神経芽腫│小児がん
神経芽腫とは
神経芽腫とは神経の細胞にできる「がん」です。神経芽腫は、小児期にできる固形腫瘍の中で白血病、脳腫瘍についで多い病気です。特に、5歳以下のお子さんの発症率が高いとされています。
がん細胞とは、正常な細胞であったものが、「正常な機能を持たないまま」「過剰に増殖するようになってしまう」細胞です。がん細胞がどの臓器にできるかによって「胃がん」「肺がん」などになり、神経細胞ががん細胞になってしまった病気が「神経芽腫」です。神経芽腫の細胞はかたまりを作って大きくなります(固形腫瘍のひとつです)。
神経芽腫の細胞は、腎臓の上にある「副腎」という臓器にできることが多いので、お腹が張ってくることがあります。もしくは胸部や腹部の背骨のすぐ前にある「交感神経幹」という場所にできることもあり、近くにある脊髄を圧迫することで、足などの麻痺がでることもあります。
神経芽腫はリンパ節や皮膚にしばしば転移するため、首やわきの下、足の付け根などのリンパ節が大きくなったり、皮膚にしこりができたりすることでみつかることもあります。また、骨やその中の骨髄にもしばしば転移するため、骨が痛くなることもあります。
神経芽腫の細胞からは、カテコラミンという物質を作ることが多いため、その結果、尿の中のバニリルマンデル酸(VMA)、ホモバニリン酸(HVA)という物質の濃度が高くなることが特徴です。
神経芽腫の治療法を決定するためには、1)神経芽腫の細胞を一部採取して、詳しく検査すること、2)神経芽腫細胞の体への広がり具合、を検査することが重要です。
1) 神経芽腫の細胞を検査する
神経芽腫細胞の性質にあった治療を選択するために、腫瘍の一部を採取して検査すること(生検といいます)が重要です。採取した細胞は、病理医が顕微鏡でみることで神経芽腫であることの確定診断を行うと同時に、悪性度の分類を行います。また、腫瘍細胞の遺伝子検査を行うことで性質をより細かく把握し、治療方針の決定に役立てます。
2) 神経芽腫細胞の体への広がりを検査する
神経芽腫細胞の体への広がりの程度を「病期」といいます。病期によって最適な治療が異なるため、神経芽腫の病期を診断することはとても重要です。CTやMRIなどをつかって腫瘍の局所の状況を詳しく把握するとともに、他の部位に転移があるかどうかを調べます。また、MIBGシンチや骨シンチという検査でも転移の状況を検査します。
実際には、年齢や病理検査の結果、腫瘍細胞の遺伝子検査の結果、病期などを組み合わせて治療法が決定されます。
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神経芽腫の治療と国立成育医療研究センターの方針
まず、画像検査(CT、MRI、MIBGシンチ、骨シンチなど)を行い、病期を判断します。その上で、まずは生検を行い、腫瘍の一部を採取して、神経芽腫であることの確定と、病理分類・遺伝子検査を行います。それらの結果で、治療に必要な強度を3段階(低リスク、中間リスク、高リスク)にわけて治療を行います。
- 低リスク(病期1や2):手術で切除することが可能であれば、手術のみでも治癒する可能性がありますので、生検にとどめずに最初から腫瘍を切除することを目指して手術を行います。病期1や2にも関わらず、手術での切除が困難な場合には、比較的強度の弱い抗がん剤治療(=化学療法)を併用します。
- 中間リスク(おもに病期3):中等度の強度の化学療法が行われます。化学療法のみでは腫瘍を完全に治癒させることはできませんので、化学療法で腫瘍を小さくした後で手術を行います。手術でも腫瘍がとりきれない場合などには、放射線照射を行います。
- 高リスク(おもに病期4):強力な化学療法を行います。さらに、造血幹細胞移植を併用した大量化学療法を行います。これらの化学療法で腫瘍を小さくした後で手術を行い、その後に放射線照射を行います。高リスク神経芽腫に関しては、統一した方針で治療を行うことで、治癒率の向上につなげることを目指して臨床試験を行っています。
小児がん医療相談ホットラインのご案内
小児がんは発生数が大人のがんにくらべて少なく、診断や治療には高度な専門知識と技術が必要です。国立成育医療研究センター小児がんセンターでは、小児がんの患者さんやご家族からの医療内容に関する相談を随時お受けしています。
電話を受けるのは主に小児がんの治療・看護等の経験が豊富な看護師です。ご相談の内容によっては医師が対応することもあります。それぞれの疾患・治療の理解をサポートし、納得できる医療が受けられるよう支援を行ってまいります。お気軽にご相談ください。
こんなご相談にご利用ください
- 子どもが小児がんと診断された。診断や治療について詳しく知りたい。
- 主治医に説明してもらったが、内容が難しく十分に理解できない。
- いま受けている治療が最適なのかどうか知りたい。専門の医師の意見を聞きたい。
- 過去に小児がんの治療を受けたが、進学を契機に通院が途絶えてしまった。どこにかかれば良いのか?
ただし、医学的判断を要する個別の病状や治療などについてのご相談にはお電話でお応えしておりません。セカンドオピニオンや他院の受診をご希望の場合はお手伝いいたします。
小児がん医療相談ホットライン
03-5494-8159月~金曜日(祝祭日を除く) 10時〜16時
- 相談は無料です。通話料のみご負担いただきます。
- 診療中のスタッフが対応いたしますので、電話がつながりにくい場合や即時に対応できない場合があります。あらかじめご了承ください。電話がつながらない場合は、少し時間をおいておかけ直しください。
国立成育医療研究センターの診療体制
神経芽腫が疑われた、もしくは神経芽腫と診断された患者さんには、小児がんセンター、小児外科、放射線診療部、病理診断部の医師が診断・治療にあたり、関係する部門との密接な連携によるチーム医療を行っています。診療に関わるチームでカンファレンスを行うことで、化学療法・手術・放射線療法を効率的につかった集学的医療を行っています。
さらに、治療法の開発や改善に結びつけることを目指して、小児神経芽腫の発症原因や新しい予後因子の究明など、小児がんの治療成績を向上するための基礎的な研究を行っています。
診療実績
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※過去10日以内に発熱(37.5℃以上)している場合には、まずは救急センターへお越しください。
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国立成育医療研究センターでは、セカンドオピニオンを求める患者さんやご家族に対して、当院の医師から参考となる情報や意見を提供するセカンドオピニオン外来を設置しています。また、いくつかの診療科ではオンラインによるセカンドオピニオン診療も実施しています。