長期フォローアップ科
基本情報
治療技術の進歩によって、小児がんを患った患者さんの70-80%が治るようになりました。多くの小児がん経験者の方は日常生活にもどって、大きな問題なく過ごされます。一方で、病気自体や化学療法・放射線などの治療の影響により、治療が終わったあとにも慢性的な問題を持つ患者さんが少なくないこともわかってきました。
小児がん治療後の長期的な影響のことを「晩期合併症」といいます。子どもの患者さんは成長発達途上なので、幼少期にはわからなくても、成長過程で影響がみえてくることもあります。病気の種類や受けた治療によって、どんな晩期合併症が起こりやすいかがわかっています。長期フォローアップ外来では、小児がんを経験された患者さんが過去に受けた治療内容を把握して、健康管理に役立てられるように、一緒に考えていきます。
診療内容
長期フォローアップ外来
- 毎週火曜日午後に、長期フォローアップ外来を行っています。
- 血液腫瘍、固形腫瘍、脳神経腫瘍、造血細胞移植後の方は、どなたでも受診できます。
- 入院治療が一段落して退院される方には、フォローアップ情報が載っているフォローアップ・ファイルと治療サマリーをお渡しし、長期フォローアップの説明や今後のフォローアップ方針についてご相談をします。退院後しばらくは、もともとの病気の外来治療や経過観察が中心なので、長期フォローアップ外来には、小学校入学前後、小学校3-4年生時、中学校入学前後、高等学校入学前後、18-20歳時を重要なチェックポイントとして受診していただくようにお勧めしています。
- 長期フォローアップ外来を受診していただく方には、問診票を記入していただいて、引き続き看護師による面談とチェック、ならびに医師による診察を行っています。経験者の方の年齢に応じて、保護者の方の同意をいただいた上で、保護者と経験者別々に面談を行うため、通常の外来よりもお時間をいただいています。
- 当センターの長期フォローアップ外来の最大の特徴は、病棟と外来の一貫性です。小児がんセンター病棟勤務の経験と専門知識豊富な看護師が、長期フォローアップ外来も担当し、入院中から長期的な視野をもった対応を心がけています。
晩期合併症の情報リーフレット「治療がおわったあとのこと」のご案内
長期フォローアップ外来では、晩期合併症に関するさまざまな情報リーフレット「治療がおわったあとのこと」を作成し配布しています。
- リーフレット「治療がおわったあとのこと」~男の子のからだ~
- リーフレット「治療がおわったあとのこと」~女の子のからだ~
- リーフレット「治療がおわったあとのこと」~心臓~
- リーフレット「治療がおわったあとのこと」~肺~
- リーフレット「治療がおわったあとのこと」~二次がん~
トランジション・ステップ
小児がん経験者の方は、やがておとなになっていきます。幼小児期に治療を受けた経験者は、病気や治療のことをよく知らないまま過ごされているかもしれません。また将来、治療を受けた病院よりも、学校や会社に近い医療機関の方が受診に便利な場合や、なかには外国で暮らすようになる方もいらっしゃるかもしれません。長期フォローアップ外来では、小児がん長期フォローアップと健康管理について経験者自身の理解を深め、適切に対応できるようになるために、フォローアップ・プログラムをもちいた対応を行っています。
小児がん経験者の体験談
医学の進歩により、今や80%の小児がん患者さんは、治癒が見込めるようになってきました。しかし、小児がん経験者の中には、何らかの長期の合併症に悩んでいる方もいらっしゃることでしょう。この冊子は、様々な課題を抱える小児がん経験者の方々の不安が少しでも解消に繋がることを願って、13名の小児がん経験者の皆さんからのグループインタビューをもとに生まれたものです。小児がんに関わる全ての方に、この冊子を手にとっていただき小児がん経験者の言葉に耳を傾けていただけたらと思います。
専門分野
長期フォローアップ外来担当の医師や看護師をはじめ、内分泌など他専門診療科の医師、歯科医師など、多職種と連携して長期フォローアップに携わっていきます。
長期フォローアップ外来を担当する看護師は、小児専門看護師、がん化学療法認定看護師、「同種造血細胞移植後フォローアップのための看護師研修」受講者など、豊富な経験と専門知識をもっています。
診療実績
わたしたちは、これまでも小児がんの長期フォローアップに取り組んできましたが、2013年に当センターが「小児がん拠点病院」に指定され、同年に「小児がんセンター」を開設したことを契機に、2015年7月に「長期フォローアップ外来」を開設しました。現在、週1回の長期フォローアップ外来のほか、月1回長期フォローアップ外来担当者によるカンファレンスを行っています。
主な活動報告
- 「小児がん経験者のためのトランジション・ステップ」の開発
- 「治療がおわったあとのこと」リーフレット・シリーズの作成
- 小児がん中央機関の小児がん医療従事者育成事業として、「小児がん長期フォローアップ研修」を2016年11月5日〜6日に実施しました。(※プログラムの内容は「医療従事者の方へ」をご覧ください。)
受診方法
- 長期フォローアップ外来は毎週火曜日午後に行っています。
- 当センターでの診療を希望される場合は、おかかりの医師・医療機関からの紹介(診療情報提供)が必要です。医師から当センター医師に直接連絡をしていただくか、医療連携室(電話直通03-5494-5486、平日8:30-17:00)に医師から連絡をしていただくようにお願いします。
スタッフ紹介
長期フォローアップ外来担当医師と看護師を中心に、必要に応じて他専門診療科への紹介や、臨床心理士、ソーシャルワーカーほか患者さんに関わるすべての診療科および職種の方々と連携しています。特に看護師は小児がんセンターの病棟を担当する看護師のなかから、小児専門看護師、がん化学療法認定看護師、「同種造血細胞移植後フォローアップのための看護師研修」受講者など経験と専門知識の豊富な看護師が、長期フォローアップ外来も担当します。
スタッフ紹介
診療部長 | 医長 |
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松本 公一(併) | 清谷 知賀子(併) |
(併)=併任、(非)=非常勤
医療従事者の方へ
長期フォローアップ外来では、小児がん経験者の方の長期的な健康管理に必要な晩期合併症の情報をお伝えしたりご相談をお受けしたりしています。ご意見、ご提案があればぜひお寄せ下さい。
小児がん長期フォローアップ研修
小児がん中央機関の小児がん医療従事者育成事業として、「小児がん長期フォローアップ研修」を2016年11月5日?6日に実施しました。
<対象> 小児がん拠点病院15施設の医師・看護師・多職種
<プログラム>
小児がん長期フォローアップ | 国立成育医療研究センター小児がんセンター 清谷知賀子 |
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内分泌合併症 | 国立成育医療研究センター内分泌代謝科 堀川玲子 |
歯科合併症 | 国立成育医療研究センター歯科 金沢英恵 |
小児がんと認知機能 | 国立成育医療研究センター臨床心理士 佐藤聡美 |
地域医療の立場から | みくりキッズクリニック 弦間友紀 |
移植後フォローアップ外来 | 国立がん研究センター移植科 稲本賢弘 |
病棟から外来へ-成育のとりくみ | 国立成育医療研究センター看護部 柴田映子 |
妊孕性・不妊 | 聖マリアンナ医科大学産婦人科 鈴木直 |
特別支援教育 | 文部科学省初等中等教育局特別支援教育課 萩庭圭子 |
わたしの経験1 | 小児がん経験者(血液腫瘍・造血細胞移植後) |
わたしの経験2 | 小児がん経験者(脳腫瘍) |
演習1「長期フォローアップ計画立案」 | |
演習2「トランジション・ステップ」 |