溶連菌(A群レンサ球菌)感染症
溶連菌感染症とは
A群レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)という菌が原因の感染症です。最も頻度が高いのは、のどの痛みや発熱などの症状がでる咽頭炎です。それ以外にも皮膚の感染症(とびひや蜂窩織炎)、丹毒、しょう紅熱、扁桃周囲膿瘍や咽後膿瘍などの首の深いところの感染症など、さまざまな感染症を引き起こします。また、咽頭炎などの後に稀に起こる糸球体腎炎やリウマチ熱といった合併症にも注意が必要です。今回は頻度の高い咽頭炎について主に記載します。
溶連菌感染症の感染経路と潜伏期間
溶連菌(A群レンサ球菌)感染症は主に「飛沫感染」で感染しますが、感染している方の飛沫や傷の浸出液などを触ることでも感染します。咽頭炎の場合、潜伏期間(感染してから症状が出るまでの期間)は通常2-5日間です。
飛沫感染
咳やくしゃみ、会話で空気中に飛び散ったウイルスを吸い込んだり、目や鼻などの粘膜に付着することで感染が広がります。会話では、飛沫は1~2m程度飛ぶとされています。
溶連菌感染症の症状
発熱やのどの痛みが主な症状です。それ以外に吐き気や腹痛などお腹の症状が出ることもあります。また首のリンパ節が腫れることもあります。一方で鼻水や咳などの症状がでることは少なく、そこが普通の風邪と見分けるポイントになります。
溶連菌感染症の診断
周囲の流行や症状から疑うことになりますので、病院を受診した際は、周りに溶連菌(A群レンサ球菌)感染症の方や、それを疑う症状の方がいたかを担当の医師に伝えて下さい。診断のための主な検査としては抗原検査と培養検査があります。最も一般的に使用されているのは抗原検査で、短時間で結果がでる簡便な検査です。症状からはA群レンサ球菌咽頭炎が疑われるのに迅速抗原検査が陰性などの場合では、培養検査をすることもあります。
溶連菌感染症の治療
A群レンサ球菌はペニリシン系抗菌薬という種類の抗菌薬が良く効きます。(ペニシリン系が効かない(=耐性)のものは今のところ確認されていません)。実際の治療ではアモキシシリンというペニシリン系抗菌薬を使用することが多いです。ペニシリンに対するアレルギーがある場合などは別の抗菌薬を使用することもあるので、担当の医師とご相談下さい。有効な抗菌薬の投与が始まり、24時間程度たつと他人にはうつさなくなるため、抗菌薬内服開始後24時間が経過し、全身状態が良ければ登園や登校が可能となります。治療を考える上で重要なのが抗菌薬を内服する期間です。最初にも書きましたが、咽頭炎の後しばらくしてからリウマチ熱という、心臓を含む全身の炎症が起こることが稀にあり、それを予防するために10日間しっかりとアモキシシリンを飲み切ることが大事です。症状が良くなったからといって自己判断で抗菌薬を途中でやめないように注意しましょう。
溶連菌感染症の予防
溶連菌(A群レンサ球菌)感染症には予防のためのワクチンはありません。日常生活における予防のための注意点としては、人混みを避けることや、マスクができる年齢のお子さんやご家族は人混みではマスクをしていただくなどが予防につながる可能性があります。