ムコ多糖症
ムコ多糖症とは
ムコ多糖症は、細胞内でのムコ多糖の分解に必要な酵素が生まれつき足りないために、全身の細胞にムコ多糖が蓄積する先天代謝異常症です。ムコ多糖症は7型に分類されており、それぞれの型の症状は異なります。また同じ型でも患者さんによって症状はさまざまです。よく見られる症状は、発達の遅れ、低身長、骨変形、特異な顔つき、固い関節、お腹の膨れ(肝脾腫)、臍・鼠径ヘルニア、心弁膜症(心雑音)、中耳炎、難聴などです。これらの症状は赤ちゃんの頃は目立たず、3-5歳頃になるとはっきりしてきます。重症の患者さんは、徐々に症状が進行していき10歳代になると、歩けなくなる、自分で食事ができなくなる、自発呼吸が困難になる、寝たきりになるなどの状態になります。また軽症の患者さんは、軽度の低身長や心雑音のみで大人になるまで診断されないこともあります。ムコ多糖症の分類と症状 (5つの型のみ提示)
| 精神運動 発達遅滞 |
角膜混濁 | 骨変形 | 関節症状 | 特異顔貌 | 肝脾腫 | その他の合併症 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
ムコ多糖症Ⅰ型 (ハーラー症候群) |
(-)~(⧻) | (⧻) | (+)~(⧻) | (⧺) | (+)~(⧻) | (⧻) | 慢性中耳炎、臍・鼠径ヘルニア、睡眠時無呼吸、心弁膜症、脳室拡大 |
ムコ多糖症Ⅱ型 (ハンター症候群) |
(-)~(⧻) | (-) | (+)~(⧺) | (⧺) | (+)~(⧻) | (⧻) | 慢性中耳炎、臍・鼠径ヘルニア、睡眠時無呼吸、心弁膜症、脳室拡大 |
ムコ多糖症Ⅲ型 (サンフィリッポ症候群) |
(⧻) | (-) | (-)~(+) | (-)~(+) | (-)~(+) | (+) | 痙攣発作、睡眠障害 |
ムコ多糖症Ⅳ型 (モルキオ症候群) |
(-) | (⧺) | (⧻) | (⧻) | (-)~(+) | (+) | 難聴、睡眠時無呼吸 |
ムコ多糖症Ⅵ型 (マロトーラミー症候群) |
(-) | (⧻) | (⧺) | (⧺) | (+)~(⧻) | (⧻) | 慢性中耳炎、臍・鼠径ヘルニア、睡眠時無呼吸、心弁膜症 |
(-):症状がない (⧻):症状が重い
ムコ多糖症の治療と国立成育医療研究センターの方針
ムコ多糖症を診断する検査には、尿のムコ多糖量測定、酵素活性測定、遺伝子検査などがあります。一般の血液検査では診断できません。当センターでは、ムコ多糖症が疑わしい患者さんには、特徴的な症状の有無を確認して、診断のための各種検査を行います。
ムコ多糖症の治療方針は、まず各診療科と協力して、ムコ多糖症の合併症の検査を行い、すでに見られる症状に対しては薬の内服、処置、手術などによる治療を行います。またムコ多糖症I型、II型、IV型、VI型に対しては酵素補充療法という治療法があります。これは酵素製剤を点滴注射により毎週投与することで不足している酵素を補充する治療法です。この治療法により、呼吸状態の改善、お腹の膨れ(肝脾腫)の正常化、固い皮膚・関節症状の改善などに効果があります。しかし、この治療法は骨の変形や脳への治療効果は芳しくないため、将来的には脳室内に直接、酵素製剤を補充する方法が考えられています。酵素補充療法は、比較的安全ですが、ときどき発熱、蕁麻疹、喘鳴などのアレルギー反応が見られることがあります。アレルギー反応には、酵素製剤の投与速度、抗アレルギー薬剤の投与などで対応します。また病気の型、年齢、重症度などの条件によっては骨髄移植が有効なこともあります。
ムコ多糖症は遺伝病です。患者さんのきょうだいや家系内におけるムコ多糖症患者の可能性や次のお子さんのご心配などに対して、ムコ多糖症の遺伝について詳しい情報を提供します。
国立成育医療研究センターの診療体制
ムコ多糖症は症状がさまざまな領域にわたるので以下の各診療科と連携して、合併症に対する検査や治療を行います。
診療実績
受診方法
※過去10日以内に発熱(37.5℃以上)している場合には、まずは救急センターへお越しください。
外来は、救急センターを除いてすべて予約制ですので、当院で受診される方は『事前予約』が必要です。
国立成育医療研究センターでは、事前予約制を導入しております。当院での受診を希望の方は他院からの診療情報提供書(紹介状)をお手元にご用意の上、予約センター(電話 03-5494-7300)で予約をお取りになってからご来院ください(予約取得時に、紹介状の確認をしております)。紹介状をお持ちでない場合、別途選定療養費がかかります。詳しくは、予約センターにお問い合わせください。
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