小児がん免疫診断科
基本情報
小児がん、とりわけ白血病やリンパ腫といった小児造血器腫瘍の免疫学的診断、すなわちフローサイトメトリー(FCM)を用いたマーカー診断を、研究所の小児血液・腫瘍研究部と協力して行っています。2018年4月に小児がん免疫診断科が設置されたことにより、我が国におけるすべての小児造血器腫瘍症例の免疫学的な中央診断を行うこととなりました。研究所と連携して、免疫学的診断に基づいて効率化・最適化された最新の遺伝子診断体制の確立を目指しています。また近年、小児白血病の最も重要な予後因子のひとつであるとされ、保険収載されたT細胞受容体・免疫グロブリン遺伝子再構成を利用した分子学的微小残存病変(PCR-MRD)が適用できない症例でも、FCM-MRDを測定することにより治療反応性評価を応用した治療法選択への貢献も目指しています。
診療内容
JCCG(日本小児がん研究グループ)の血液腫瘍分科会(JPLSG)による「日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)における小児血液腫瘍性疾患を対象とした前方視的研究 (JPLSG-CHM-14)」を通して、我が国におけるすべての初発および再発小児造血器腫瘍(白血病やリンパ腫)症例の免疫診断(細胞マーカー診断)を行っています。保険診療で一般的に行われている造血器悪性腫瘍細胞検査に比較して遙かに多い58抗原を系統的に検討することにより、国際的な診断基準であるWHO分類に準拠したきめ細かい診断を可能にしています。また抗原の発現パターン解析により遺伝子異常を予測し、キメラ遺伝子スクリーニングの結果と合わせることで、頻度の低い遺伝子変異であっても無駄なく効率的に異常を検出し、予後予測や治療選択へ貢献しています。
専門分野
- 多次元フローサイトメーターを用いた小児造血器腫瘍の免疫学的診断
- 多次元フローサイトメトリーを用いた小児造血器腫瘍の微小残存病変測定
診療実績
細胞マーカー診断の推移
| 2021 | 2022 | 2023 | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 全国 | 成育 | うち拠点病院症例 | 全国 | 成育 | うち拠点病院症例 | 全国 | 成育 | うち拠点病院症例 | |||
件数 | % | 件数 | % | 件数 | % | |||||||
ALL | 510 | 510 | 133 | 26.1 | 494 | 494 | 131 | 26.5 | 532 | 532 | 123 | 23.1 |
リンパ腫 | 67 | 67 | 22 | 32.8 | 67 | 67 | 26 | 38.8 | 53 | 53 | 14 | 26.4 |
AML/MDS | 188 | 188 | 55 | 29.3 | 190 | 190 | 69 | 36.3 | 141 | 141 | 44 | 31.2 |
CML | 13 | 13 | 1 | 7.7 | 19 | 19 | 7 | 36.8 | 17 | 17 | 4 | 23.5 |
TAM | 64 | 64 | 19 | 29.7 | 55 | 55 | 14 | 25.5 | 43 | 43 | 12 | 27.9 |
その他 | 119 | 119 | 39 | 32.8 | 109 | 109 | 23 | 21.1 | 128 | 128 | 26 | 20.3 |
新規合計 | 961 | 961 | 269 | 27.9 | 934 | 934 | 256 | 29.1 | 914 | 914 | 223 | 24.4 |
成育割合 | 100 | 100 | 100 | |||||||||
再発ALL | 76 | 76 | 29 | 38.2 | 78 | 78 | 27 | 34.6 | 81 | 81 | 12 | 14.8 |
再発リンパ腫 | 7 | 7 | 2 | 28.6 | 6 | 6 | 4 | 66.7 | 1 | 1 | 1 | 100 |
再発AML | 21 | 21 | 10 | 47.6 | 22 | 22 | 8 | 36.4 | 31 | 31 | 7 | 22.6 |
再発その他 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 3 | 2 | 66.6 | ||
MRD | 1079 | 410 | 38 | 783 | 341 | 37.6 | 694 | 289 | 41.6 | |||
合計 | 2146 | 720 | 33.6 | 1826 | 652 | 35.7 | 1724 | 534 | 33.2 |
詳細は以下「小児がん中央機関」ページ中の「中央分子診断」もご参照下さい。
受診方法
初めて当センターを受診するためには、医療機関(医院、病院)からの紹介状が必要です。現在かかっている医療機関から医療連携室に連絡してもらってください。
【医療連携室(直通)03-5494-5486 平日8時30分~16時30分】
セカンドオピニオンについて
当院では多くの種類の小児がんに対応したセカンドオピニオン外来を開設しています。必要により複数の診療部門の専門医によるセカンドオピニオンの提示も可能です。
セカンドオピニオンは現在診療を受けている主治医以外の専門医から「第二の意見」を聞くものです。小児がんはしばしば致命的な病気であること、治療に伴うリスクが大きいこと、進歩の著しい医学領域であることなどから、複数の医療施設、あるいは医療者の意見を求めることはよりよい治療を選択する手助けになり得ます。
当センター医師によるセカンドオピニオンを希望される場合は、その旨を、必ず現在の主治医にお伝えして、主治医から診療情報を提供していただくようお願いいたします。また、他の医療機関の医師によるセカンドオピニオンについても、可能な範囲で情報提供をいたします。
小児がん相談支援センター
小児がん相談員(ソーシャルワーカー)が窓口となり、医師や看護師と連携して小児がんに関連するさまざまな相談に応じております。患者家族以外の方からのご相談も受け付けております。
ご相談をご希望の方は病院代表(03-3416-0181)までご連絡ください。
スタッフ紹介
診療部長 |
---|
出口 隆生 |
医療従事者の方へ
小児造血器腫瘍の免疫診断のみならず、初期診断全般、初発・再発例における治療反応性評価についての相談を受け付けています。メール等でお気軽にご相談下さい。