尿素サイクル異常症
尿素サイクル異常症とは
尿素サイクル異常症とは、肝細胞の中で、アンモニアを分解し、尿素を合成する経路(尿素サイクルといいます)の中で、分解する酵素が生まれつき存在しないために、高アンモニア血症を来す一群の病気を指します。
赤の四角内に記載した酵素の欠損によりアンモニアの代謝障害を来たし、高アンモニア血症をきたします。
(疾患名は下の表をご覧ください)
疾患名 | 欠損酵素 |
---|---|
アルバミルリン酸合成酵素1(CPS1)欠損症 | CPS1 |
オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症 | OTC |
シトルリン血症Ⅰ型 | アルギニノコハク酸合成酵素 |
シトルリン血症Ⅱ型(シトリン欠損症) | シトリン |
アルギニノコハク酸尿症 | アルギニノコハク酸分解酵素 |
アルギニン血症 | アルキナーゼ |
Nアセチルグルタミン酸合成酵素(NAGS)欠損症 | NAGS |
先天性代謝異常症に対する肝移植のガイドラインは、移植学会ホームページで閲覧可能です。
尿素サイクル異常症の治療と国立成育医療研究センターの方針
肝移植
上記の全ての疾患は肝移植の適応となりえます。特に新生児期に重篤な高アンモニア血症を来すCPS1欠損症や男児のOTC欠損症においては、肝内の酵素活性が著しく低いため、肝移植の絶対的適応と考えられています。その他、遅発型OTC欠損症など、比較的症状の軽い尿素サイクル異常症では、以下に示す「肝移植適応のためのスコアリング」が移植適応の判断に有用です。
肝細胞移植
新生児期発症の尿素サイクル異常症において、肝移植は絶対的な適応となりますが、安全に肝移植施行可能となる体重(約6㎏)となる間に高アンモニア血症が起こり、不可逆的な神経障害を来す可能性があります。
その肝移植までの間の橋渡し(Bridge to transplantation)として、肝細胞移植を施行しています。移植する肝細胞は、生体肝移植ドナー手術で、体の小さいレシピエントに移植する際、肝臓の一部を削り小さくしますが、その削った肝臓を肝細胞に分離し、肝細胞移植をおこなっています。このように、生体肝移植ドナーからの肝細胞を用いた肝細胞移植は世界初の報告です。
肝移植適応のためのスコアリング
項目 | スコア | ||
---|---|---|---|
疾患特異性 | |||
代謝異常が肝臓に限局しているか? | ○ | ||
移植治療の実績があるか? | ○ | ||
内科治療の有効性 | |||
頻回の入院を必要とする代謝不全(年6回以上) | ○ | ||
入院を必要とする代謝不全(年3~5回) | ○ | ||
外来治療を必要とする代謝不全(年間6回以上) | ○ | ||
代謝不全による血液洗浄化療法・ICU入院(初回発作時を除く、年間2回以上) | ○ | ||
服薬・食事療法コンプライアンス・アクセプタンス著しく不良 | ○ | ||
服薬・食事療法コンプライアンス・アクセプタンス不良 | ○ | ||
QOL | |||
経管栄養・頻回の栄養(改善が見込める場合) | ○ | ||
神経学的改善・悪化の防止 | ○ | ||
現在の状況 | |||
神経学的状況(発達):日常活動がある程度できる | ○ | ||
身体的状況(成長)成長障害(身長<-2.5SD) | ○ |
||
生化学的所見:異常値の持続* | ○ |
*高アンモニア血症、高乳酸血症、アシドーシス、肝機能異常、
スコア10<=適応、7<=適応を要する、5<=適応は慎重に考える、 3>非適応
国立成育医療研究センターの診療体制
臓器移植センターの医師とコーディネーターが中心となり診療にあたっています。代謝性疾患の術前・術後管理は内分泌・代謝科と協力し、管理を行っています。尿素サイクル異常症では、神経発達の評価が不可欠ですので、神経内科の医師が評価を行います。
また、肝細胞移植は、研究所の医師が肝細胞の管理(分離・凍結・解凍)を行い、研究所と病院でタッグを組んで治療をおこなっています。
診療実績
受診方法
※過去10日以内に発熱(37.5℃以上)している場合には、まずは救急センターへお越しください。
外来は、救急センターを除いてすべて予約制ですので、当院で受診される方は『事前予約』が必要です。
国立成育医療研究センターでは、事前予約制を導入しております。当院での受診を希望の方は他院からの診療情報提供書(紹介状)をお手元にご用意の上、予約センター(電話 03-5494-7300)で予約をお取りになってからご来院ください(予約取得時に、紹介状の確認をしております)。紹介状をお持ちでない場合、別途選定療養費がかかります。詳しくは、予約センターにお問い合わせください。
なお、現在他の病院で治療を受けている場合や緊急で受診が必要なときは、現在かかっている医療機関の医師から直接、医療連携室(TEL:03-5494-5486 (月~金 祝祭日を除く 8時30分から16時30分))へご連絡をお願い致します。
※救急センターは24時間365日診療をおこなっています。診療をご希望の方は、直接救急センターへお越しください。
予約センター(代表)
03-5494-7300月~金曜日(祝祭日を除く)9時〜17時
セカンドオピニオンについて
国立成育医療研究センターでは、セカンドオピニオンを求める患者さんやご家族に対して、当院の医師から参考となる情報や意見を提供するセカンドオピニオン外来を設置しています。また、いくつかの診療科ではオンラインによるセカンドオピニオン診療も実施しています。