数

­ 2021 2022 2023
①てんかん 97 86 101
②発達遅滞 23 25 34
③脳炎・脳症 19 38 35
④脱髄疾患(MS等) 10 9 10
⑤けいれん重積 19 32 33

受診方法

受診には予約が必要です。予約センターに連絡し、予約してください。予約の変更も予約センターで対応します。初めて受診(初診)する場合は、医療機関(医院、病院)からの紹介状が必要です。

再診の方は、予約センターで予約してください。曜日毎に担当医が決まっているため、担当医の希望があれば、予約時に伝えてください。

スタッフ紹介

診療部長 医員 フェロー
阿部 裕一 早川 格
久保田 雅也(非)
立木 伸明
入江 紗瑛子
髙橋 達也
西岡 篤史

(併)=併任、(非)=非常勤

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医療従事者の方へ

当科で行っている臨床研究は多岐にわたりますが、1例の臨床観察に基づき、いずれも患者・家族のニーズから生まれたものです。新しい診断法・治療法につながるものから、「治らない疾患に対しても何ができるのか?」を問うたものまであり、院内各科、研究所、他施設との共同研究の産物です。
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