新生児科
基本情報
新生児科では、NICU、GCUでの新生児集中治療を中心として、全ての院内出生の新生児および病的院外出生児に対して診療を行っています。特に、複数の疾患を併せもつ新生児に対して、関係する各科と協力して、出生前から診療に携わっています。
診療内容・業務内容
周産期・母性診療センターで出生された赤ちゃんは、NICU、GCU、新生児室、産科病棟のいずれかの病棟で診察しています。
各病棟について
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NICU, GCU(4階)
新生児科は生まれたばかりの赤ちゃんを診るところです。予定日よりも早く生まれた赤ちゃんや病気を持って生まれてきた赤ちゃんなどの診療を行っています。赤ちゃんはNICU (neonatal intensive care unit; 新生児集中治療室)やGCU (growing care unit)に入院します。2011年に増床し、NICU 21床、GCU 18床になりました。いつでも両親が会うことができるように、面会時間は24時間365日可能ですが、NICUの中で処置を行っている時にはお待ちいただくことがあります。また、感染対策のため兄弟の面会は制限しています。全国から入院を受けており、病状の落ち着いた赤ちゃんは一般病棟への転棟、自宅近くの病院への転院をお願いしています。ご理解・ご協力をお願いいたします。
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プレネイタルビジット prenatal visit について
お腹の中にいるうちに赤ちゃんの病気が分かっている時や、赤ちゃんが予定日より早く生まれそうな時には、生まれた赤ちゃんがどういう状態なのか、どういう治療が必要なのかなどについて説明しており、プレネイタルビジットと言います。病気や治療のことを分かっていただき、少しでも不安の軽減につながればと考えています。希望される方はスタッフに声を掛けてください。 -
ソーシャルワーカー、臨床心理士について
漠然とした不安や、通院・面会することで生じる育児の心配、退院後のことなどの悩みをご相談ください。社会支援制度の活用法など、問題解決の方法を一緒に考えていきます。
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新生児室(6階)
新生児室は、予定日よりも早く、小さく生まれたり(35週、2000g以上) 、集中治療までは要しないものの経過観察や治療が必要な赤ちゃんが入院します。新生児室では、酸素投与や点滴治療、黄疸の治療、モニター装着などを行います。
黄疸の治療のため、青い光を浴びることがあります。当院では黄疸の治療時もできるだけ赤ちゃんとお母さんが離れ離れにならいように、ビリベットという治療用のベット(ベットの下から青い光が出ています。)を使用しています。 -
産科病棟
周産期・母性診療センターでは、母乳育児を推進しています。そのため、早期母子接触や24時間の母子同室を行っています。
母乳育児支援の方針
帝王切開を含むハイリスクお産については、新生児蘇生講習を修了したスタッフ(医師・助産師・看護師)が立会い、生まれてくる赤ちゃんの不測の事態に備えています。出生後5分程度、元気かどうか観察する必要があるため、お母さんの横に準備したあたたかいベッドで診察します。診察後にお母さんの胸にお返しします(早期母子接触)。
満期産(37週以降のお産)、2500g以上で出生した赤ちゃんは元気ならば、出産直後から母子同室を行います。出産直後はしんどいな、、、と思われるかもしれませんが、「母乳育児」「早期母子接触」「母子同室」で説明しているように、赤ちゃんとお母さんがより良いスタートができるよう、全力で応援します。
なお、6Fと11Fの産科病棟はお母さんと赤ちゃんの生活環境を守るため、面会時間制限があります。
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母乳育児について
母乳は栄養だけではなく免疫の成分等、さまざまなものが含まれており、赤ちゃんにとって最高の食べ物です。母乳を飲むことで、感染症 (気道感染、中耳炎、下痢など)、アレルギー疾患 (アトピー性皮膚炎、喘息など)、糖尿病、白血病などの病気になりにくくなることや、認知能力が発達すること、母子関係の確立に良い影響を及ぼすこと等が分かっています。また、お母さんの子宮収縮を促進させ、ホルモンバランスを整えてくれる等の良い効果もあります。 -
早期母子接触について
カンガルーケアは1979年、南米コロンビア・ボゴタではじまりました。ボゴタでは低出生体重児用の保育器が不足していたため、お母さんや家族に抱っこをしてもらい、赤ちゃんを温めるという処置が行われていました。その結果、低体温・栄養不良・感染による死亡や育児放棄が減少したため、カンガルーケアによる早期母子接触が世界へ広まりました。早期母子接触により、効果的な吸啜と授乳行動の確立が促され、赤ちゃんの体温や血糖値が安定し、母子相互作用が高まることが知られています。また、母乳育児期間が長くなることも知られています。ただし、出産直後の赤ちゃんの呼吸・循環状態は不安定なこともあり、注意が必要です。当院では、最も不安定な時間である生後3時間内に限り、早期母子接触の間、モニターを装着することがあります。 -
母子同室について
当院では元気に生まれてきた赤ちゃんは、出生直後からお母さんと一緒に過ごします。治療等の理由がない限り、赤ちゃんを預かることはありません。出産直後からの同室は不安があるかもしれませんが、母乳育児や母子相互関係のために母子同室が良いことが知られています。入院中から一緒に過ごすことで、赤ちゃんのことを知っていただき、不安なく退院していただきたいと考えています。
新生児期に当院で行っている任意の検査
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聴力検査
赤ちゃんの耳が聞こえているか、調べる検査です。生まれつき耳が聞こえない赤ちゃんは1000人に1-2人ですが、早期に発見して対応することで言語発達を含めた発達予後が改善されます。 -
ポンぺ病スクリーニング検査(8000円)
ポンぺ病は先天性代謝異常症の1つで、当院ではスクリーニング検査が可能です。(「ポンぺ病Q&A」)
その他の情報
地下1階売店「チルドレンズショップ」に母乳育児関連書籍、各疾患ケア書籍等があります。参考にしてください。
- 「働くお母さんの母乳育児」
- 「母乳の出をよくする方法」
- 「母乳のしぼり方」
- 「双子の赤ちゃんの母乳育児」
- 「小さく生まれた赤ちゃんー低出生体重児を母乳で育てるためにー」
- 「ダウン症候群を持った赤ちゃんの母乳育児」「赤ちゃんは水頭症」
- 「心臓病児者の幸せのために 全国心臓病の子どもを守る会」
- 「搾乳ダイアリー」メディカ出版
- 国立成育医療研究センターでは、妊娠中・授乳中に薬を内服しなければならないお母さんの相談を受けています。
転棟・転院について
当院での治療を必要とするすべてのお子さんが入院するためのベッドを確保するために、NICUでの集中治療を脱したお子さんには他の医療機関への転院や当院の一般小児病棟への転棟をしていただいております。 多くのお子さんに必要な医療をご提供するため、皆様のご理解をいただけますようお願いいたします。
診療実績
NICU総入院数
| 2021 | 2021 | 2023 |
---|---|---|---|
432 | 430 | 429 |
早産時・低出生体重児
| 2021 | 2022 | 2023 |
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超低出生体重児(出生体重<1000g) | 28 | 30 | 24 |
極低出生体重児(出生体重 1000-1499g) | 34 | 30 | 30 |
低出生体重児(出生体重1500-2499g) | 166 | 182 | 188 |
早産児(在胎25週以下) | 14 | 10 | 13 |
早産児(在胎26-28週) | 10 | 16 | 15 |
早産児(在胎29-31週) | 28 | 25 | 29 |
早産児(在胎32-36週) | 141 | 158 | 148 |
手術件数
| 2021 | 2022 | 2023 |
---|---|---|---|
心臓外科 | 34 | 28 | 23 |
小児外科 | 35 | 43 | 33 |
眼科 | 6 | 4 | 8 |
脳外科 | 9 | 5 | 6 |
その他 | 7 | 14 | 10 |
受診方法
受診には予約が必要です。予約センターに連絡し、予約してください。予約の変更も予約センターで対応します。初めて受診(初診)する場合は、医療機関(医院、病院)からの紹介状が必要です。
再診の方は、予約センターで予約してください。曜日毎に担当医が決まっているため、担当医の希望があれば、予約時に伝えてください。
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外来診療担当表は、こちらをご覧ください。
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受診方法については、こちらをご覧ください。
発達外来
NICU に入院した赤ちゃんの中には、基礎疾患や治療経過により、退院後、地域での一般的な健診だけでは不十分なことがあります。このような場合、NICU 退院後も関係各科と協力して、外来診療を継続して行い、発達・発育等を総合的にフォローアップを行います。長期にわたり外来診療が必要な場合や在宅医療が必要な場合は、総合診療部でフォローアップを行い、成育医療を実践していきます。
外来日
毎週水曜日13時30分から診療を行っており、完全予約制です。
シナジス外来
RS ウイルスは、乳幼児の呼吸器感染症の重要な原因ウイルスで、細気管支炎や肺炎を起こします。早産児や生まれつき呼吸器や心臓に病気を持っている赤ちゃんが感染すると、重症化することがあります。有効な治療薬がないため予防が大切です。 シナジスは、RS ウイルスに対するモノクローナル抗体で、ウイルスの体内での増殖を防ぎ、重症呼吸器感染症の発症を抑制するための注射薬です。下記の適応がある方に、シナジス外来での接種を勧めています。接種にあたっての注意点や費用のことなどについて、主治医、外来担当医、スタッフなどに相談してください。
外来日
RS ウイルスの流行期間(通常9月~3月頃)の毎週木曜日13時30分から診療を行っており、完全予約制です。
適応
RSウイルス感染流行初期において下記のいずれかに該当する場合、適応になります。
- 在胎期間28 週以下の早産で、12ヵ月齢以下の新生児および乳児
- 在胎期間29 週~ 35 週の早産で、6ヵ月齢以下の新生児および乳児
- 過去6ヵ月以内に気管支肺異形成症(BPD)の治療を受けた24ヵ月齢以下の新生児、乳児および幼児
- 24ヵ月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患(CHD)の新生児、乳児および幼児
- 24ヵ月齢以下の免疫不全を伴う新生児、乳児および幼児
- 24ヵ月齢以下のダウン症候群の新生児、乳児および幼児
注射スケジュール
RS ウイルスの流行期間に、月1回の注射を継続します。
主な副作用
発熱、注射部位の腫れ・痛み、神経過敏症、おなかの調子が悪くなる、発疹、咳や鼻水などの呼吸器症症状、肝機能異常、ショック・アナフィラキシー様症状が出現することがあります。
新生児搬送
重症児の出生が予想される場合は、母体搬送の上、出生直後から早期の治療を行うことができる体制を整える必要があります。しかし、母体搬送が困難な場合や、出生後下記に説明するような児については、NICUに収容すべきだと考えています。ただし、一旦、医療機関から退院した患者は、感染管理の問題等から、原則として当科NICUに入院することはできないため、対応を相談させていただきます。
NICUでの管理が望ましい新生児
- 呼吸障害がある児(40%以上の酸素投与が必要、無呼吸発作の持続、呻吟や陥没呼吸など努力呼吸がみられる、など)
- 心不全症状がある児
- 低出生体重児(出生体重1800g未満、特に1500g未満)
- 早産児(在胎34週以下)
- 重症感染症が疑われる児(肺炎、敗血症、髄膜炎など)
- 新生児仮死
- 痙攣の認められる児
- 黄疸などで交換輸血を要する児
- 出血傾向のみられる児
- 外科的手術が必要な児
- 先天性心疾患が疑われる児
- 重度または多発性の奇形のある児
- 嘔吐や哺乳不良、元気のない (not doing well)、泣きが弱い、易刺激性等、何となくおかしいと思われる児
新生児搬送の方法
新生児の入院依頼は病院代表(03−3416−0181)に連絡し、NICU 当直を呼び出してください。当院が満床等の理由で入院できない場合、東京都周産期ネットワーク参加の他施設について、情報提供・紹介いたします。
また、入院依頼元の医療機関から搬送が困難な場合、当科スタッフが救急車で搬送を行うこともできます。他施設への三角搬送も可能です。
当院への搬送に当たっての紹介用紙はこちら:新生児情報提供書
バックトランスファー
新生児搬送された児の病状が治癒または軽快した場合、入院依頼元の医療機関への転院をお願いすることがあります。限られた病床を有効利用するとともに、家族の負担を軽減する目的もありますので、ご協力をお願いいたします。