小児の腎不全・透析
腎不全・透析とは
腎臓の機能が悪くなると、体の中の水分や老廃物がどんどん溜まっていき、いろいろな問題を惹き起こします。ある程度までは食生活の改善や薬などで治療できますが、それでも追い付かなくなってくると、人工的に血液中の余分な水分や老廃物を取り除く治療が必要になります。これを透析といいます。
透析には血液透析と腹膜透析があります。大人の末期腎不全の透析患者では95%が血液透析であるに対し、小児では85~95%、乳幼児ではほぼ全例が腹膜透析を選択しています。特に、体重30kg以下は腹膜透析が望ましいとされています。小児で特に腹膜透析が選択される理由は次に述べますが、その最大の理由は小児は体重あたりの水分・食事摂取量が多く、一般的に1~2日おきに週3回行う血液透析では透析間の体重増加、老廃物の貯留などが著しくなるためです。腹膜透析の中でも、小児では75%が機械を使用した腹膜透析(APD:Automated Peritoneal Dialysis)を行っています。
小児の透析では大人と異なり、成長・発達過程にあることに配慮が必要です。成長・発達をしていくには、十分な栄養摂取が必要になります。血液透析や腹膜透析では正常の腎臓の1/10程度の機能しかないため、水分制限や食事制限が必要になってきます。また、血液透析では週3~4回、1回4時間以上病院に拘束されるため、学校生活が送りにくくなります。腹膜透析では、日中は自由に活動できることが多く、制限は比較的緩やかですが、在宅で毎日透析が必要です。このような環境は成長・発達の妨げとなり、精神的な面においても影響が出てきます。
一方、腎移植では拒絶反応を起こさないために免疫抑制薬を生涯飲み続けなければいけませんが、水分制限や食事制限はほとんどなくなり、透析による拘束時間もなく、成長・発達への影響を最小限に抑えることができます。
このため、小児が末期腎不全に陥った場合はできるだけ早い時期に腎移植を受け、透析から解放させてあげることにより体の面からも心の面からもなるべく健常児に近づけるようにさせてあげることが望ましいと考えられています。最近では腎機能が低下した小児に対して透析を行う前に腎移植を行うことも多くなっています。
血液透析
透析というと、みなさんが想像されるのは血液透析だと思います。糖尿病などで腎臓の悪くなってしまった大人の患者が行っているのはこの方法が多いと思います。これは腕に手術で太い血管(シャント)を作成し、そこから血液を透析器に送って循環させ、余分な水分や老廃物を取り除いてから再び体に戻す方法です。
シャントを作成できない小さな体で血液透析が必要な場合は、首の血管を通じて心臓の近くの太い静脈にカテーテルを留置し、そこから血液を引き出して透析を行います。カテーテルを用いた血液透析の場合には、カテーテルの慎重な管理が必要であり、入院で透析を行わなければなりません。
血液透析は、大人では一般的に行われている方法ですが、いくつかの理由で小児では行いにくい治療です。まず、透析中に暴れてしまうと、透析回路が外れて大量に出血してしまう危険や透析が安定して行えなくなることがあるため、安静を保つ必要があります。また、週3~4回1回4時間以上病院に拘束されるため、学校生活が送りにくくなります。24時間休みなく働いている腎臓の機能を限られた時間で代用するため、血液量や体液の組成が急激に変化し、体への負担がかかります。特に、体重の小さな小児では透析中に血圧が下がってしまうなどの合併症が出やすく、注意が必要です。血液透析をしていない間は水分や老廃物が蓄積してしまうため、水分・食事の厳しい制限が必要です。成長期にある小児での血液透析では、食事制限が成長・発達のさまたげになってしまうことも大きな問題となります。また、シャントの血管が狭くなったり、閉塞したりするという問題も起きます。
基本的に病院で行う治療であるため、家族の負担はやや小さくなりますが、以上の理由から小児では行いにくい治療です。
腹膜透析
小さな子どもでも可能な透析が腹膜透析です。私たちのおなかは腹膜という薄い膜で覆われています。腹膜にはたくさんの細い血管が走っています。腹腔内(腹膜と内臓の間の空間)に透析液を注入し、1~6時間貯留すると、時間の経過と共に、腹膜を介して体の余分な水分や老廃物が血液中より透析液中へ移ります。透析液を入れて、貯留しては出すという操作を繰り返すことにより、余分な水分や老廃物を体の外に出すことができ、腎臓の機能を補うことができます。
小児では寝ている間にサイクラーという自動腹膜透析機を使って排液と注入を自動的に行なうAPD(Automated Peritoneal Dialysis)が一般的に行われています。これにより、日中の自由な時間が増え、登園や登校が可能となります。
血液透析ではシャントの作成が必要であり、小さな子どもでのシャントの作成は不可能です。これに対して、腹膜透析ではおなかにカテーテルを入れるだけですので、赤ちゃんでも可能な治療です。腹膜透析は毎日行う治療なので、血液透析に比べ体への負担が少なくてすみます。毎日透析を行うため食事制限も少なく、子どもにとって重要な成長・発達を促すことができます。病院への通院回数が少なくて済み、学校生活が送りやすく、成長・発達の障害をきたしにくい点で小児では血液透析よりも適しています。
欠点としては、腹膜炎を起こす危険性があること、家庭で行ってもらう治療であるため、家族への負担がかかることです。病院に来る回数が少ない分、血圧や体重管理、合併症などを本人や家族によく理解してもらう必要があります。
また、腹膜透析は一生継続できる治療ではありません。5年くらい経過すると被嚢性腹膜硬化症といって腹膜が硬くなり、腸閉塞を起こす危険性が徐々に高くなっていきます。このため、いずれは血液透析や腎移植に移行する必要があります。
腎移植
新しく腎臓を移植することで腎臓の行う機能の全てを置き換えることができる根治的治療法です。移植には家族の腎臓を移植する生体腎移植と亡くなられた方の腎臓を移植する献腎移植があります。我が国では献腎移植を受けられる機会は非常に少なく、移植の大半は生体腎移植であるのが現状です。
ただし、拒絶反応を抑えるために免疫抑制薬を一生飲み続けなければいけません。このため、免疫抑制薬による感染などの重篤な合併症に注意する必要があります。また、移植が成功しいったん腎機能が回復しても、年数がたつにつれて徐々に腎機能が低下して再び腎不全や透析に戻る可能性もあります。
腎不全・透析の治療と国立成育医療研究センターの方針
小児の腎不全に対する治療は血液透析・腹膜透析・腎移植の3本柱からなり、それぞれ利点・欠点があります。当センターでは小児の血液透析・腹膜透析管理の経験が豊富にあり、腎臓以外の病気をお持ちのかたであっても、各専門診療部と協力しながら、腎代替療法を行うことができます。透析療法に習熟した看護師や臨床検査技師とチームを組んで、乳児から成人期に至るまで、それぞれの子どもや家族にとって一番よいと思われる治療を相談し、選択していきます。
国立成育医療研究センターの診療体制
腎臓・リウマチ・膠原病科の医師が中心となり診療を担当します。小児腎不全管理に関して随一の経験があるスタッフがそろっています。また、小児病院の特色を活かし、各専門診療部と協力し、腎臓のみならず子どもの将来を考えたトータルな医療を提供します。
腎移植は泌尿器科・移植外科・移植コーディネーター・心理士とチームを作り、移植の準備から移植後の治療までの計画を立てていきます。周術期は全身管理に習熟した麻酔科・集中治療科と協力して治療を行います。
診療実績
受診方法
※過去10日以内に発熱(37.5℃以上)している場合には、まずは救急センターへお越しください。
外来は、救急センターを除いてすべて予約制ですので、当院で受診される方は『事前予約』が必要です。
国立成育医療研究センターでは、事前予約制を導入しております。当院での受診を希望の方は他院からの診療情報提供書(紹介状)をお手元にご用意の上、予約センター(電話 03-5494-7300)で予約をお取りになってからご来院ください(予約取得時に、紹介状の確認をしております)。紹介状をお持ちでない場合、別途選定療養費がかかります。詳しくは、予約センターにお問い合わせください。
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