有機酸代謝異常症
有機酸代謝異常症とは
有機酸代謝異常症は、アミノ酸の代謝に必要な酵素が生まれつきうまく働かないために、有機酸と呼ばれる物質が体にたまり、さまざまな障害を引き起こす病気です。代表的なものにメチルマロン酸血症やプロピオン酸血症があります。患児の多くは新生児や乳児の頃に代謝の発作を生じ(代謝性アシドーシス、高アンモニア血症)、嘔吐や意識障害、けいれんなどで発症します。このような発作は、全身、特に脳に非常に有害で、後遺症が残ったり、ときに致命的となることがあります。
有機酸代謝異常症の治療と国立成育医療研究センターの方針
現時点で完治できる治療法はなく、食事療法などで有機酸の産生を抑え、発作や合併症の進行を抑制します。
内科的な治療
特殊ミルクなどを利用してタンパク質の摂取を制限し、有機酸の産生を抑制します。また、薬を内服して、有機酸の産生を抑制したり、排泄を促したりします。このような内科的な治療を行っていても、発作を繰り返したり、頻回の経管栄養や入院により生活の質が著しく低下していたりする場合も多く存在します。
移植による治療
有機酸の代謝が行われる臓器は、体の中で肝臓が最も大きな割合を占めています。肝臓を移植することで、有機酸の産生が減少し、重篤な発作や脳障害などの合併症の進行を防ぐことができます。また、食事制限の緩和による成長障害の改善や入院頻度減少による生活の質の改善なども期待できます。一方、肝移植という非常に大きな手術を乗り越えなければならないリスクや、移植後の拒絶反応や免疫抑制剤内服のリスクが伴います。
肝移植のほかに、腎臓の障害を伴ったメチルマロン酸血症の場合は、腎臓だけの移植や、肝臓と腎臓を移植する肝腎移植が有効であったと報告されています。
国立成育医療研究センターでは、(1)代謝性発作を繰り返す場合、(2)生活の質の低下が著しい場合、(3)成長障害が進行する場合、(4)神経学的障害が進行する場合などに肝移植を行っています。また、プロピオン酸血症では重篤な心臓の合併症を生じることがあり、この場合も肝移植を検討します。
国立成育医療研究センターではこれまでメチルマロン酸血症13例とプロピオン酸血症3例に対して肝移植を行っており、根治的な治療でないにもかかわらず、ほかの疾患の肝移植に劣らない良好な治療成績を得ています。また、肝移植をうけた患児の多くで、発作による入院頻度が減少し、さらには経口摂取量が増加し、経管栄養を中止することができています。移植後は定期的に発達評価を行っていますが、発達障害の明らかな進行も認めておりません。
国立成育医療研究センターの診療体制
有機酸代謝異常症の症状は個人差が非常に大きく、合併症の臓器は多岐にわたり、治療が非常に難しい疾患です。国立成育医療研究センターでは有機酸代謝異常症の経験が豊富な内分泌・代謝科の医師が中心となり、移植外科、手術・集中治療部、腎臓・リウマチ・膠原病科など小児の各分野における専門家が連携して治療を行います。また、移植後は年に一度検査入院をして、発達評価や病状評価を行っています。
診療実績
受診方法
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国立成育医療研究センターでは、セカンドオピニオンを求める患者さんやご家族に対して、当院の医師から参考となる情報や意見を提供するセカンドオピニオン外来を設置しています。また、いくつかの診療科ではオンラインによるセカンドオピニオン診療も実施しています。