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妊娠と抗リン脂質抗体症候群

  • 抗リン脂質抗体症候群(APS)とはどのような病気ですか?
    • 抗リン脂質抗体症候群(APS)は血液が固まりやすくなる病気です。体の免疫の仕組みに異常が起こり、「抗リン脂質抗体」という特殊な抗体が血液中にできることで、血の塊(血栓)ができやすくなります。その結果、深部静脈血栓症(足の血管が詰まる)、肺塞栓症(肺の血管が詰まる)、脳梗塞(脳の血管が詰まる)などの血栓症が起こることがあります。また、流産や死産、重症の妊娠高血圧症候群(妊娠中の高血圧やタンパク尿)といった妊娠中の合併症がきっかけでAPSと診断されることもあります。
      APSは、全身性エリテマトーデス(SLE)との関連が深く、SLEの患者さんの約1/3に合併するとされています。なお、SLEなどの膠原病がない場合は、原発性APSと呼ばれます。

  • APSと診断されました。妊娠できますか?
    • APSの方でも適切な治療と管理を行うことで、安全に妊娠・出産できる可能性が高まります。APSがある場合、血栓や妊娠中の合併症のリスクが高くなるため注意が必要です。血液をサラサラにする低用量アスピリンやヘパリン注射を適切に行うことで、妊娠・出産の安全性を高めることができます。

  • APSがあると妊娠中にどんなリスクがありますか?
    • APSの方は、以下のような合併症を起こしやすいことが知られています。

      • 習慣流産(不育症):3回以上連続して流産を繰り返す妊娠10週以降の原因不明の胎児死亡(死産)
      • 重症の妊娠高血圧症候群(妊娠中の高血圧)やけいれん発作(子癇)
      • 胎盤の機能不全による胎児の発育不全(成長が遅れる)

      APSでは、「抗リン脂質抗体」が胎盤の働きを邪魔し、赤ちゃんに必要な酸素や栄養が十分に届かなくなることがあります。その影響で、流産や死産、赤ちゃんの成長が遅れる(胎児発育不全)などの問題が起こることがあります。

      • ワルファリン(ワーファリン®)

      また、血栓症の再発予防のためにワルファリンを内服されている方では、妊娠6〜9週の赤ちゃんに影響を与える可能性があるため、この時期のワルファリンの使用は避ける必要があります。ワルファリン服用中の方が妊娠を希望する場合は、事前に専門医と相談し妊娠がわかったら、ヘパリン注射へ切り替える必要があるため、計画的に妊娠することが大切です。

  • APSと流産・死産の関係について知りたいです。
    • 【初期流産(妊娠10週未満)】
      妊娠初期の流産は珍しくなく、全妊娠の約15%に起こります。そのうち50〜60%は受精卵の異常(染色体の問題)が原因とされており、お母さんの生活習慣が影響するわけではありません。しかし、3回以上続けて流産する場合(習慣流産)は、ほかの原因による可能性があります。原因はさまざまですが、その一つに抗リン脂質抗体が関与していることがあります。

      【妊娠10週以降の原因不明の胎児死亡】
      妊娠12週以降の赤ちゃんが亡くなることを「死産」といいます。日本では全妊娠の0.8%が死産に該当し、初期流産に比べて頻度は低いですが、妊娠10週以降に赤ちゃんが亡くなる原因の一つとして、「抗リン脂質抗体」による胎盤の機能低下が関連している可能性があります。
      そのため、他に明らかな原因のない流産や死産を経験された場合は、APSの検査を受けることが推奨されます。

  • APSの妊娠合併症に対する治療にはどのようなものがありますか?
    • APSの妊娠合併症を防ぐためには、血液をサラサラにする治療が必要です。標準治療として以下の方法があり、70〜80%の方で妊娠の経過が改善すると報告されています。

      【低用量アスピリン(バイアスピリン®など)】
      妊娠前~妊娠中に服用し、流産・妊娠高血圧症候群のリスクを軽減します。

      【ヘパリン注射(ヘパリンカルシウム®など)】
      胎盤を通過しないため、赤ちゃんへの影響が少なく、妊娠中にも安全に使用できます。

まとめ

APSと診断されても、適切な治療と管理を行うことで、安全な妊娠・出産が可能です。また習慣流産や死産、妊娠高血圧症候群を経験された方は、一度APSの検査を受けることをおすすめします。妊娠や治療について不安がある方は、お悩みにならず早めにご相談ください。



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