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小児気道疾患センター

センター長からのあいさつ

守本センター長

このたび成育医療研究センター内に小児専門の気道疾患センターを設立することになりました。小さなこどもが吸気時に「キューキュー」と苦しそうな音をたてていたり、胸のあたりがペコペコとへこんでいたりすることがあります。小児の気道は大人よりも細く、柔らかく、つぶれやすいため、かぜや感染症などで少し腫れたり痰が増えたりすると、それだけで呼吸困難になってしまうことがあります。安定した呼吸ができるように、気管切開が行われますが、いつ、どのようにしたら気管切開を閉鎖することができるのでしょうか?私たちのところにはこのような相談が全国から寄せられます。

米国の小児病院では、数年前から小児気道疾患センターを掲げ、呼吸障害や嚥下障害(食べ物を上手く飲み込めないこと)について複数の専門家から成るチームで取り組んでおり、一人の患者さんに対していろいろな立場から意見交換を行い、治療方針を確定させ効率よく治療を行っています。日本でもこうした呼吸疾患センターが設立され始めていますが、現在は成人の疾患が対象で、小児を専門として診る呼吸疾患センターはありません。

小児は体格が小さいために、症状も強く、治療も困難になりがちです。また、就園や就学、発声の問題など、お子さんやご家族にもストレスの多い生活だと思います。以前は私たちも、成長を待って「低年齢のうちは手術をしない」という方針でした。しかし、海外では小児のQOLを考えて、乳幼児期から積極的に手術を行い、成果をあげています。当センターには、小児の麻酔科や集中治療科など、術中術後も安心して全身の管理を行える専門家が揃っています。国立成育医療研究センターに新設される小児気道疾患センターは、そういった複数の専門家が自分たちの豊富な経験を基に診療を行い、治療方針を決定しています。私たちは、最終的にお子さんにいつ、どのような治療を受けさせることが、お子さんの生活にとって最善なのかをご判断いただけるようなセンターを目指します。

小児気道疾患センター センター長(耳鼻咽喉科 診療部長)
守本倫子

診療内容・業務内容

カンファレンスの様子の写真

耳鼻咽喉科、呼吸器科を始めとした10の診療科により小児気道疾患を診療するチーム医療の体制を構築し、術前から術後の適切な気道管理に至るまで連携して診療にあたります。経験豊富な医師、看護士、メディカルスタッフで診察し、意見交換を行い、その結果に基づいて経鼻エアウェイ、気管切開、CPAPなどの呼吸器装着にて子どもの呼吸の安全を確保します。その上で必要に応じて可能な時期に外科手術なども検討していきます。当センターに通院されている子どもの気道疾患は希少で、他の施設では少ないものと言えます。どのような治療を行うことになったとしても、かかりつけの医師とこまめに連携をとりながら垣根のない医療を提供していきます。

【小児気道疾患センターとしての活動】
  • 2週に1回の入院患者についてのカンファレンス
  • 医療連携室に相談のあった新規患者についてカンファレンス(適宜)
  • 嚥下評価外来(1回/1~2か月)
チームとしてのカンファレンスを行うことで様々な専門科の立場からの経験を基に患者さんの状態の確認を行うことができるため、最も良い治療方針を提供することができます。またこれ以外に、各科内では定期的なカンファレンスを行い、常に患者さんの状態について共有します。
検査中の様子の写真

外来検査

  • 画像検査:単純X線(正面、側面)、頸部CT
  • 内視鏡検査:声帯の動き(声帯麻痺の有無)や声帯の開き方(開大制限の有無)、のう胞、泣いたり声を出しているときの狭窄部位などを観察します。
  • 睡眠検査:夜間睡眠時の呼吸状態をモニターします。

全身麻酔下検査

  • (薬物下)睡眠内視鏡検査:寝ている状態にて狭窄部位を特定する検査です。事前に気管切開などされていない場合、検査後挿管が必要となる可能性はあります。
  • 全身麻酔下喉頭・気管精査:気管切開されている患者様が対象です。声門下または気管・気管支までの狭窄部位を観察し、どの程度の長さが狭窄しているのか、硬さ、などを実際に鉗子などで触って確認します。今後どのような手術をするべきか検討するためには必須の検査になります。

治療について

<保存的治療>
  • 哺乳指導・経鼻胃管栄養
  • 酸素投与・CPAP
  • 内服薬治療

外科手術

<内視鏡下喉頭手術>
  • レーザーによる喉頭粘膜焼灼術:喉頭軟弱症など粘膜や瘢痕組織の切除
  • バルーンによる喉頭・気管拡張術:声門下の狭窄部位を拡げるために使用します
  • デブリッダーによる切除術:腫瘍やのう胞などを吸引しながら切除します

内視鏡のみでは困難な、広い範囲の病変または喉頭より深い病変に対する手術を行う必要がある場合に行います。
  • 喉頭気管狭窄症手術:声門下~頸部気管にかけて狭窄している部位を切開し、肋軟骨を気管の前側または後ろ側に(両方のこともある)挿入します。術後は軟骨脱落しないようにステントを留置します。
  • 喉頭裂修復手術:軟骨または筋膜を用いて気管と食道の間の裂孔を修復します。
  • 喉頭気管分離手術:気管弁や頸部の筋肉を用いて唾液が気管に入ることを防ぐ手術です。
  • 気管孔上部の狭窄症手術:気管切開孔上部が三角形状につぶれていることでカニューレ抜去困難となっているため、拡大手術を行います。時に肋軟骨を用いることもあります。
  • アデノイド・扁桃摘出:経口腔的に摘出を行います。

気管カニューレ抜去の手順

上気道狭窄症状の確認
  • 誤嚥がない
  • 大きな発声が可能
  • 呼吸器の装着は不要
  • 今後しばらく手術のために麻酔をかけることがない
単純X線または頸部CT
  • 上気道狭窄がないことを確認
カニューレを閉鎖(日中)
  • 2-3時間から開始
  • カニューレ閉塞しなように数時間に一度は吸引
全身麻酔下に内視鏡検査
  • 寝ると狭くなるところがないか確認
  • 気道切開孔上の狭窄、肉芽はこの時形成術を行う
手術室にてカニューレ抜去
  • モニターしながら抜去
  • 2晩様子を見る
  • 苦しそうなら、すぐにカニューレを再挿入
気管切開孔は開いたまま退院

診療チーム

気道疾患チーム医療診療体制

耳鼻咽喉科、呼吸器科を始めとした10の診療科により小児気道疾患を診療するチーム医療の体制を構築しています。術前から術後の適切な気道管理に至るまで連携して診療にあたります。

耳鼻咽喉科
外科治療
咽頭・喉頭・頸部気管狭窄治療
呼吸器科
上気道・下気道疾患の重症度評価
総合診療科・新生児科
体重増加、全身状態の評価
気管切開管理・呼吸器管理
心臓血管外科
外科治療
気管軟化症の改善
外科
外科治療
食道・肺疾患治療
形成外科
外科治療
下顎・咽頭狭窄治療
集中治療科
周術期気道管理
麻酔科
全麻下気道検査
気道手術の麻酔
リハビリテーション科
嚥下・呼吸リハビリテーション
  • 言語聴覚士
  • 理学療法士
  • 作業療法士
再生医療センター
生殖・細胞医療研究部
気管軟骨の再生研究
小児気道疾患センターのメンバーと成育医療研究センターの写真

受診方法

医師が男の子の胸に聴診器をあてて診療している様子の写真
外来は、救急センターを除いてすべて予約制です。小児気道疾患センターの受診を希望される方は、現在のかかりつけ医師から直接、国立成育医療研究センターの医療連携室(TEL:03-5494-5486(月~金 祝祭日を除く、8時30分~16時30分まで))へご連絡をお願いします。

【準備いただきたいもの】
  1. 紹介状(情報提供書)
  2. 画像検査結果(MRI, CTなど)の入ったCD-R 
  3. 今までに行った内視鏡検査結果(できれば動画)

オンラインセカンドオピニオン

オンラインでセカンドオピニオンを受けることも可能です。セカンドオピニオンで事前に治療方針などの説明を聞いてから、受診を選択される方もいらっしゃいます。ご希望の場合は、【オンライン】セカンドオピニオン受診までの流れをご覧ください。

診療実績

医師が画像やイラストで患者さんとご家族に説明している様子の写真

小児の気道は大人よりも細く、柔らかく、つぶれやすいため、かぜや感染などで少し腫れたり痰が増えたりすると、それだけで呼吸困難になってしまうことがあります。特に気道を狭くするような疾患は、呼吸が苦しく命に危険が及ぶことや、哺乳ができず成長発達の妨げになるなどするため、放置することはできません。呼吸障害が強い場合は、気管切開が行われます。気管切開により、安定した呼吸ができるようになりますが、その一方で発声によるコミュニケーションができなくなることは避けなければなりません。私達は子どもにとって最も良い方法をご家族と一緒に考えていきます。

国立成育医療研究センターでの気管切開数のグラフ

研究活動

小児気道狭窄疾患(咽頭狭窄・喉頭狭窄・気管狭窄)の診療ガイドライン作成
(呼吸器系先天異常疾患の診療体制構築とデータベース及び診療ガイドラインに基づいた医療水準向上に関する研究:厚労研究 臼井班)

患者さんへの情報提供

小児気管切開とはどのような手術なのか?どのような生活になるのか?また、助成金などの支援についての情報を提供するサイトです。

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