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RSウイルス感染症

RSウイルスとは

RSウイルスは正式にはRespiratory Syncytial(レスピラトリ―・シンシチアル)ウイルスといい、その頭文字をとってRS(アールエス)ウイルスと呼ばれます。小児にとってとても一般的なウイルスで、1歳までに約50%、2歳までにほぼ100%の子ども達がこのウイルスに感染します。世界ではRSウイルスに関連した気道感染症が年間3300万件、入院が360万件、死亡が10万件おこっていると推定されています。日本でも、毎年12~14万人の2歳未満の子ども達がRSウイルス感染症と診断され、約3万人が入院を必要としています。RSウイルスは、生後間もない赤ちゃんが感染すると重症化する場合が多く、新生児にとってはとても怖い感染症の1つです。

RSウイルス感染症の感染経路

RSウイルスは「接触感染」と「飛沫感染」という感染経路で感染します。特に兄姉のいる赤ちゃんは、上のお子さんが保育園や幼稚園でもらってきてしまったRSウイルスに感染してしまう場合があるので、風邪気味のご兄姉がいる場合は、赤ちゃんから距離をおくことが大切です。

接触感染

ウイルスが付着した手で、目・口・鼻などの粘膜を触ることで広がります。ウイルスは感染者が触ったドアノブや、手すり、おもちゃなどさまざまなところにいます。

飛沫感染

咳やくしゃみ、会話で空気中に飛び散ったウイルスを吸い込んだり、目や鼻などの粘膜に付着することで感染が広がります。会話では、飛沫は1~2m程度飛ぶとされています。

RSウイルス感染症の潜伏期間と症状

感染すると2~8日間(多くの場合4~6日間)の潜伏期間を経て「発熱」「鼻汁」「咳」など軽い風邪のような症状が出現します。通常は数日から1週間くらいかけて徐々によくなりますが、重症化することがあります。

重症化した場合の症状

  • 咳が悪化する
  • ぜーぜーや息苦しさがでる
  • 食事や水分摂取ができなくなる

(このような場合は、細気管支炎や肺炎といった病態に進展している可能性があります)。

重症化しやすいお子さん

  • 生後6か月未満の赤ちゃん
  • 早産・低出生体重の赤ちゃん
  • 先天性心疾患のあるお子さん
  • 慢性肺疾患のあるお子さん
  • ダウン症のお子さん
  • 免疫不全症のお子さん

RSウイルス感染症の治療

現時点ではRSウイルスに対して効果のある治療薬はなく、対症療法を行います。

  • 発熱に対して解熱剤の使用
  • 息苦しさに対する酸素投与
  • 水分摂取不足に対する点滴

    RSウイルス感染症の予防

    普段の生活における予防

    RSウイルスは「接触感染」と「飛沫感染」という感染経路で感染が広がっていくことが知られています。RSウイルスはテーブルや手すりのような環境表面では数時間生存することができるので、触れた手指で、目・鼻・口を触ることによって伝播することもあります。そのため、下記の対策が予防につながります。

    • 子ども本人、および周囲の人がしっかりと手洗いをすること(アルコールの速乾性手指消毒剤も有効です)
    • マスクの着用(咳、鼻水などの症状がある人。マスクができる年齢の子どもも含みます)
    • 子どもたちが使用するおもちゃや、触れた場所などの消毒
    • 人混みを避ける

    ワクチンによる予防

    妊婦さんが接種するRSウイルスのワクチンです。これは妊娠24~36週(28週~36週に接種するとより高い効果が得られる可能性が示唆されています)の妊婦さんに1回、筋肉内接種するワクチンになります。組み換えタンパクワクチンという、ウイルスの成分の一部のタンパク質を用いたワクチンです(生きたウイルスは含まれていません)。
    妊婦さんがこのワクチンを接種すると、RSウイルスに感染したり、重症化することを防ぐ「抗体」という物質が体内で増え、それが胎盤を通してお腹の中の赤ちゃんに移行することで、生まれた後の赤ちゃんをRSウイルスから守ってくれます。
    赤ちゃんは、ワクチンに限らず胎盤やへその緒を通して、さまざまな抗体をお母さんから受け取っています(母子免疫)。妊婦さんへのRSウイルスワクチンは、この仕組みを利用しています。
    ワクチン接種は、入院を要するような重症なRSウイルス感染症を生後90日の時点で約80%、生後180日の時点で約70%防ぐ効果があることが報告されています。
    副作用についても詳細に調べられていて、妊婦さんの接種した部位の痛みや腫れがでることはありますが、赤ちゃんや妊婦さんへの重篤な安全性の懸念は報告されていません。

    お薬(モノクローナル抗体)による予防

    RSウイルスに対する抗体(モノクローナル抗体)を赤ちゃんに投与して、感染や重症化を予防します。今のところ、薬による予防法は対象が限られていて、RSウイルスにかかると入院が必要になるような病気をもっているお子さん[S1] のみとなっています(表1)。薬は2種類あり、それぞれで接種回数や、接種できる適応が異なっています。

    テキストテキスト パリビズマブ ニルセビマブ
    接種方法 筋肉内接種 筋肉内接種
    接種回数 RSウイルス流行期に月1回 RS流行期に1回
    接種対象
    • 在胎期間28週以下の早産で、12ヵ月齢以下の新生児および乳児
    • 在胎期間29週~35週の早産で、6ヵ月齢以下の新生児および乳児
    • 過去6ヵ月以内に気管支肺異形成症(BPD)の治療を受けた24ヵ月齢以下の新生児、乳児および幼児
    • 24ヵ月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患(CHD)の新生児、乳児および幼児
    • 24ヵ月齢以下の免疫不全を伴う新生児、乳児および幼児
    • 24ヵ月齢以下のダウン症候群の新生児、乳児および幼児

    ※下記については2024年6月時点ではパリビズマブのみの適応。

    • 24ヵ月齢以下の肺低形成を伴う新生児、乳児および幼児
    • 24ヵ月齢以下の気道狭窄を伴う新生児、乳児および幼児
    • 24ヵ月齢以下の先天性食道閉鎖症の新生児、乳児および幼児
    • 24ヵ月齢以下の先天代謝異常症の新生児、乳児および幼児
    • 24ヵ月齢以下の神経筋疾患の新生児、乳児および幼児

    国立成育医療研究センターでは、RSウイルス感染症の予防に取り組んでいます。予防法の詳細については担当医にご確認ください。

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