小児脳腫瘍(脳神経腫瘍)│小児がん
小児脳腫瘍(脳神経腫瘍)とは
がんはこどもの病死原因の第1位ですが、その中でも脳腫瘍は、最も死亡するこどもの数が多い腫瘍です。血液細胞由来の白血病に次いで、2番目に多く小児がんが見つかるのが、中枢神経系と呼ばれる脳や脊髄です。
子どもの脳や脊髄に発生する腫瘍は、命を脅かす重大な症状を伴うことが多く、ほとんどの腫瘍で、高度な治療が必要です。そのため、腫瘍の悪性度には関係なく、広い意味での「小児がん」と考えられます。
日本全国で脳腫瘍と診断される子どもの数は、およそ年間500-750人程度と考えられています。子どもの脳腫瘍にはとても多くの種類があり、治療法も予後も大きく異なります。それぞれのタイプは、とても稀な病気で、日本全国で年間に100人未満しか診断されない腫瘍ばかりです。したがって、その診療にはあらゆるタイプの脳腫瘍について詳しい、経験豊富な医療チームが不可欠です。
我々は、脳腫瘍と闘う子どもたちに、最良の医療を安心して受けてもらえるよう提供できるよう、日々の診療に取り組んでいます。
小児脳腫瘍(脳神経腫瘍)の治療方針
脳腫瘍診療
国立成育医療研究センターの脳腫瘍チームは、脳や脊髄に腫瘍が見つかったすべての子どもたちと家族に、世界標準かつ優しく温かい医療を提供します。小児がんセンターの腫瘍医が中心となり、脳神経外科、放射線治療科、放射線診断科、病理診断部などの専門医と、看護部、薬剤部などの関連する専門家が、一つのチームとなって、脳腫瘍と闘う子どもたちを支えます。
脳腫瘍チームは、日頃の密なコミュニケーションと、定期的な脳脊髄腫瘍カンファレンスを通じて、脳神経腫瘍が見つかった子どもたちの診断、治療、治療後のフォローアップを包括的に行います。症例に応じて、脳神経腫瘍科または脳神経外科の医師が主治医となって、一貫した診療を計画し、腫瘍摘出や生検といった手術が必要な時は脳神経外科の医師に、放射線療法が必要なときには放射線治療科の医師に、抗腫瘍薬による治療、いわゆる化学療法は、小児がんセンターの医師が行います。
手術
小児脳腫瘍の手術に熟達した脳神経外科医が、必要に応じて、神経ナビゲーション(腫瘍や周辺の重要な脳組織の位置を正確に知ることができます)、術中神経生理学的手技(重要な神経機能をリアルタイムでモニターし、機能の温存を図ります)を用い、脳の深部から脊髄までの腫瘍摘出を行います。良性腫瘍(一般に手術で根治できる可能性が高いです)では、後遺症を残さないように、可能な限り全摘出することを目指した手術を行ないます。腫瘍が運動野・言語野のような重要な機能のある部位に存在する場合は、てんかん外科の技術を応用した機能同定を手術中に行ない、安全な腫瘍切除を目指します。出血しやすい、サイズの大きい、また周辺に重要な神経組織のある腫瘍では、まず組織診断を行ない、必要に応じて2回にわけて腫瘍切除術を行なうこともあります。
重要な脳の機能が集まる脳幹部に浸潤した腫瘍に対しても、術中神経生理学的手技・神経モニタリングを駆使して可及的に切除しています。脳幹部びまん性神経膠腫に非典型的な画像所見を示すものに対しては生検術を行います。これにより正確な診断・病状に適した治療法を行うことができます。
術後の状態が不安定な患者さんについては、小児集中治療室において、集中治療の専門医師と看護スタッフが中心となり、脳神経外科、腫瘍科、神経内科、内分泌科、感染症科などの各専門医と連携して、24時間体制でチーム医療を提供します。
画像診断
画像診断は、脳腫瘍診断の第一歩です。こどもの扱いに慣れたスタッフによりCTやMRIといった検査を安全かつ正確に行っています。365日24時間放射線診断専門医が対応しています。お子さんの年齢や状態に応じて麻酔科専門医による鎮静も行います。
病理診断
こどもの脳腫瘍は、おとなとは種類が違うものが多く、進行も早いことが知られています。したがって、できるだけ早く正確な病理診断を行い、治療方針を決定しなければなりません。病理診断には、手術で採取された脳組織から標本を作製し、特殊な染色や遺伝子検索が必要となります。臨床症状や画像診断を合わせて診断を行いますが、小さな組織のため確定診断ができない場合もあります。当センターの脳腫瘍診療チームが最善の治療法を選択できるように、必要な場合にはセンター外の脳腫瘍専門病理医へのコンサルテーションを行っています。
化学療法
多施設共同臨床試験への参加や造血幹細胞移植を伴う大量化学療法含めた化学療法(薬物療法)については、小児脳腫瘍治療の知識と経験が豊富な小児がんセンターの脳神経腫瘍医をはじめ、小児腫瘍専門医、経験豊富な看護師、抗腫瘍薬に精通した薬剤師など、多職種の専門家で構成されるチームによって安全に行われます。国内外の臨床試験の成績など、最新の科学的なエビデンスに基づいて、現時点で最良と考えられる治療法(標準治療)を提供し、新たな治療法を開発するための臨床試験についても、参加可能な患者さまに提案します。
放射線治療法
脳腫瘍は他の部位の疾患以上に精度の高い放射線治療が望まれます。精度の高い放射線治療は、目や耳、脳、粘膜などの障害を減らすことにつながります。当センタ―では三次元X線画像による位置照合装置を用意し、精度の高い放射線治療を提供しています。心理的プレパレーションや小児の麻酔に熟練した麻酔科医師の支援により、苦痛なく、安心して、正確な放射線治療を受けられる体制を整えています。
脳腫瘍カンファレンス
小児腫瘍医、脳神経外科医、放射線治療医、放射線診断医、病理医が、定期的に行われる脳腫瘍カンファレンスで、それぞれの症例の診断について詳しく検討し、正確な治療と最適な治療計画を提案します。新規の治療法についても、多職種カンファレンスで当センターへの導入を検討しています。
こどもサポートチーム
脳腫瘍とたたかう子どもたちの身体的・精神な苦痛を和らげる医療を提供し、子どもたちを支える家族を多職種チームでサポートしていきます。子どもたちと家族のこころのケアやきょうだい支援、医療費助成の申請や復園復学へ向けた調整など、療養に伴う心理社会面の支援を行います。
小児がん医療相談ホットラインのご案内
小児がんは発生数が大人のがんにくらべて少なく、診断や治療には高度な専門知識と技術が必要です。国立成育医療研究センター小児がんセンターでは、小児がんの患者さんやご家族からの医療内容に関する相談を随時お受けしています。
電話を受けるのは主に小児がんの治療・看護等の経験が豊富な看護師です。ご相談の内容によっては医師が対応することもあります。それぞれの疾患・治療の理解をサポートし、納得できる医療が受けられるよう支援を行ってまいります。お気軽にご相談ください。
こんなご相談にご利用ください
- 子どもが小児がんと診断された。診断や治療について詳しく知りたい。
- 主治医に説明してもらったが、内容が難しく十分に理解できない。
- いま受けている治療が最適なのかどうか知りたい。専門の医師の意見を聞きたい。
- 過去に小児がんの治療を受けたが、進学を契機に通院が途絶えてしまった。どこにかかれば良いのか?
ただし、医学的判断を要する個別の病状や治療などについてのご相談にはお電話でお応えしておりません。セカンドオピニオンや他院の受診をご希望の場合はお手伝いいたします。
小児がん医療相談ホットライン
03-5494-8159月~金曜日(祝祭日を除く) 10時〜16時
- 相談は無料です。通話料のみご負担いただきます。
- 診療中のスタッフが対応いたしますので、電話がつながりにくい場合や即時に対応できない場合があります。あらかじめご了承ください。電話がつながらない場合は、少し時間をおいておかけ直しください。
国立成育医療研究センターの診療体制
脳腫瘍が疑われた、もしくは脳腫瘍と診断された患者さんには、小児がんセンター、小児外科、放射線診療部、病理診断部の医師が診断・治療にあたり、関係する部門との密接な連携によるチーム医療を行っています。診療に関わるチームでカンファレンスを行うことで、化学療法・手術・放射線療法を効率的につかった集学的医療を行っています。
診療実績
受診方法
※過去10日以内に発熱(37.5℃以上)している場合には、まずは救急センターへお越しください。
外来は、救急センターを除いてすべて予約制ですので、当院で受診される方は『事前予約』が必要です。
国立成育医療研究センターでは、事前予約制を導入しております。当院での受診を希望の方は他院からの診療情報提供書(紹介状)をお手元にご用意の上、予約センター(電話 03-5494-7300)で予約をお取りになってからご来院ください(予約取得時に、紹介状の確認をしております)。紹介状をお持ちでない場合、別途選定療養費がかかります。詳しくは、予約センターにお問い合わせください。
なお、現在他の病院で治療を受けている場合や緊急で受診が必要なときは、現在かかっている医療機関の医師から直接、医療連携室(TEL:03-5494-5486 (月~金 祝祭日を除く 8時30分から16時30分))へご連絡をお願い致します。
※救急センターは24時間365日診療をおこなっています。診療をご希望の方は、直接救急センターへお越しください。
予約センター(代表)
03-5494-7300月~金曜日(祝祭日を除く)9時〜17時
セカンドオピニオンについて
国立成育医療研究センターでは、セカンドオピニオンを求める患者さんやご家族に対して、当院の医師から参考となる情報や意見を提供するセカンドオピニオン外来を設置しています。また、いくつかの診療科ではオンラインによるセカンドオピニオン診療も実施しています。