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総排泄腔疾患センター

センター長からのあいさつ

総排泄腔とは、泌尿生殖器と消化管へ分化する前の状態です。胎児のうちに総排泄腔から尿道・膣・直腸などにそれぞれ分離していきますが、総排泄腔の状態のまま出生する疾患を総排泄腔疾患といいます。
総排泄腔疾患センターは、総排泄腔疾患について、胎児期から乳幼児期、小児期、思春期、青年期を経て、生殖医療を含めた成人へのトランジション(移行)までをチーム医療として提供することを目的に設立されました。
総排泄腔疾患を患ったお子さんは、下部尿路と生殖器および肛門直腸にトラブルを抱えています。代表的な疾患として、総排泄腔外反症および総排泄腔遺残症があり、これらは難病に指定されています。2014年の全国集計では、総排泄腔外反症は15万~17万人の出生に1人、総排泄腔遺残・症は6万~10万の出生に1人です。年間の発生頻度にすると、総排泄腔外反症は7.1人、総排泄腔遺残症は14.8人となります。総排泄腔疾患は、先天性疾患の中でも難治性であり稀少性の高い疾患と言えます。そのため一人の医師が経験する症例数としては限りがあり、次世代へ繋げる統括的な医療体制の構築が切望されていました。国立成育医療研究センターでは総排泄腔疾患を治療した豊富な症例数があり、これらを生かして次世代へと治療が前進できるよう取り組んでいきます。
当センターでは統括的なチーム編成を組んで治療にあたります。胎児期には胎児診療科で治療を行い、出生後には新生児科・小児外科・泌尿器科などを中心に、整形外科・脳神経外科なども関わります。幼児期から思春期および青年期には、小児外科と泌尿器科を中心に外来で排泄コントロールのケアをします。近年では総排泄腔遺残の患者さんが成人し、妊娠や出産などについての問い合せなどもあることから、女性総合診療センターとカンファレンスを行っています。これらの取り組みを、正式にチーム医療として掲げ、総排泄腔疾患に対する「成育メソッド」を構築してまいります。




総排泄腔疾患センター センター長(泌尿器科 診療部長)

長谷川 雄一

理念と使命

  • 総排泄腔疾患の患者さんに、専門チームとなって、正しい診断と最適な治療、そして成長に沿った適切なフォローアップを行っていきます。
  • 常に最新の知見をアップデートして高度な医療を提供していきます。
  • 総排泄腔疾患について情報発信をしていきます。
  • 総排泄腔疾患の理解と治療の発展のための研究を行い、医療の発展に貢献していきます。


診療内容・業務内容

1.胎児診断

胎児カンファレンスで症例検討されます。羊水過少や巨大膀胱などの場合、胎児診療科により胎児治療が検討されます。出生後に予想される合併症などを考慮し、関わる可能性のある診療科との調整や出生後のスタンバイをします。胎児期から出産までは、胎児診療科の主導で診療されます。

2.出生後の管理

出生後はNICUでの管理が新生児科の主導で行われます。他院で出生後に総排泄腔疾患と判明した場合に、当センターのNICUに緊急搬送されることがあります。その場合には新生児科から関係する可能性のある診療科へ連絡し、各科がスタンバイします。
総排泄腔疾患は消化管や尿路だけではなく、心疾患や中枢神経疾患の合併があるため、まず命を守る検査・治療を行います。消化管や尿路の画像検査は、放射線診断科を中心に行われます。性別の判定が必要な場合は、内分泌・代謝科により精査します。心疾患や中枢神経疾患の治療が優先される場合、循環器科・心臓外科・脳神経外科などが対応します。

3.手術

消化管と尿路については、おもに小児外科と泌尿器科が協力して診療を行います。
典型的な総排泄腔外反症の場合、まず手術により人工肛門を作り、消化管と尿路生殖器を分離します。尿路生殖器は膀胱外反症(膀胱が完全に閉じずに腹部の表面に開いている)の状態になるため、整形外科と泌尿器科で骨盤骨切り術と膀胱閉鎖術を実施します。
典型的な総排泄腔遺残症の場合、程度によって異なりますが、人工肛門や体外に尿を出すため膀胱皮膚瘻(ろう)が造設されます。
総排泄腔疾患は、個体差の大きな疾患群です。消化管や尿路生殖器以外の状況も考慮して手術を検討します。

4.一般病棟での管理

総合診療部の協力を得ながら全身管理され、消化管と尿路については小児外科や泌尿器科が管理します。ストーマ(人工肛門、人工膀胱)などのケアは、皮膚・排泄ケア認定看護師(通称WOCナース)を中心に保護者の方にメンテナンスについて情報提供をしていきます。

5.外来(乳幼児期以降)

退院後は、外来でフォローアップを行い、小児外科、泌尿器科、整形外科、脳神経外科などへの通院が必要になります。フォローアップの間隔は、診療科によって異なりますが、通院の利便性を考慮して複数の診療科をまとめて受診できるように調整していきます。排泄は年齢とともに変化していくのが普通ですが、総排泄腔疾患の場合は年齢や状況に応じて、必要な検査や手術を実施していきます。検査や手術に対する心の準備やお手伝いが必要な場合には、チャイルド・ライフ・スペシャリストがサポートする体制を整えています。総排泄腔疾患は難病指定されていますので、ご家族が受けられる公的サポートなどについて、医療連携・患者支援センターが情報提供させていただきます。

6.思春期前後

生殖器は10歳ぐらいから変化していきます。女児では生理に備えて、腟の状況を確認する必要があります。思春期は一番多感な時期です。自分の疾患について、自分で知ることも大切になってきます。各主治医からの説明ももちろんありますが、当センターでは成人移行支援に関する考え方をもとに、トランジション外来という部門で自立(自律)支援と成人医療機関への移行をサポートしていきます。こころのサポートが必要な場合には、こころの診療科でのフォローを検討します。
今後、患者である本人や家族へは、総排泄腔疾患センターとして公に情報提供する機会や患者さん同士の交流の場を設けさせていただく予定です。

7.生殖医療について

子どもを授かることは、人生の大きなイベントの一つです。女性については、当センターの女性総合診療センターと協力し対応していきます。総排泄腔外反症の男性については、泌尿器科で基本的に対応していきます。

8.総排泄腔疾患の研究について

総排泄腔疾患は難病であり稀少疾患でもあります。総排泄腔疾患センターでは、日本国内における同疾患の疫学的調査などをすすめるとともに、原因究明や再生治療などの研究を当センター研究所と協力して進めて参ります。

診療チーム

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対象疾患

  • 総排泄腔外反症(Cloacal Exstrophy)
  • 総排泄腔遺残症(Cloaca Anomaly)
  • 膀胱外反症(Bladder Exstrophy)
  • 尿生殖洞遺残(UG sinus anomaly)
  • 先天性稀少泌尿生殖器疾患
  • その他の類似疾患

受診方法

総排泄腔疾患センターの診療は、年齢や相談内容によって窓口が異なります。
外来診療の流れからお入りいただき、以下を参考にして初診の予約をお願いします。
  1. 胎児期:胎児診療科へご相談ください。

  2. 出生後(新生児期):新生児科へご相談ください

  3. 乳幼児期以降:泌尿器科または小児外科へご相談ください。

  4. 女性の妊娠・出産など:女性総合診療センターへご相談ください。

医療従事者の方へ

他施設からの相談などは随時受け付けております。ご希望の方は、成育医療研究センターホームページ内の「医療関係者の方へ」からお入りいただき、お問い合わせください。

セカンドオピニオン外来

総排泄腔疾患センターではセカンドオピニオンが可能です。オンラインでの受診も可能です。ご希望の方は「セカンドオピニオンのご案内」からお入りいただき、お問い合わせください。
排尿に関することは泌尿器科、排便に関することは小児外科で受け付けております。その他のことでも、総排泄腔疾患は泌尿器科・小児外科にて対応可能です。

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